第71話:地下古代遺跡シンフォニー
<ユーエリア視点>
私たちはパトロ大司祭にマーリア大聖堂に案内してもらった。
さすが原理主義派の大聖堂なだけあって歴史がありそうで、
壁には鳶が茂り、
まるで、建物の外観は
地球のドイツにあるケルン大聖堂みたいだった。
中に入ると身廊と翼廊が交差した十字架の形をしており、
脇には二つの通路が作られ、東奥には回廊が作られている。
通路には7つのチャペルが放射状に突き出している。
それぞれのチャペルには祭壇がありマージョ大聖堂みたいに
救世の女神の銅像と先の曲がった十字架が掲げられているらしい。
その右の通路を進み最奥に祈りの間があった。
初代大教主の個人的な礼拝に使われただけあってこじんまりとしていた。
「で、どこに遺跡への入り口があるの?」
「マージョ大聖堂と同じく祭壇の台の下にあります。
しかし、特別な呪文が必要なようです」
アロンからそう言われ祭壇の台を覗きこむ、
そこにはなんと英語が書かれていた。
「これは英語ね」
「あ、ホントだ」
私と拓海は元々日本人だった。
なので高校で英語も勉強していたので分かるのだ。
高校のテストで学年1位と2位だったし。
「ユーエとタクミはこの言葉が分かるのか?」
不思議そうにリックがそう聞いてきた。
「これは私の前世の世界のイングランドという国の言葉よ」
「現代の地球では、ほぼ共通語扱いされてるな」
私と拓海がそういうと信長が興味を示してきた。
「ふむ、南蛮の言葉なのか?」
「父上も分かるのですか?」
「いや、地球儀という物を見た事があるだけで
言葉自体は分からん」
「そうですか;」
信長も日本人なので異国の言葉というのは分かるが
英語は分からないらしい。
雷信は少しがっかりした。
「で、分かるのか?」
「『女神は世界を創造された。
世界は混沌であって、邪が深淵の世界にあり、
女神の霊が水の面を動いていた。
女神は言われた。『救世あれ』。
こうして、邪は浄化され世の中は救われた』
それを英語読みすればいいのかしら?」
「おお!聖書の一文ですな」
ウィキに書かれている内容を聞かれたので言うと、
パトロ大司祭が驚いていた。
「『Salvation goddess created a universe.
The world is a chaos,
and evil is in world in an abyss,
and where a soul of a Salvation goddess is water,
it was moving.
A goddess was called. "Salvation."
An evil was purified and the world was rescued.』」
ごごごごごごごご・・・・。
私が英語でそう言うと、台が動き地下へ続く階段が現れた。
「よしっ!!さっそく行けるな!!」
「地下遺跡、行く」
「なんだかわくわくするわね」
「わくわくにゃw」
ニッキーとマークスとロゼッタは未知なる遺跡にわくわくしていた。
ハイにゃんもつられてわくわくしている。
「遊びに行くんじゃないんだけどな;
親父、お袋、スーナねえちゃんはここで待ってていてくれ」
「たぶん戦いになるだろうね。危険だから待っていて欲しい」
リックとリチャード様は陛下と王妃様とスーナ嬢に待つよう言った。
「お初も待っていてくれ」
「必ずイノーゼを助け出すからな」
雷信と拓海もお初ちゃんに待つように言った。
「分かった。待っているぞ」
「気を付けてくださいね」
「リチャード様、リックくん、そしてみなさんどうか御無事で」
「必ず無事にイノちゃんと帰って来てね」
どうやら陛下たちは大聖堂で待っていてくれるみたいだ。
危険に巻き込む訳にはいかないもんね。
「じゃあ、行くわよ」
陛下たちを除く私たちは階段を下り地下遺跡に入って行った。
地下遺跡は石造りで階段が上下して入り組んでいて
まるで地球のマルタの聖パウロのカタコンベに似ていた。
「このシンフォニー地下古代遺跡はムジカの街のもともと地下墓地で
シンフォニア教の聖人たちが埋葬されていたそうです」
アロンの説明からこの遺跡はカタコンベそのものだと私は思った。
「で、イノーゼはどこにいると思うの?」
「多分、最下層の初代大教主様の墓の部屋にいるはずです。
そこでヒデト様は吸血の儀式を行うはずです」
アロンの言葉からどうやらイノーゼは最下層にいるらしい。
「吸血の儀式ってイノーゼが吸血鬼に血を吸われるって事!?」
「そ、そんな事は絶対させないぞ!!」
ノッレとヤーコブはそれを聞いて顔を真っ青にした。
「代々、巫女の血は浄化の効果があります。
吸血鬼化を抑えるには巫女の血を吸う必要があるのです」
「そんな・・・!!!」
「エリーゼはそれで犠牲になったと言うのか!!
今度はイノーゼまで犠牲にするのか!!」
アロンを絶句してノッレは見ていた。
ヤーコブはそれを聞いて怒りをあらわにアロンに詰め寄った。
「それを止めるためにも急ぎましょ。
こうしている間にもイノーゼは危険な状態になってるはずよ」
「その通りだ、イノーゼちゃんを早く助け出さないと」
「分かった・・・。必ずその吸血鬼を倒してやる」
「吸血鬼に岩の塊をぶつけてやるわ」
私とウィキに窘められヤーコブとノッレは怒りを抑えた。
「で、アロンこの地下遺跡は何階あるの?」
「地下5階まであります。
入り組んでいて地下へ行く、階段は見つけにくいと思いますが;」
「案内できる?」
「はい、何度か行った事あるので」
「じゃ、案内して」
遺跡は地下5階まであるらしい。
私たちはアロンの案内で遺跡の地下へ進んでいった。
「ゴブリンだ」
「遺跡だからダンジョン化してるか;」
「一気に倒すわよ」
緑色したコブリンが棍棒を持って襲いかかってきた。
前衛のリックとウィキと私で出てくるモンスターを駆除した。
ポイズンスネークなども出てきて一気に倒した。
「なんだあれは?宣教師みたいな服をゴブリンが着てるぞ」
「面妖な・・・」
「杖持ってる。魔法でも使うのか?」
神父服を着たゴブリンを信長が見つけた。
雷信はそのゴブリンを見て顔をしかめている。
拓海はクナイを持ち魔法を使うかもしれないと警戒していた。
その神父ゴブリンは他のゴブリンを援護しているようで
杖で回復もできるようだ。
「『ブロックバレット』!!」
ノッレは遠距離から岩の塊を魔法で飛ばし
ピンポイントで神父ゴブリンを倒した。
この調子で神父ゴブリンを見つけたら
ノッレが魔法で狙い撃ちした。
そうしてどんどん遺跡を進んでいくと祭壇を見つけた。
「ここで祈りを捧げると階段が現れるはずです」
「では、私がやろう」
アロンの説明に大司祭が祭壇に祈りをささげた、
すると祭壇の前の扉が開き階段が現れた。
そして地下2階へ降り立った。
そこは狭い通路になっていて一方通行になってるみたいだ。
横幅に3人しか入れないので目の前にモンスターが出たら
前衛だけで倒さなければならない。
「「「ぶおおおおおお!!!」」」
鎧を纏った戦士型オークと魔法使いの姿をした戦士型オークが現れた。
私たちはそれに立ち向かった。
オークは多勢での攻撃に加えて
魔法の遠距離攻撃が飛んでくるのでやっかいだった。
魔法使いのオークが火の玉を撃ってきた。
「『エアアクアシューター』」
私は空気で圧縮した水流で飛んでくる火の玉を撃ち消した。
そのまま魔法使いのオークたちに水流を放ち、打ち抜い倒していく。
「『散雨飛沫』」
「『双牙波進斬』」
「『王剣水衝斬』」
リックの剣の突きの攻撃と
ウィキの2つ剣の衝撃波と
リチャード様の水の纏った剣の一突きで
戦士型オークを葬っていく。
この調子で出てくるオークたちを倒して行った。
狭い通路が終わると広い部屋へ出た。
そこには王冠を被った巨大なオークが出てきた。
「キングオーク。オークの最上位種
剣も魔法もすごく強い。
回復魔法も使えて体力がすごく高い」
マークスは敵を本で知っていたのか冷静に述べた。
するとキングオークが私たちに気づいて剣で襲いかかってきた。
大司祭とヤーコブとアロンは私たちの後ろに隠れている。
「ぐがああああああ!!!!!」
「来る!!」
私たちはそのキングオークに対して戦闘態勢を取った。
ガキン
「ふむ、前に戦ったブタの化け物より強いな」
信長がキングオークの剣を刀で受け止め弾き飛ばした。
「『正追』」
その隙に雷信がダッシュしながらジャンプしてそのまま刀を振り下ろした。
それをオークキングが盾でガードして距離を取る。
「忍術『クナイ投げ』」
拓海が両手に五本づつクナイを持ち、
それらを投げてオークキングを撹乱した。
「こいつ肌固いわ!!」
「く、頑丈だな!!」
「効かない」
「ハイにゃんの爪も効かないにゃ;」
その隙にニッキーとロザンナとマークスも
オークキングに剣で切り掛かってる。
ニッキーたちの攻撃だと傷一つ付かない。
ハイにゃんもオークキングを引っ掻いたが
固いのか水の爪が少し欠けてた。
「『ウッドニードル』!!」
「『瞬発突剣』」
「『王剣乱舞斬』」
ノッレが土魔法の派生の木魔法で
木を地面から生やし槍のようにキングオークの足を貫いた。
その隙にリックが突きの攻撃をして
リチャード様は踊るように華麗な剣技でオークキングを切り刻んだ。
「ぐごおおおおお!!!!」
「な!!回復してる」
「反則だわ!」
「ずるい」
「オークキングってそんな事できるのか?!」
「普通、傷ついたらそのままにしとくと気持ちいいのににゃ;」
キングオークは木を引き抜き、
剣の傷も回復魔法で足を治した。
ノッレはそれを見て驚いてた。
ロザンナとマークスとニッキーも驚愕し絶句していた。
人間以外にも回復魔法が使えるのが信じられなかったのだろう。
それとハイにゃん;いくらドMだからって
傷をそのまました方が気持ちいいって変態だな;;;;
「少しの傷だと効かなそうね・・・」
「こういう時、威力のある、攻撃」
私が思案しているとマークスがアドバイスしてきた。
「お嬢様、大精霊の力を使うんだ!!」
「分かった!!大精霊『ラウームド』召喚!!」
ウィキに促され私は雷の大精霊の『ラウームド』を召喚した。
「優絵殿、麻呂は何をすればいいのじゃ?」
「あのオークキングを雷の魔力で撃ち抜いて」
平安貴族の恰好をしたラウームドにそう命じると
オークキングに向かって手をかざした。
「分かったのじゃ。
『雷撃衝波』!!!」
「ぎゃああああああああ!!!!」
ラウームドは高電圧を圧縮した巨大な雷のビームで
オークキングを撃ち抜いた。
オークキングは塵も残さず焼き消えた。
「さすが雷森羅様です!!」
「さすが織田家の神霊だな!!」
雷信と信長もラウームドの力に驚き尊敬を深めているようだ。
「な!!大精霊ですか?!」
「あなたは大精霊も召喚できるのか?!」
大司祭とヤーコブはラウームドを見てすごく驚いてた。
私が大精霊を召喚したのが信じられないようだった。
「大精霊はおとぎ話だと思っていましたが・・・」
「麻呂たちはちゃんと実在しておるのじゃ」
ラウームドがそう言うと大司祭はまじまじと彼を見つめた。
「革新派の言っていた事は本当だったのですね。
もしかして救世の女神の眷族というのは本当なのでしょうか?」
「うむ、麻呂たち大精霊は世界創世から関わってきたからの」
どうやら大精霊は救世の女神の部下らしい。
大司祭はそれを聞いて思案した。
「救世の女神だけが世界を作った訳じゃないのですね」
「麻呂たちも手伝ったのじゃ」
「・・・これは考えを改める必要がありそうですね」
どうやら原理主義派も思想を変えるかもしれないわね。
大司祭を見て私はそう思った。
こうしてオークキングを倒した私たちは地下遺跡の3Fへ降りて行った。
まだ遺跡は深そうだ。早くイノーゼの元に辿り着かないとね。
つづく
地下の遺跡のダンジョンはファンタジーではお約束ですw
それはそうと、大司祭は大精霊を見て驚いてましたねw
実在すると知って考えを改めたみたいですw
次回に続きますw