もしも、あなたの心の欲求がすべて満たされるなら・・・
目に飛び込んできたのは、自分が異性に求めるものを、世界で最も満たしているであろうと思わせる人だった。
ルックス・目・髪の色・髪型・髪の長さ・身長・体つき・肌の色・肩幅・脚の長さ・服装・表情・醸し出される雰囲気・・・
数えればキリがないが、何から何まで、容姿だけでなく、雰囲気から自分が異性に求める人間性をすべて持ち合わせているであろうと感じさせる人だった。
今まで出会ってきた人の中で最高の人だと、一瞬で感じずにはいられなかった。
もちろん、話しかけなければ、どんな人なのか、その人の内面まではわからない。
しかし、この人よりすばらしい人にめぐり合うことは、生涯ないだろう、絶対に声をかけないといけない。
直感的にそう思った。
ただ、あそこまですばらしい容姿の持ち主のため、競争率は高いだろうし、どうせ声をかけても、ほかの人に取られるんだろな・・・
いつもの悪い癖で、何も行動しようとせず、諦めようとしていた。
それでも勇気を振り絞って、声をかけようと思った。
それと同時に、すでに足はその人のもとへ向かっていた。
普段より明らかに積極的に行動していた。
遠い地に一人でいることが、自分を解放的にさせているのだろうか?
それともこの暗い空間であれば、どんな行動を取っても誰にもわからないだろうと思ったのだろうか?
今ならまだ隣にいるのは、知り合いと思われる人だけ。
ほかの人が声をかけてくれば、その人とどこかに行ってしまうかもしれない。
その前に声をかけるしかない。
Now or never!
その人の近くまで行き、話しかけるタイミングをうかがった。
知り合いの人がその人と話すのを止め、別の人のところへ話しに行った隙に、その人の隣まで行った。
近くまでいくと、声をかけるのも忘れて、その人に魅入ってしまいそうになった。
胸の高まりを抑えようとしたが、抑えることはできなかった。
ただ、この胸の高まりがものすごく気持ちよかった。
「すいません、今少しお話してもいいですか?」
少し硬い話し方になってしまったが、ついに話しかけることができた。
体の芯から暑いと感じる夏の夜のことだった・・・