第70話:半吸血鬼の従僕アロン
<ユーエリア視点>
「さあ、あなたを倒して
イノーゼの連れ去った場所について吐いてもらうわよ!!」
「多勢に無勢だ。覚悟するんだな」
「そうにゃ!!そうにゃ!!」
私とウィキはアロンに対して拳と武器を構え睨みつけた。
ハイにゃんも水の爪を出して威嚇してる。
「吸血鬼の従僕め・・・覚悟するんだな」
「刀で仕置きして、イノーゼ殿の所まで案内してもらうぞ」
「階段の道を開けやがれ!!」
「イノーゼを返して!!」
「イノちゃんを攫うなんて悪い奴ね!!」
「無駄な抵抗はしない方が身のためだぞ」
「イノーゼ殿をどうするつもりなんだ!!」
「大勢でボコられたくなかったら武器を捨てろ」
「そうしないと剣で切り捨てるわ」
「・・・早く開けろ!」
雷信や信長や拓海やお初ちゃん、
ノッレやリックやリチャード様ニッキー、ロザンナ、マークスも
それぞれアロンを囲み臨戦態勢を取っている。
「親父、お袋。スーナねぇちゃんは
危ないから俺と兄貴の後ろにいろ」
「父上、母上、スーナは危ないから隠れてろ」
「危険な事はするなよ」
「リック、リチャード、イノーゼちゃんを頼みます」
「リチャード様、リックくんお気を付けて」
陛下と王妃様とスーナ嬢は危ないのか
リックとリチャード様の後ろで隠れているようだ。
「お初も後ろにいろ」
「危ないからな」
「分かった。必ずイノちゃんを取りかえしてね」
お初ちゃんも雷信や拓海の後ろに隠れた。
「ふふふふ・・・この入り口は大教主様しか開けられません。
だから開けるのは不可能ですよ」
「なっ!!!」
どうやらこの入り口は一方通行で開けられないらしい。
アロンは不敵に笑いながらそう言った。
「なので、僕を倒しても無意味ですよ。
もっとも捕まる気はありませんが」
するとアロンは手のひらから赤い物体を浮かせた。
「あれは血・・・?」
「僕は長い事ヒデト様に血を吸われました。
そして半吸血鬼の下僕となってこんな力を手に入れたのですよ。
『ブラッドウイング』!!」
アロンの背中に血が集まり翼となって浮きあがった。
「『バットブラスター』!!」
血がコウモリの形となって襲いかかった。
私たちはそれを切っている、
その隙にアロンは大聖堂の外へ逃げ出した。
「追うぞ!!お嬢様、風魔法を!!」
「分かったわ!!」
ウィキに促されて私は風魔法を使って
ウィキたちを浮かせて飛んで追いかけた。
「親父たちは待っていてくれ」
「お初もな」
「かならず、イノーゼ殿を助け出す」
「わかった」
「がんばってくださいね」
「御武運を」
リックと雷信とリチャード様はそう言い、
陛下と王妃様とスーナ嬢とお初ちゃんは大聖堂で待たせる事にした。
私たちは飛んで外に出ると広場には人が大勢いた。
広場での一般向けの式典が終わった後でもたむろってる人がいるようだ。
アロンはその上空を飛びそして手をかざした。
「『ヒュプノブラッド』」
すると広場にいる人達の様子がおかしくなった。
目が紅くなりそして手を上空に向けた。
「「「「「「「「「『ファイヤーボール』」」」」」」」」」
「「「「「「「「『ウォーターボール』」」」」」」」」」」
「「「「「「「「『ウインドスラッシュ』」」」」」」」」」
そしてその人達は火、水、初級魔法を使ってきた。
無数の火の玉と水の玉とかまいたちが襲う。
く、初級魔法とは言え12000人の人数だとキツい!!
「『シールドリフレクション』!!」
するとウィキは結界を張りそれらの魔法を撃ち消した。
「お返しするぜ!!」
そうして結界に吸収した12000人分の魔法を
アロンに向かって跳ね返した。
「くっ・・・・!!!」
アロンは血で結界を張ったがかなりの威力だったのか
翼がもがれて墜落していく。
広場を逸れて街中についらくしたようだ。
私たちも急いで追って行く。
「かなりのダメージを受けてしまいましたね・・・」
アロンは悔しそうに血の翼を仕舞った。
そして血の剣を作り出して構えた。
「『ブラッドソードレイン』」
そして血でできた鋭い無数の魔法の剣が私たちに向かって振ってきた。
「『ガードフィールド』」
私は無属性の魔法の結界でそれを打ち消した。
「『進波斬』」
「『水破大波剣』」
「『王剣乱舞斬』」
「『ブロックバレット』!!」
そして、その隙にウィキとリックと
リチャード様が剣の衝撃波をアロンに向かって撃った。
地を走る斬撃と大きな波の剣撃と無数の斬撃が炸裂した。
ノッレも岩の塊を魔法で飛ばして援護している。
それをアロンは紙一重で避けたがさっきのダメージが効いているのか
腕に少し怪我してるようだった。
「くくく・・・血が流れてしまいましたね・・・」
「なにがおかしいんだ!!」
「そうよ!!そうよ!!」
「不気味」
血を流しながら笑うアロンに
ニッキーとロザンナとマークスは不気味に思っていた。
「僕は血が流れれば流れるほど強くなるのですよ」
「お前もドMにゃ?」
「・・・ともかく僕は負けないのですよ」
「スルーされたにゃ・・・;」
笑うアロンにハイにゃんはシリアスをぶち壊す発言をした。
アロンはそれを無視して切り掛かってきた。
スル―されたハイにゃんはショックだったようだ。
「『バンパイアミスト』!!」
するとアロンは自らを血の霧と化した。
そして素早く移動して斬撃を繰り返す。
「く、化け物め!!切り捨てる!!」
信長が刀でアロンを切ろうとするが霧なので攻撃がすり抜けてしまう。
すり抜けたアロンは信長を霧でできた腕で殴り返した。
「うごっ!!」
「父上!!くっ・・・;切っても切ってもすり抜けてしまう」
「物理攻撃ができないなんて反則だぞ!!」
雷信は信長を案じ刀でアロンに切り掛かるが効いてないみたいだ。
拓海も攻撃が効かないもどかしさに悔しがってた。
「・・・チート野郎め!!
それなら、『ダイヤモンドダスト』!!」
「か、身体が凍っていく・・・!!」
私は空気中の霧を氷魔法で凍らせた。
するとアロンは実体が霧化できなくなって凍りついた。
そして動けなくなった。
「さすがお嬢様の魔法だな、
ここら辺、一帯を凍りつかせるなんてお嬢様もチートだぜ」
「昔、前世で北海道でダイヤモンドダスト見たのを思い出したから;
魔法でやってみたけど上手くいってよかったわ」
ウィキは手放しで私を褒めた。
前世で北海道の網走に旅行に行った時に見たのが役に立ったわね。
私たちは凍りついたアロンをしばってそのままマージョ大聖堂に戻った。
「おお!!吸血鬼の従僕を捕らえるとは
さすがエンジェルム王国とライシンラの国の方々ですね」
パトロ大司祭は捕まえたアロンを見て大喜びして私たちを褒めた。
「捕まえたのはいいが肝心のイノーゼの連れ去られた場所を
こいつに吐かせねば」
「あ、ヤーコブ、そうだったな」
ヤーコブにそう言われ慌てて大司祭は気を引き締めた。
私は凍りついたアロンの顔だけ熱魔法(火魔法の派生)で溶かした。
「くっ・・・まさかこんな手で捕まるとは・・・;」
「さあ、イノーゼの連れ去られた居場所を吐きなさい!!
でないとムチであなたの身体を粉々に砕くわよ!!」
私はアロンの身体ギリギリの位置をムチでしばいて脅した。
「・・・ヒデト様のためにもここで吐くわけには;」
バシン!!!
「ぐあああああ!!!!!!」
私はアロンの足先をムチで砕いた。
「あなたの選択肢はここで白状するだけよ。
そうしないとあなたの命はここで消えるわよ」
「・・・・」
私の宣告にアロンは黙り込んだ。
「・・・命が惜しいようね」
「待った、ここで奴を殺すよりいい方法がある」
ムチでアロンの身体を砕こうとした私に
ウィキは待ったをかけた。
「お前、吸血鬼の従僕で半吸血鬼化してるな」
「ヒデト様も半吸血鬼です」
ウィキの指摘をアロンは少し訂正した。
どうやらヒデトもアロンも不完全な吸血鬼らしい。
「さっき血を使いまくって吸血鬼化が進んだはず。
それを止める方法を知りたくないか?」
「・・・!!!あるのですか?」
ウィキの言葉に驚くアロン。
「ああ、ある。
その情報と引き換えに俺たちと取引きしないか?」
「・・・。それは本当なのですね?」
ウィキの取引きに戸惑うアロン。
「ああ、二言はない。
俺は錬金術の研究をしていて似たような奴らを
吸血鬼から人間に治した事がある。
とあるアイテムを使えば治るはずだ」
どうやらウィキは昔、吸血鬼に会った事があるみたいだ。
さすが長年に渡って生きてる悪魔ではある。
「ただし、そのアイテムを渡すのはイノーゼを助け出してからだ」
「・・・分かりました。イノーゼ殿の居場所を吐きましょう」
どうやらアロンはウィキの取引きに応じてくれるみたいだ。
「ヒデト様はこの大聖堂地下の遺跡にイノーゼ殿を連れて行かれたはずです」
「遺跡?」
どうやらこの大聖堂の地下には遺跡が眠っているようだ。
「その遺跡に行くにはもう一つの大聖堂。
マーリア大聖堂からも繋がっているはずです」
「なんと!!私たちの大聖堂にもですか?!」
「こいつは盲点だったな」
大司祭とヤーコブは意外な事実に驚きを隠せないようだ。
「マーリア大聖堂の礼拝の間に隠し扉があるはずです」
「そういえば、そこの礼拝の間は初代大主教が祈りを捧げた場所。
ありうるな・・・」
アロンの言葉に大司祭は納得したようだった。
「それじゃあ、さっそくマーリア大聖堂へ行きましょう。
イノーゼが危ないわ。パトロ大司祭殿、案内してくださる?」
「わかりました」
私たちは大司祭の案内でマーリア大聖堂に向かう事にした。
イノーゼを一刻も早く助けないと。
私は駆け足でそこへ行った。
待っててイノーゼ!!必ず助け出すから!!
つづく
半吸血鬼のアロンとのバトルでしたw
ユーエリアの魔法であっさり倒されましたね。
で、取り引きでイノーゼの所へ連れて行ってくれるようですw
イノーゼは無事なのでしょうか?
次回に続きますw