第67話:謎の半吸血鬼とシンフォニア教国への招待
<200年前、地球日本にて。???視点>
満月の夜。
俺は知り合いの寺の坊主の天先葉凛と
最後の語らいをしていた。
「もう、ここにはいられないのか・・・」
「よく、もったものだと自分でも思うよ」
俺はバンピール。半吸血鬼だ。
今まで吸血衝動を誤魔化してきたけど、
俺の流れる吸血鬼の血が抑えられなくなってきた。
「わしもなんとかしてやりたいが・・・」
「この世界では吸血鬼から人間になる方法は見つからなかったからな;」
もう1000年は世界中探しまわった。
けど、結局人間になれる事はなかった。
「せめて吸血衝動が抑えられる方法が見つかればよかったんだが」
「・・・この世界にはそんな物は無い。
プルーンという果物で少し抑えられたが
誤魔化しに過ぎなかった」
鉄分が多い果物を食べて誤魔化してたが
もう限界に来ている。
血が吸いたい衝動は止まらない。
「本当に行くのか?別世界へ?」
「ああ・・・。
他の世界なら俺の求める方法が見つかるかもしれない」
だから、決めたんだ。異世界へ行くと。
「葉凛、やってくれ・・・」
「異世界の扉を開くぞ」
葉凛が手をかざすと空間に穴ができた。
中は真っ暗闇でどこに繋がっているかは分からない。
「いいのか?行き先は指定できない。
どこの世界に繋がるのか分からないぞ」
「いい。どこに行くかは分からないが
求める物があるならそこへ行く」
「決意は変わらないか・・・」
俺の頑固さに葉命は折れた。
「・・・元気で暮らせよ、秀人」
「分かってる。この恩は一生物だ。
行ってくる。さよなら」
「ああ・・・、さよなら」
俺は葉凛に別れを告げて。
開いた空間に飛び込んだ。浮遊感が駆け巡り真っ暗闇が続く。
どのくらい時間が経っただろうか?
出口が見え光が差した。
見た事のない森が見えた。ここが異世界か。
俺は異世界の一歩を踏みしめた。
「ぐぎゃあああああ!!!!!」
しばらく歩いていると見た事の化け物に遭遇した。
カマキリのでかい化け物が鎌で襲ってきた。
「『ブラッドクロス』」
俺は自分の血の能力を使い、血の剣を作り出し
カマキリを貫いた。
「ぎゃああああ!!!!・・・・」
カマキリは息の根を止めた。
俺は能力を使った反動から血をほっしていた。
その場しのぎにカマキリの死体の体液をすする。
「まずい」
人間の血じゃないから当たり前か;
それでも飢えているので残さず吸っていると、
「ひっ・・・!!」
後ろにどっかの教会のシスターらしき女性に見られたようだ。
恐ろしい物でも見たかのように仰け反っている。
「・・・腹減った」
「は?」
俺はそう言って行き倒れた。
カマキリの血じゃ栄養にならなかったらしい。
シスターの女性は目を点にしてきょとんとしている。
「・・・(パタリ)」
「ちょっ!!大丈夫ですか?!」
俺はそのまま空腹で倒れた。
シスターは焦っているようだ。
それにしても血、血がほしい。
俺はそう思いながら気絶した。
ちなみに、後で知ったのだがシスターの女性は
シンフォニア教の大教主らしい。
俺は彼女との出会いからシンフォニア教国に居座るようになる。
<それから200年後現在>
「・・・ヒデト様、ヒデト様!」
「ん?・・・夢か」
俺はシンフォニア教の神父見習いのアロンに起こされて目を覚ました。
「どんな夢を見ていたんですか?」
「この世界に来た当時の事を思い出してた」
アロンに夢の内容を聞かれた。
まさか、昔の夢を見るとは思わなかった。
「・・・食事の時間だ」
俺は立ち上がりアロンの後ろに回り込み首筋を噛んだ。
「・・・この痛みにはなれませんね」
「すまない」
俺はアロンの血をすすりながら謝った。
こうして俺は信者や神父やシスターの血を吸って生きている。
この世界に来て200年が過ぎ、
シンフォニア教国を隠れ蓑に俺はこうして生きながらえている。
・・・結局、人間になる方法は分からずじまいだけどな。
俺は血を吸い終わるとアロンに絆創膏を差し出した。
「今、大陸中で人気のユーエリア商会の絆創膏ですか。
すぐ傷が治るからありがたいです」
そう言ってアロンは首筋に絆創膏を貼った。
しばらくして剥がすと噛み傷が消えていた。
「あ、そういえば大教主様がお呼びですよ」
「大教主が?何の用だろうか?」
アロンが思い出したように大教主が呼んでる事を告げた。
何か用だろうか?
俺は立ち上がり、大教主様がいる礼拝堂へ向かった。
礼拝堂に付くと大教主は救世の女神のステンドグラスの
下の十字架に祈りをささげていた。
どうやら導師も一緒らしい。
「・・・来たか。ヒデト」
「ああ」
俺が来た事に気が付いたのか大教主は顔をあげて
こっちに寄って来た。
「・・・調子の方はどうだ?」
「日に日に悪くなってる。
吸血衝動の間隔が短くなってきてる」
かれこれ200年、俺は吸血衝動と戦ってきたが、
日に日に悪くなっていった。
「この分だと1カ月もたたないうちに
俺は理性が無くなり化け物になるだろう」
「・・・そうか;マズいな;」
「そんな・・・!!!」
「ヒデト様・・!」
俺は吸血鬼という理性の無い化け物と化してしまうかもしれない。
それに顔を暗くした大教主と悲しげな顔をした導師とアロンに
申し訳なくなった。
「やはり巫女の血は必要なのか・・・」
「俺の理性を留めるにはそれしか方法が無い」
シンフォニア教国、直系の巫女の血を吸う事で
理性を保つ事ができる。
しかし・・・。
「直系の巫女はもういない。
しかし、可能性があるとすれば・・・」
「今、エンジェルム王国にいるイノーゼ殿が
私たちの孫である可能性が高いです」
大教主と導師の孫は6年前行方不明になったらしい。
その孫の実父がどこかへ捨てたと聞く。
ちなみに実父は次期巫女を捨てた罪によって
大教主の手によって処刑されている。
大教主の孫の母、つまり大主教たちの娘は
すでにこの世にはいない。
なので、その孫しか俺を救う手立てはないのだ。
「なので、イノーゼ殿をここに呼び寄せようと思う。
イノーゼ殿・・・。
いや私たちの孫、イノーゼは今、エンジェルム王国の
アークレイ伯爵家の養子になってるそうだ」
「アークレイ家ですか。
そこの娘のユーエリア殿は
ライシンラという新興国の王子の婚約者だとか。
イノーゼもそこの側室になるそうです」
大教主と導師はイノーゼに関する情報を集めたようだ。
しかし、かなりの高位貴族か・・・;
しかも将来のライシンラ国の嫁となると・・・。
「・・・だとしたらむやみに手は出せないな。
なにかしら理由と付けないといけない」
俺がそう言うと大教主たちは頭を悩ませていた。
「もうすぐシンフォニア教国の
2000年式典ですよね。
それに招待するのはどうでしょうか?」
「そうかその手があったか」
「国の代表として招待すれば堂々と呼べますね」
「さっそく、正式な招待状を送ろう」
アロンの提案によりイノーゼをシンフォニア教国の式典に呼ぶ事にした。
大教主は招待状を書くために執務室にこもった。
・・・ああ、早く巫女の血が飲みたいな。
身体がうずく。
<ユーエリア視点>
ある日、エンジェルム王国の王城に呼び出された。
しかも、イノーゼも来てほしいそうだ。
「また、リリアーヌ様のお茶会かしら?」
「王妃様のお菓子おいしいw」
「イノーゼちゃんは役得だよな。
タダでお菓子を食べられるんだから」
ウィキがイノーゼをなでながらお菓子がもらえる事を羨ましがってた。
・・・あんたいつも10人前食事食べてるのにまだ食べたいのか;
私はウィキに呆れつつもリムニスタ陛下のいる謁見の間に向かった。
陛下には毎回、お城に来た時にあいさつしてるので慣れた。
中に入り臣下の礼を取って跪く。
「うむ、ユーエリア殿、イノーゼ殿、
従者殿、よく来てくれた。
楽にして良いぞ」
陛下にそう言われて面をあげると、
そこには信長と雷信の姿があった。
どうやら彼らも陛下に呼ばれたらしい。
「さて、今日の用事だが
実はシンフォニア教国から
シンフォニア教布教2000年式典が行われることになったのだ」
陛下からそれを聞いてシンフォニア教って
2000年も続いている事を初めて知った。
かなり長い期間続いてるのね;
地球のキリスト教並みの歴史である。
「もちろん雷森羅国からも招待状を受け取った。
ワシとライとタクそれとお初も行くつもりだ」
「そういうことになるな」
信長と雷信も拓海もお初ちゃんも式典に参加するらしい。
大陸一の宗教だし無視できないか;
「もちろん私とリリアーヌ、それとリチャードとスーナ殿もリックも行くぞ。
ユーエリア殿もライシンラ国の将来の王妃として参加してほしい」
私ももちろん行く事になるのね;
まあ立場的にはそうなるか。
「それとイノーゼ殿にも式典に参加してほしいと招待状を貰っている」
「わたし?」
陛下から招待状を見せてもらうとイノーゼはきょとんとしていた。
確かに招待をイノーゼも受けている。
「イノーゼ殿は孤児であったな。
どうやらイノーゼ殿は大教主殿の孫らしいのだ。
それで、ぜひ会いたいと念を入れてイノーゼ殿を招待してきた」
「え?イノーゼが大教主の孫?!」
「うそだろ?!」
「なんと・・・!!」
「イノが!!」
陛下から意外な事実を聞かされ私とウィキは驚いた。
信長と雷信もイノーゼを見て絶句してた。
貴族の子供ではなかったのか;
「イノーゼはおじいさんの事覚えてるの?」
「・・・ううん」
イノーゼは首を横に振った。どうやら覚えてないらしい。
3歳以前に捨てられたからさすがに覚えてないか。
「確かめるためにも会ってもらえないだろうか?
大教主が私に涙ながらに頼んで来たのだ」
「おじいさん会ってみたい」
陛下の頼みにイノーゼは大教主と会う事を決めたようだ。
「そうか。式典は今から2週間後だ
王国の端の街にワープポイントがあるから5日で行ける距離だな」
陛下は頷くと式典が2週間後にあると言った。
こんな時、ワープポイントがあってよかったと思う。
「では、シンフォニア教国に出席の返事を出す。
2週間後の式典に行く事にしよう」
陛下はそう言って出席の返事を出すそうだ。
こうして、私たちはシンフォニア教国の式典に出席する事にした。
さて、シンフォニア教国では何が待ち構えているのだろうか?
大教主は本当にイノーゼのおじいさんなのか気になるわね;
何か裏が無ければいいけど。
つづく
イノーゼは実は大教主の孫とは・・・;
なにか、裏がありそうです・・・;
シンフォニア教国に何が待ち受けているのか?
次回に続きます。