第45話:杏槌城潜入
<ユーエリア視点>
王都防衛は私とウィキの替え玉のウンディーネと式神に任せて
私たちは風魔法で空を飛んで雷森羅国に向かっていた。
「お姉様、ライシンラの城が見えてきましたよ」
「そうね」
アルフォンスが雷森羅国のお城を指さすと私は頷いた。
あのお城は日本風のお城だわね;
アルフォンスも雷森羅国に無理を言って付いて来ていた。
「アル様、なんか奇妙な城ですね」
「写真で見た物より珍妙ですね」
アルフォンスの従者のドーソンと
それに諜報に詳しい赤の騎士団のリイムも私たちに付いて来ていた。
リイムはともかく、アルフォンスとドーソンまで来る必要ないのに;
アルフォンスは私が敵地に乗り込む事を知ると
過保護なのか付いてくると聞かなかった。
「お姉様は僕が守ります!!」と言って
変にシスコンが悪化してるような気がした。
その敵の城の近くの林の茂みに着地すると、
そこにはブルームテンペストサーカス団もとい
オニワバン調査団のフロドとミーロがいた。
フロドとミーロは黒目黒髪のカツラとコンタクトで着物を着て変装していた。
実は2か月前から雷森羅国が怪しいと踏んで
潜入捜査を彼らはしていたのだ。
「お嬢様!!よう来てくれはったなw
潜入の準備はバッチリやでw」
「お城の使用人用のキモノと黒髪のカツラと
黒のカラーコンタクトレンズを用意してあります。
どうぞお着替えください」
ミーロから差し出された変装用具を受け取り私たちは着替える事にした。
ちなみにカラーコンタクトレンズは水魔法の水晶を作る魔法を
アレンジして作ったものである。
度数ありの奴やカラコンなど自在に作れた。
ユーエリア商会で両目セットで1万イエンで売られている。
私たちはキモノに着替えるとそれを見たフロドとミーロは感心していた。
「よう似合っとるでw」
「これならお城の中に潜入してもバレないでしょう」
私たちはそれぞれ女中用の青の水玉の着物と下男用の深緑色の着物を着た。
カツラとコンタクトも装着して見た目が日本人っぽくなった。
「じゃあ、お城の中へ案内して」
「使用人用の裏口に案内するで」
「みなさんついてきてください」
フロドとミーロの案内で敵のお城の裏口から潜入する事にした。
お城の中は時代劇のお城と同じような作りをしていた。
なんか畳の香りがして日本を思い出した。
中では忙しそうに武士や女中や下男の使用人が働いていた。
「しらみつぶしに探すのもなんだしね;どうしよう?」
「そんならお城のキッチンに行きましょか?
使用人がなんかお客さんが来てる言うて食事やお茶を作ってるらしいで」
フロドに案内されお城の台所に行く事にした。
そこにはたくさんの女中たちが包丁で野菜を切ったり
竈で煮物を作ったりお米を炊いたりしてた。
この国にはお米があったのねwぜひ欲しいわw
『ステルス』の魔法で姿を消して様子を伺って見る。
「ああ忙しいわ。
お初は白い変なお客人の相手をしているみたいだし。
お茶の替え持って行って」
「はい。まあ、お初は幼いですし
同じ年頃の子供同士仲が良いのはいい事です」
「けど、女中として仕事を忘れちゃいけないと思うけどね」
女中たちの会話からどうやら白いお客人はイノーゼの事らしい。
私たちはお茶を持っていく女中の後を付けた。
部屋の前に立ち止まった所でウィキがその女中の前に姿を現した。
「だ、誰?」
「操らせてもらうぜ。『ヒュプノーゼ』」
ウィキは女中と目を合わせると女中はぼんやりとした表情になった。
こうして催眠魔法を女中に掛けてお茶の乗ったお盆を受け取った。
そして、無事仕事を終えたと報告するよう女中を台所へ返した。
「よし、お嬢様はこのお茶を持って部屋に侵入して。
俺らは『ステルス』で姿を消してついていくから」
「わかったわ」
私はウィキからお茶のお盆を受け取り部屋の中に入る事にした。
中からイノーゼの魔力の気配を感じるわ。
そこにいるわね。私はお茶を運ぶ女中の振りをしながら中に入った。
<鷹宮拓海視点>
ここ数日、イノーゼからユーエの話を聞いていると
十中八九、ユーエが国府宮だと確信した。
どうやらムチで男たちを下僕にしてしばいているらしい;;;;
高校でも国府宮がドSらしいって噂が広まってたもんな;
怪しいプレイの店にも通ってるって噂が出てるぐらいだし;;;
「へ~・・・そうなんだ;;;;」
「最近ではハイにゃんって猫のペットもしばいてる。
ハイにゃんはムチで叩かれて気持ち良さそうにしてるし;;;」
「ムチって気持ちいいのかな?」
俺はその話を聞いてちょっと引いた;;;;
ペットまでそんな扱いしてんのかよ;;;
お初は不思議そうにその話を聞いていた。
「・・・そのペットとやらが変態なだけではないのか?
その猫、俺も見た事あるし;」
織田信長様の
ご子息の織田雷信様もその猫にドン引きしてた。
どうやらその変態猫と会った事があるらしい。
「そういえば、ハイにゃんと会った事あったっけ」
「イノとえんじぇるむの街の中を逃げた時に会ってるしな;;;
その猫の嗜好にはかなり引いたぞ;」
雷信様はその猫と会った時を思い出したのか身震いしていた;;;
かなり変態な猫らしい。
「・・・その猫の話はやめよう;;;;
ん?イノ、その髪飾り珍しいな。ちょっと見ていいか?」
「借り物だから大切にしてね」
雷信様はイノーゼから超豪華そうな
ダイヤモンドみたいな石が散りばめられたティアラを渡された。
雷信様はそれを珍しそうにいろいろな角度から見ていた。
「珍しい品だな」
「エリザベス様から聞いたけど数十億イエンするんだって」
「数十億イエン!!!!」
イノーゼからそのティアラの値段を聞いて俺は驚いた。
エンジェルムの通貨価値は日本円と似ているから
そのティアラは数十億円するって事か!!
な、なんて品を借りてるんだこの子は;;;;
「その、数十億イエンって高いのか?」
「一両で10万イエンですから。
そのティアラが30億イエンと仮定すると、
300万両は掛かる代物ですよ!!」
「三百万両だと!!!」
俺が雷森羅の通貨価値に直してティアラをお金に換算すると
雷信様は腰を抜かして驚いていた。
「こここここ・・・。このようなものを気軽によく頭に乗せるよな;;;;」
「でも、借り物だからわたしの物じゃないよ」
「そういう問題じゃなくてだな。これ返す!!」
雷信様はおそるおそるイノーゼにティアラを返した。
イノーゼはきょとんとしてそれを被り価値が分かってない感じだった。
すると、ふすまがそっと開けられ女中らしき女の子がお茶を持ってきた。
「お茶でございます」
静かに女の子がお茶を差し出しててきぱきと代えていく。
すると・・・雷信様が訝しげな顔をした。
「顔立ちが我が国の者と違うな・・・。
俺は城の中の者全ての人物の顔を覚えている。
お主、曲者だな!!」
雷信様は刀を抜き女の子に切り掛かった。
とっさにそれを避けた女の子のカツラが落ちた。
金髪?
「ちっ;城の者の顔を全て覚えている奴がいたなんて;
計算外だったわ」
「異国の金の髪・・・。
まさか、えんじぇるむの間者か?!」
「バレてしまっては仕方ないわね」
そう言って女の子は拳を握りしめ格闘技っぽい構えを取った。
「ユーエおねえちゃん!!」
「え?まさかこの子がユーエなのか?」
イノーゼの言葉にユーエらしい女の子を見ると
国府宮と似ても似つかない
外国風の美少女モデルのような姿をしていた。
雷信様は興味深そうにユーエを見ていた。
「まさか、噂のユーエという女子を見る事になるとはな;
驚いたぞ」
「そりゃどうも」
そう言ってユーエがパンチを雷信様にしてきた。
それを避ける雷信様。
「『散華連撃』」
ユーエが雷信様を拳の三連撃で殴ってきた。
それを避け雷信様も刀で応戦する。
「『流水』」
「甘いわ」
バキッ!!
流れるような太刀筋でユーエに斬りかかる雷信様。
すると、ユーエはそれを白刃取りで刀をキャッチして横にへし折った。
「なに!!!!!!」
「まだまだ甘いわね。
リックレベルにも達してないわ」
そう言ってユーエは雷信様の懐にボディーブローを叩きこんだ。
「ぐほっ!!」
「雷信様!!」
俺は雷信様を助けようと動こうとするが首筋に剣がある事に気が付いた。
「おっと動くなよ。他のみんなもだ」
銀髪の男が俺の後ろから首筋に剣を向けている。
お初も赤髪の七三分けのオールバックの
メガネの男に剣を向けられていた。
金髪の幼い少年と茶金色の髪の少年もそこにはいた。
ナイフを持った紫の髪の若い男と女の子もいる。
「さ、イノーゼを返してもらいましょうか?」
「くそっ・・・」
悔しそうに雷信様は呻くとイノーゼはユーエのほうに駆け寄った。
圧倒的ピンチに俺は焦った。
「雷信様!!!」
すると天井裏から菊林忍軍の頭領の伝蔵様が降りてきた。
すると訝しげにユーエが伝蔵様を見つめていた。
「何者?」
「菊林忍軍頭領、
菊林伝蔵!!
若様を助けに参上つかまつった!!
曲者め!!覚悟!!」
伝蔵様が指を鳴らすと数人の忍者が畳の下や天井裏から出てきて
ユーエ達に向かって手裏剣を投げた。
「くっ・・・」
とっさに避けるユーエ達。
仲間の剣や魔法であろう見えない壁で飛んできた手裏剣をガードしている。
しかし、勝手知ったる自分たちの城では忍者たちが有利だ。
どんどんユーエ達を追いつめていった。
「隅に追い詰められたわ;;;」
「さて、曲者たちよ。
お主らを人質として捕えさせていただく」
部屋の隅に追い詰めたユーエ達を伝蔵様は部屋の
ひもを引っ張りからくりを発動させた。
すると上から頑丈な檻が落ちて来てユーエ達を閉じ込めた。
「な、檻?!!!!」
「こんな物、すぐ切って出てやる」
銀髪の男が剣で鉄格子を切ろうとするが切れない。
「な!!」
「僕がやる!!!って切れない!!」
「私もやっているのですがかなり頑丈な檻みたいですね。切れません」
驚く銀髪男を尻目に金髪の少年と茶金色の髪の少年も
鉄格子を剣で切ろうとするが傷一つついてない。
「どうやら、特殊な金属でできているようですね」
赤髪のメガネ男が悔しそうに鉄格子を触っている。
特殊な檻と気づいたようだ。
「この檻は霊気が籠っておりましてな。
ちょっとやそっとでは出れませんぞ。
ほっほっほっ。では、眠って頂きましょうか?」
伝蔵様は檻の中に眠りの香の玉を入れて、
檻の中に煙を充満させた。
霊気でガードしてある檻なので外に煙は出ないようになっている。
「ごほっごほっ・・・く・・・」
「油断した・・・」
「ねむ・・・」
「・・・zzz」
「く・・・」
「あかん・・・」
「意識が・・・」
「ふか・・く・・でした;」
ユーエ達は檻の中で眠りに落ちた。
忍者たちはユーエたちを縄で縛り、武器を取り上げた。
「この曲者どうしましょうか?」
「牢屋に入れるべきだな」
伝蔵様と雷信様は眠ったユーエ達を見てどうしようか思案してた。
「伝蔵様!!雷信様!!
もしかしたら、そこの金髪の女の子は
俺と同じ世界から来たのかもしれません。
和食や箸の使い方を白い子供に教えたのもこの子らしいです。
しかも俺の世界の話を本で出版してるようでした」
「なに?!」
「なに?拓海と同じ世界から?日ノ本の未来から来たと言うのか?;
むむむ・・・。ならば、御屋形様に会わせる必要があるな。
天守の間に連れて行け」
俺の言葉に雷信様は驚き、
伝蔵様は忍者たちに命じてユーエ達を織田信長様のいる
天守の間に連れて行く事になった。
俺とお初や雷信様も一緒に天守の間に行った。
ユーエは国府宮なのか?
俺はユーエの口からはっきり聞きたかった。
つづく
ユーエリアたちが捕まってしまいました;
さて、次は信長との対面です。
ユーエリアはどんな反応を見せるのでしょうか?
次回に続きますw