第55話:王家からの舞踏会の招待状
<ユーエリア視点>
列車ジャック事件から一週間経ちました。
あれから緑の騎士団に捕まったグラスホッパー侯爵は自白して、
胸のデカい謎の女にそそのかされて列車ジャックを企てたらしいです。
エンジェルム王国の王になれると本気で思ってたらしいです。
謎の女は行方不明で
一応、指名手配されましたが手がかりがつかめないようです。
リックたちが謎の女の胸に意識を向けずに顔を覚えていたら
捕まえられたかもしれないのに;
けしからん、スケベどもめ!!!!
さて、現在ですが、リックがユーエリア伯爵家本邸にやって来て
私も呼び出されました。
リックはいつもの平民服のズボンやシャツじゃなくて
黄金の刺繍の白地の絹でできた王子の正装をしています。
こうやって見ると王子に見えるよね;;;;
見た目だけは。
「ユーエリア殿、よく来てくださいました。
今日は招待状を持参したのです。
伯爵とご夫人とユーエリア殿と
アルフォンス殿やイノーゼ殿に招待状をお持ちいたしました。
どうぞお読みください」
リックが王子様モードの敬語だと寒気がするわね。
王子のリックから王家の羽根の生えた十字架に剣がクロスされた
国章のマークが入った招待状を手渡された。
招待状?私はそれを見てみる事にした。
なになに?王城の舞踏会の招待らしい。
しかも、家族(養子になったイノーゼも含む)も招待するとは;
豪勢な;
「まぁまぁwお城からの招待状なんて光栄ですわねw」
「そうだな、ユーエリアの社交界デビューもしなければならないからな。
王家の舞踏会は目立つにはいい機会だろう」
「お姉様も社交界デビューですかw綺麗でしょうねw」
「ユーエおねえちゃん、社交界デビューってなぁに?」
王家からの招待に義母ドヌーブと父グレンは浮足立ち、
アルフォンスは私の社交界デビューのドレス姿を想像してるようだ。
イノーゼは社交界デビューがどんなものか分かってないようだ。
「う~ん、貴族のお友達を作る場所に初めて出る事かな?」
「そうなんだ。じゃあ、ユーエお姉ちゃんはいっぱい友達作れそうだね」
無邪気なイノーゼの笑顔に私は心が和んだ。
しかし、実際、社交界は貴族とのコネ作りと情報収集の場所なんだけどね。
「しかし、今回の舞踏会は特別にイノーゼ殿とアルフォンス殿も
参加してほしいと打診がありました。
特に姉上はイノーゼ殿に会いたがってますし。
それに、姉上の結婚式の日取りがこの舞踏会で発表されるようです」
「エリザベス様、ついに結婚するのね」
王子様モードのリックからエリザベス様の結婚の
日取りが決まったことを知らされた。
そういえばエリザベス様は今年で20歳になってたっけ。
ちょうど結婚適齢期で成人になるから
ついにジークハルトと結婚できるわけだね。
「それと兄上の婚約発表も兼ねてだそうです」
「リチャード様もついに年貢の納め時ですか;」
「兄上は王太子ですからね;身を固めないとさすがにまずいですから;」
あの女性たちを侍らせ遊び人のリチャード様が婚約か・・・;
なんか1人の女性の物になる姿が想像できないわ;
「あとライシンラのノブナガ殿とライシン殿も招待しておきました。
ライシンラ国の代表ですからね。
あ、ユーエリア殿はライシン殿にエスコートしてもらいましょう。
婚約者ですし」
「そうですわね」
そっか雷信たちも来るのか、婚約者だもんね。
エスコートされるのが当たり前か。
「は、反対です!!!
エスコートなら僕がします!!」
「そうだ!!私でもいいぞ!!」
アルフォンスと父がイスから立ち上がってそう言い放った;
まだ私に婚約者ができた事を慣れてないの?;;;
いい加減、姉(娘)離れすればいいのに。
「あなた!!アルフォンス!!いい加減になさってください!!
婚約者がいるのに家族がエスコート役とは伯爵家に泥を塗る気ですか!!
いいかげん、ユーエリアさんの婚約を認めてください!!」
「「・・・・ううううう(涙)でも、でも・・・;
ああああああ!!!!!」」
義母から怒鳴られて苦悩する父と弟だった;;;
「・・・とにかく招待状は渡しました。
舞踏会は2週間後なので楽しみにしてください」
そう言ってリックはお城へ帰って行った。
リックが帰った後も父とアルフォンスはテーブルに涙を濡らしてた。
それを見てため息をつく私と義母とイノーゼだった。
翌日、本邸でメイドや使用人が慌ただしく駆け巡っていた。
私の舞踏会用のドレスの衣装合わせである。
ついでにイノーゼの舞踏会用のドレスも選ぶみたいね。
国中のあらゆる所からドレスを取り寄せてフィッティングするらしい。
私は本邸の一室で大量のドレスを目の前に唖然としていた。
「ここまでそろえるとはね;」
「わ~お嬢様w色とりどりのドレスですねw」
「ここまでいろいろあるとメイドの腕が鳴りますね」
付添いのメイドのアンナとクレアがうきうきしながら
私のドレスをどれにしようか迷っている。
「伯爵家の娘の社交界デビューですからね。
舞踏会の定番の薄銀や薄緑やピンク、
赤や青や黄色、紫、オレンジ色、クリーム色、
さまざまな色のドレスを国中から取り寄せましたからね。
あ、イノーゼのドレスも準備してありますわw
さぁ、着替えてもらいましょうか?」
義母は私たちのドレスを
アークレイ伯爵家の金に物を言わせていろいろ取り寄せたらしい。
さすがエンジェルム王国の一、二を争うリッチなアークレイ伯爵家である。
「お嬢様、イノーゼ様、さっそく着替えてくださいませw」
「きゃ~かわいいお二人を着替えさせるなんて夢のようですwww」
メイドのクレアとアンナが手をわきわきさせながら近づいてきた。
「・・・なんか怖い;;;」
「手つきがやらしいわね・・・;」
メイド2人の仕草にドン引きするイノーゼと私だった。
「「さぁ、着替えてもらいますわ!!」」
「「きゃ~~~~~~~~!!!//////////」」
私とイノーゼはあっという間にひん剥かれいろいろ着替えさせられた。
「さすがにお若いから肌もすべすべねw」
「きゃ~w食べちゃいたいくらいもちもちのお肌w
うらやましいですw」
「ちょ、どこ触ってんのよ;」
「はずかしい・・・;」
「あら、いけないわwドレス合わせを始めましょうか」
私たちの肌に頬づりするメイド2人にさらに引いた。
それから次々に色々なドレスをフィッティングされた。
ゆうに3時間以上は越えたね;
それでもドレスの着替えは続く。
「ドレスの色はお嬢様の金髪に似合うように…
このような黄色はいかがでしょう?」
「いえいえサーモンピンクも捨てがたいですよw」
「青もいいかもしれないわね。
空色が流行ってると社交界でも話題になってましたし」
ドレスの色でメイドたちと義母が思案し合ってた。
・・・別にどの色でもいいんだけど。
「アイボリーもいいわねw」
「でもお肌の色に近くはありませんか?」
「白に近い白銀色もいいかもしれません。
イノーゼ様とお揃いにするとインパクトがあるかもしれません」
クレアの提案で私とイノーゼは白銀色のドレスを着る事にした。
フリルと輝いた白銀の生地が組み合わさったドレスで
いたるところに小さいダイヤモンドのような
光の魔道石が散りばめられて縫い付けられていた。
某紅白の小林●子みたいな派手さがあるわね;
舞台装置でも動きそうだわ;
いや洋風だからバラードを歌う浜崎あ●みかしら?
「光属性の魔道石が散りばめられて綺麗です~www」
「ホント、光り輝いてる気がします」
「我が伯爵家の名産の魔道石ですからねw
社交界デビューで伯爵家をアピールするにはもってこいですわねw」
私とイノーゼを見てクレアとアンナと義母は満足そうだ。
「きらきら綺麗w」
「たしかに目立つわね;このドレス;」
イノーゼは着ているドレスに目を輝かしていた。
私はあまりの派手さに気後れしていた。
「あら、目立つのは淑女の特権ですよユーエリアさん。
では、このドレスを舞踏会にユーエリアさんたちは着て行く事にしましょう。
私はこの真紅のドレスにしますわ」
さすが義母は社交界で薔薇と呼ばれているだけあって
真紅のドレスを着て行くそうだ。
黒薔薇のコサージュと真っ赤な生地のドレスが
大人な女性を演出しているわね。
こうして舞踏会に着て行くドレスが決まった。
次に問題になったのは舞踏会と言う事でダンスである。
当然、エスコートする雷信も私とダンスを踊らなければならない。
しかし、私と雷信は盆踊りぐらいしか踊った事が無いので
父と義母とウィキからダンスを習う事にした。
「舞踏会は1曲目のカドリールから始まります。
そしてワルツ、タンゴ、ポルカで15曲ぐらいがあるのです」
そう義母は舞踏会のダンスの種類を説明した。
そんなにあるのね・・・;覚えきれるかな?
「でも基本はワルツだから、それさえ覚えればなんとかなるぞ。
では、手本を見せる。ドヌーブ、手を」
「はい、グレン様」
そう言って父と義母はワルツを踊り始めた。
音楽はアドバーグが音楽機のスイッチを押してクラシックな音楽が流れる。
さすがに社交ダンス慣れしてる両親だわ。
ステップが華麗だった。一枚の絵画のように見え息がぴったりだった。
見とれていると1曲終わったみたいだ。
「このように踊るわけだ。
まず、音に乗る事が重要だな」
「そうね、最初は慣れている人にダンスをエスコートされるのもありね」
そう言って両親はウィキを見た。
「僭越ながら私がダンスの指導を行いたいと思います」
「ウィキはワルツを踊った事あるのですか?」
使用人モードのウィキがダンスの相手をしてくれるらしい。
ウィキってダンスの経験があるのかしら?
悪魔だから長生きしてそうなので経験はありそうだけど。
「はい。某国の宮殿でお忍びでダンスを踊った事があります。
では、お手を」
「はい」
私はウィキの手を取って音楽に合わせてワルツを踊り始めた。
がっちりホールドされてると照れくさい;;;
ウィキは見た目が美形だから特にね;
「あああ!!!あいつ、お姉様とダンスを!!
ウィキリードめ!!うらやましい!!」
「俺もなんか嫉妬するな」
「俺も」
「娘と主従関係とはいえ娘と男のダンスを見るのは複雑だな;」
「・・・黙ってダンスを見てなさい;」
アルフォンスと雷信と拓海は私とウィキのダンスを見て嫉妬してた;
父も複雑な顔をしてる。それを義母は黙って見てるよう窘めた。
「ワルツは1、2、3の3歩から基本のステップは構成されます。
このようにワンツースリーと」
ウィキにステップをリードされて踊った。
このように足を捌くように動くのね。
「1から繋がるワンスイングで踊り切り
3歩に見えないように注意してください」
ウィキの指導は続いた。
かなりウィキはダンスが上手いのかだんだん私もコツがつかめてきた。
「最初は誰かに見てもらって
1歩に見えるようにして下さい
初期動作の1歩のスイングはすごく早く
後はゆっくりした動作で動きます。
その調子です」
華麗に動くウィキにちょっと見とれて見直した。
こうして私の初ワルツは終わった。
「ユーエおねえちゃんと
ウィキおにいちゃん、綺麗だったw」
イノーゼが拍手して褒めてくれた。
「く、悔しいけどウィキリードの教えがすごいのが分かった。
お姉様もリードされてダンス上手かったし」
「さすが経験者は違うな」
「・・・ウィキってなんでもできるんだな;」
アルフォンスと雷信と拓海が悔しそうにウィキの指導の上手さを認めた。
「さすがハートフィリア家の者だな」
「初代執事の血を引くだけありますわ」
「私は感動いたしましたぞ」
父と義母とアドバーグもウィキを見て感心していた。
初代執事の血はウィキはホントは引いてないんだけどね;
「さ、これからは本番です。
お嬢様と雷信殿、踊って下さい」
「え?もう?」
「お嬢様は慣れ始めていますからね。
雷信殿もリードされるとすぐできると思いますよ」
ウィキにそう言われて雷信は戸惑っている。
そして、おそるおそる私と踊る事にした。
音楽が流れワルツがスタートする。
時々、雷信が私の足を踏んで顔を青ざめさせたが
それでも一通り踊っている。
「1、2で形が完成して3はそのままゆっくり閉じられます。
前のステップからの3で膝を前に使うときに
ホールドの形を変えないように」
ときどきウィキから指導が入る。
雷信は緊張しながら言われたとおりにした。
「お嬢様もそのタイミングで足を前に出してください!
後退する時もホールドは動かさずに
相手の殿方のネクタイの結び目のところを前に、
膝も前に動かしてステップする事」
こうかしら?
私は試行錯誤しながら踊りをマスターしていった。
小1時間ほどで形になってきた。
「だいぶ形になって来ましたね。
ではイノーゼは旦那様と拓海は奥様と踊って下さい」
拓海とイノーゼもワルツを踊り始めた。
かなり苦労したが3日ぐらいで大体マスターできるようになってた。
拓海はあまりの苦行に床に突っ伏して涙目になってたけど。
しかし、問題はアルフォンスである。
私と踊っても義母と踊っても上達しなかったのである。
「・・・く、なんで踊れないんだろ;」
アルフォンスはかなり悔しがり泣いていた。
・・・才能の問題なのかアルフォンスは踊りの才能がないようだった;
あと、3日で舞踏会なのに。
「・・・アルフォンスは壁の花になるしかないのか;」
「父上!!僕は踊れます!!踊れるようになって見せます!!」
ため息をついた父にアルフォンスはそう反論した。
でも、ねぇ・・・;
「試しにイノーゼと踊ってみてください。
身長差のない方が踊りやすいのかもしれません」
ウィキにそう言われてアルフォンスはイノーゼと踊り始めた。
音楽が流れ始めて踊りはじめる。
案の定、アルフォンスがこけそうになったり、
イノーゼの足を踏んだり散々だった。
そんな中、イノーゼがアルフォンスに助言し始めた。
「わたしと平行に動いて」
「こうか?」
イノーゼに言われた通りに動くアルフォンス。
「つま先立ちでお腹を中心とした横に移動して」
ん?だんだんとアルフォンスの動きが良くなって行った。
イノーゼにリードされて形になってきた。
「足は内側に、足を寄せた後、上げて」
「こう?」
「うん、その調子」
そう言われてイノーゼのリードに遭わせて
アルフォンスは踊りきった。
「すごいじゃない!初めてまともに踊りきったわ」
「できた!!やったーーー!!!!」
私に褒められてアルフォンスはバンザイして喜んだ。
よっぽど嬉しかったらしい。
「アルくん、よかったね」
「・・・!!///」
イノーゼの無垢な笑顔にアルフォンスは顔を真っ赤にして照れた。
あら?これは・・・。
アルフォンスが私以外に異性に興味持つのって初めてね。
私は珍しそうにアルフォンスを見つめた。
「こここここれは違うんです!!お姉様!!
とっさに笑顔を向けられてびっくりしただけで;
さ、ダンスの練習練習!!」
そう言ってアルフォンスはダンスの練習に戻って誤魔化した。
これはシスコンからアルフォンスが脱却できるチャンスかもしれないわね。
そう考えつつアルフォンスの心の成長を祈る私だった。
つづく
意外にもアルフォンスはダンスが苦手でしたw
そして、イノーゼにアルフォンスは少しときめいてますねw
シスコン脱却の兆しか?そうだとうれしいのですがw
次回はお城の舞踏会ですw貴族らしい展開になってきましたねw