第60話:スーナ嬢とリチャード様の愛の形
<ユーリエリア視点>
男爵令嬢ジュディ・ローグナートに化けていた
魔族の女リリスプリムが正体を現して私たちに襲いかかってきた。
「『ダークウイップ』」
リリスプリムが黒いムチで私たちを攻撃してきた。
私は『ガードフィールド』の結界で防御した。
しかし、ムチが地面から生えてきて多方面から攻撃してきた。
「はははは!ムチの多角攻撃よ!!
避けられるかしら?」
「くっ!!」
私たちは必死に避けたが結構しつこい攻撃で
相手は隙を見せない。
「そういえばノブナガ殿がこのムチで捕まってたな;」
「父上が?;」
「・・・御屋形様もこのムチに苦戦してたのかよ!!」
リックはリリスプリムのムチの事を思い出したのか嫌な顔してた。
雷信も拓海はそれを聞いて焦った;
信長殿、油断してたらしい・・・。
「お嬢様!!出てくるものなら塞げばいい!!」
「そっか!!『スペースフィルアップ』」
ウィキの助言で私はムチが出てくる空間を魔法で塞いだ。
「なっ!!ムチが出ない!!!」
「この隙に攻撃させてもらうわ。
『ライトハンド』」
私は光の魔力を掌に込めて平手を大きくしてリリスプリムをぶった。
「ぐはっ!!!ぶったわね!!!!
魔王様にもぶたれた事ないのに!!!」
「某ロボットアニメの主人公みたいなセリフみたいな事言わないで!!!」
「版権に関わるよな;」
殴られた頬をさすりながら言うリリスプリムのセリフに
私と拓海は元ネタを知ってるので呆れてた。
「なによ;それなら
『ダークグローブハンド』」
そう言ってリリスプリムは両手に闇の魔力のグローブをはめた。
まるでボクサーのグローブみたいだ;
それで殴りかかってきた。
「『ブラックウインドブロー』」
「「「「「うわあああああ!!!!」」」」
リリスプリムが横なぎに拳を振るうと
黒い闇の風の衝撃が私たちを襲った。
衝撃で少し吹っ飛んだ。
「どんどん行くわよ。
ほれ!!ほれ!!ほれ!!」
風の連続攻撃に部屋はめちゃくちゃになった。
テーブルや本棚や花瓶などが無残に破壊されている。
「く、強風で奴に近づけない」
「風が邪魔だな・・・;」
「なんとか風を防ぐ方法はない物か・・・」
「そういえば風って温まった空気が冷やされることで
空気に流れが生じるんだったな」
リックとウィキと雷信が風に困ってると
拓海は風の吹く仕組みを思い出したのかヒントをくれた。
さすが稲東高校の学年テスト2位の秀才だわね。
「そうか!温度ねw
『テイクテンプチュアー』!!」
「な、風が止まったわ!!」
私は魔法で風の周りの温度を一定にした。
風の周りがぴたっとやんだ。
「風の周りの温度を一定にすれば風は起こらない寸法よw
理科の基礎知識ねw」
「く・・・訳の分からない知識を・・・」
私の説明に理解できないのかリリスプリムが悔しそうに睨んだ。
この隙にリックと雷信とウィキと拓海が武器を持って奴に近づいた。
「『獅子牙喰斬』」
「『霊気闘雷剣』」
「『暗黒十字剣』」
「忍法『クナイ連続切り』」
リックが虎が獲物を喰らうように剣で切り刻み、
雷信は雷の霊気の籠った刀の一撃で敵を切り飛ばし、
ウィキは闇の纏った剣で十字の形に切った、
拓海は神速な早さのクナイの連続攻撃をした。
「きゃああああああああ!!!!!」
それぞれの攻撃にリリスプリムは傷だらけになり弾き飛ばされた。
そして地面にひれ伏して奴は身体から血がにじみ出してた。
「やったわあああ!!!wwww」
「すさまじい剣の腕だな。
さすがユーエリア殿の婚約者と従者だ。
リックも強くなったな」
「すごいです!!!!」
「・・・」
倒されたリリスプリムを見て
エリザベス様とジークハルトとスーナ嬢は喜びの声をあげた。
リチャード様はまだ茫然自失になってるようだ。
「じゃ、ムチで踏ん縛ってさっそく敵を牢屋に入れましょうw
ムチで縛った方が奴は屈辱でしょw同じ武器だしw」
「ま・・・まだよ・・・
こうなったら王太子を暗殺させてもらうわ!!
『ダークアロー』!!」
私がムチを持ってリリスプリムに近づき牢屋に入れようと思ったら、
まだ動けるのか奴は闇の矢の魔法をリチャードに向けて撃ってきた。
くっ、かなり早い;反応が遅れて私たちはどうする事も出来なかった。
しかし・・・
「危ないです!!」
バシュッ!!!!
「スーナちゃん!!!」
「スーナ殿!!」
「スーナ嬢!!!」
リチャード王子を庇ったのかスーナ嬢が代わりに闇の矢に当たった。
倒れるスーナ嬢に私たちは真っ青な顔になった。
エリザベス様とジークハルトと私は彼女に駆け寄った。
リチャード様も庇われたのに気づいたのかおそるおそる近寄る。
「スーナ・・・?」
「リチャード様・・・よかった」
瀕死でもスーナ嬢が笑顔でいるのをリチャード様は不思議に思ったようだ。
「なんで庇った・・・?
僕はヒドイ事言ってお前を振った男だぞ」
「それでも・・・リチャード様は・・・私の大好きな人です。
ずっと・・お慕いして・・・い・ます・・」
「スーナ?スーナあああ!!!!!!」
それでもリチャード様を慕ったスーナは動かなくなった。
リチャード様は叫び声をあげて一筋の涙を流した。
そして剣を持って立ち上がった。
<リチャード視点>
スーナが僕を庇って死んだ。
僕は・・・僕はホントは・・
彼女が好きだったんだ。
今更気が付くなんて遅いよな。
でも、僕は彼女の仇を討たなくてはならない。
「王家に歯向かう賊め!!!!!!
そしてスーナの仇!!!
今、ここで討たせてもらう!!」
僕は剣を構えて賊の女に立ち向かった。
「ふふふ・・・ヘタレな王子に何ができるって言うの?」
そう言いながら賊の女は
隠し持っていたポーションを飲みながら立ち上がった。
どうやら動けるぐらいに傷は回復しているようだ。
「確かに僕は彼女の想いに気づかない、
ヘタレでバカで女好きな最低な男だった。
けど、僕はスーナが好きだと気づいた!!
だから、お前を倒す!!!!!」
「あらあら?熱血系になっちゃって;
ふふふ・・・甘ちゃんの王子様が私を倒す?
片腹痛いわ?!」
賊はそういってムチを取り出して僕をバカにしながら打ってきた。
「なんとでも言うがいい!!!
僕は意地でもお前を倒して見せる!!!!」
そう言いながら僕はムチを避けつつ剣で切り掛かった。
「『散雨飛沫』」
「くっ・・・」
僕の突きの剣が奴の頬をかすった。
「よくも乙女の顔に傷を付けたわね!!!!
『ウイップコンチェルト』」
賊はムチを両手に持って僕の首に縛り付けた。
そして僕を持ちあげて地面に叩きつけた。
「ぐはっ!!」
「リチャード!!」
エリザベスが僕を見て叫び声をあげた。
すると僕を心配したのかユーエリア殿たちが前に出ようとした。
「私たちも助太刀して・・・」
「来るな・・・。
これは僕の戦いだ・・・!!!
スーナの仇は僕が討って見せる!!!」
そう言って僕は立ち上がった。
それを見て賊の女はバカにした笑みを浮かべた。
「ははは!!!こんな状況で何ができるっていうの?」
そう言いながら奴はムチで僕の首を絞めた。
「くはっ・・・;
く・・・ぼ、僕・・は諦め・・ない・・・!!!
スーナの・・想いに・・
応え・・るため・・に貴様を倒す!!!
『ドロップウォーター』」
僕は魔法で周りの水のマナを集めムチを伝って
奴の口を水で塞いだ。奴は水に溺れているようだ。
「ごばっ!!ごぼぼぼぼ・・・!!!」
「『アクアローリングカッター』」
僕は水の刃でムチを切ると、
剣を構えて奴に切り掛かった。
「『王威無限覇真斬』!!!」
王家に伝わる王を継ぐものにしか教えられない最終奥義で奴を切った。
威圧で敵を動けなくして多方面から無限に切り刻んだ。
水の魔力で剣を覆って切れ味を鋭くしてやった。
奴は血を吹きだし倒れ込んで動けなくなった。
でも瀕死だがまだ奴は生きてるようだ。
「く・・・まだ息があるか!!
ここで奴を殺す!!!」
そう言って僕は奴の首を切り落とすため剣を振りおろした。
ガキン!!!
「・・・!!!」
「ノヴァエビル!!!」
「野田!!」
「おやおや、小生が心配してきてみればこのざまですか?リリスプリム?」
「・・・う;・・うる・・さい」
オーガのお面を頭に付けた黒いキモノの男がカタナで僕の剣を防いでいた。
赤目に角に黒髪?魔族か?
ユーエリア殿とライシン殿は奴を知ってるのか?
僕が戸惑っていると
「ここで仲間をやられるわけにはいかないからね。
ここで退散させていただきますよ」
ドカッ!!
「うごっ!!!」
謎の男が片手で僕のお腹を殴った。
その隙に女の賊を連れて謎の男は消え去った。瞬間移動の魔法か;
「くっ・・・取り逃がした;」
僕は悔しくて床に拳を殴りつけた。
そしてスーナに駆け寄った。
「ごめん;ごめん・・・お前の仇をとれなかったよ;
もう遅いけど・・僕はお前が・・スーナが好きです・・・」
そう言って僕は動かないスーナのくちびるに口づけた。
すると、スーナの周りに光が舞った。
「これは?」
すると光はスーナを優しく包み込んだ。
するとスーナの瞳がゆっくりと開いた。
「・・・リチャード様?」
「・・・スーナ?スーナ!!!」
僕はうれしくなってスーナを抱きしめた。
よかった!!生きてた!!!奇跡だ!!!
「どうして?私は死んだはずなのに?」
そう呟いてスーナは何かに気づいたのか懐から懐中時計を取り出した。
懐中時計は壊れていた。これは・・・。
「そうか、それをまだ持っててくれたんだな。
だから助かったのか」
「リチャード様、すみません。懐中時計壊れてしまいました」
スーナはしゅんとなって僕に謝った。
「いいんだ。これはスーナを守るために渡したものだから」
「どういうことです?」
僕の言葉に疑問を持ったのかスーナは理由を聞いてきた。
「これは『身代わりの懐中時計』だ。
これはどんな瀕死になる攻撃でも代わりに防ぎ、
持ってる人の身体を治癒する力を持つ」
「それで助かったんですのね」
いざという時に僕はスーナにそれを持たせたんだ。
「時期王妃になるのだから
敵にいつ狙われるかも知れない。
だから、身を守る物が必要だと思って。
父上や母上に相談してそれを手に入れて、
スーナに持たせたんだ。
まだ持っててくれたんだな、ありがとう」
僕は改めてスーナの絆と愛に感謝した。
まだ持っててくれたからスーナは生きていてくれたんだ。
「これは初めてリチャード様に貰った大切な物ですから」
そう言ってスーナは壊れた懐中時計を握りしめた。
「スーナ・・・。
僕は改めてあなたを婚約者として迎え入れたい。
いや、ストレートに言った方がいいな。
僕はスーナ・ナカハラトを生涯愛すると誓う!!」
「リチャード様///」
僕の告白にスーナは真っ赤な顔をした。
「だから僕と結婚してください」
「はい・・・」
スーナは笑顔で僕の申し出を受け入れていた。
僕は真の形で愛を手に入れた。
パチパチパチ・・・。
すると周りに拍手が巻き起こった。
「さすが俺の息子だ!!!いいプロポーズだった!!」
「感動いたしました!!!」
気絶から気が付いたのか父上と宰相が拍手していた。
「スーナちゃん!!よかったわね!!
リチャード!愛を誓ったんだから大切にしなさいよ!!」
「丸く収まって良かったな。リチャード様、スーナ殿」
エリザベスとジークハルトも感動しながら涙目で僕らを見ていた。
「おめでとうございます。リチャード様、スーナ嬢」
「おめでとうございます」
「めでたいよなw」
「これぞ、真実の愛だよなw」
「・・・熱々だな兄貴w(ニヤニヤ)」
ユーエリア殿たちもめでたいと拍手してこっちを見てた。
なんかリックなんてニヤニヤしてるし;
僕とスーナは真っ赤になって俯いた。
「は、恥ずかしいです・・・////」
「でも、僕は君を愛している。
これは否定できないよ」
「り、リチャード様?!」
そう言って僕はスーナを抱きしめた。
それで持ち上げてくるくる回った。
色々あったけどスーナの愛に気が付いてよかったと思った。
もう、僕は君を放さないよ!!
つづく
真の意味でリチャードはスーナ嬢を愛せるようになってよかったですw
なんだか2人はバカップルになりそうな気がしますねw
でも、ハッピーエンドになってよかったですw