第39話:謎の着物少年の逃走劇と戦い
<着物の謎の少年視点>
俺は『あーくれい』の公家の童女の
手を引っ張ってこの国の武士どもから逃げていた。
「童女、すまないが逃げるのに人質になってもらうぞ」
「わたし、ドウジョじゃない。イノーゼ」
どうやらこの童女の名は『いのーぜ』というらしい。
猪のような変な名前を何回かその名を口にして発音を確かめてみる。
「いのーぜ、いのーぜ、『イノーゼ』か。
だったらイノだな。イノ、もう少し付き合ってもらうぞ」
「きゃっ;」
俺はイノを抱きかかえ『えんじぇ』の都を疾走した。
「待て―――!!!!」
「イノーゼちゃんを返しなさい!!!」
「イノーゼたん!!待ってにゃ!!」
息も絶え絶えな武士どもとともにイノの親族であろう者たちも
追っかけて来ていた。
・・・なんか変な二足歩行の猫も付いてきているが妖怪か?;;;;
なんて思いつつ俺は地面を蹴って家屋の屋根に飛び乗った。
俺は都の街並みを眺めながら屋根を飛び移った。
「すばしっこいな!!!!」
「お嬢様たちと訓練しておいてよかったですね」
「跳べない猫はただの猫にゃw跳べてよかったにゃ」
どうやらイノの家人たちもそれなりの身体能力を持っているようだった。
同じように家屋の屋根を飛び移りながら後から付いてくる。
「やるな!!だったらこれはどうだ!!」
俺は懐から陰陽術の札を取り出し霊力を込める。
ごおおおおおおおお!!!!!
轟音とともに札から炎の鳥が出て飛んでいきイノの家人たちに襲いかかった。
「にゃ!!あぶないにゃ!!」
すると妖怪の猫が水の妖術で水流を飛ばし炎の鳥を消し去った。
「助かりました」
「お前がペットで初めて良かったって思えたよ;」
「にゃ~wほめられたにゃw
だったらご褒美に後でまたしばいてほしいにゃw」
「・・・やっぱり飼うの嫌だ;気持ち悪い;;;」
「・・・その冷たい視線がたまらないにゃwww」
・・・妖怪の猫は変な性癖があるようだ;;;;
飼い主から冷たい視線を受けて変に喜んでいる。
「・・・あの妖怪は変態なのか?;」
「・・・否定できない;;;;」
俺の問いにイノもあの猫について変態と思っているようだ;
俺もあの妖怪を飼いたくはないな・・・;
そんな事を考えながら屋根を飛び移りながら考えていた。
「くっ、追いつけない・・・;」
「ハイにゃん、疲れてきたにゃ;」
「これじゃ、撒かれてしまいます;;;
だったら、『ストームテンペスト』!!!!」
家人の1人が剣を俺に向けた。
な、なんだ?いきなり緑色の風の竜巻が現れて俺を弾き飛ばした。
「うわあああああああ!!!!!」
俺はそのまま空から落下して地面にぶつかりそうになった。
「『ガードフィールド』」
地面すれすれに透明な壁が現れて落下の衝撃を抑えてくれた。
「い、イノ?お前の妖術か?」
「ううん、魔法。助かってよかった」
とイノは笑顔でそう言った。
その笑顔になぜか妹のような幼馴染のお初の顔が浮かんだ。
「ドーソン!!イノーゼまで巻き込まれそうになったじゃないか!!」
「す、すみません;でも、イノーゼちゃんは無属性魔法の使い手なので
なんとかできると思いまして;」
「でも、ようやく追いついたにゃw」
どうやら追いつめられたようだな。
後ろは壁で袋小路になっていた。
イノの家人たちの他に武器を持った変な異国の格好の武士たちも集まっている。
「不法入国者だな!!逮捕する!!
総員かかれ!!!」
「「「「「おおおおおお!!!!!」」」」
武士どもが十数人俺に襲いかかってきた。
しかし、動きが遅い!!俺は刀を抜いた。
「織田真流抜刀術『流水』」
俺は流れる水のような刀さばきで武士どもを切った。
一瞬にして武士どもが倒れた。
「安心しろ。峰打ちだ」
殺すとやっかいだからな。真の武士は情けを掛けるものなのだ。
「・・・かなりの強さの奴みたいだね」
「戦う必要がありそうです」
「ハイにゃんも戦うにゃw」
イノの家人たちも妙な形の刀を抜いたようだ。
刀と少し毛色が違うような武器だな。
しかも真剣らしい。
「真剣か。死合う覚悟があるようだな。
よかろう。俺も真剣に戦おう。
俺は雷森羅国の武士。織田雷信。
いざ、参る!!!」
俺は縮地で走り抜け家人たちに切り掛かった。
すると、金の童が俺の刀を変な刀で受けた。
「ほう?やるな」
「僕もそれなりに修行しているんだ」
金の奴は俺の刀を押し切り斬り返してきた。
「『神剣追牙』」
金の童は黄金の闘気を刀に纏って無数に突いてきた。
こいつかなりの腕か!!
「『円流』」
俺は後ろに下がり奴の刀の突きをかわし小手に向かって円を描くように切った。
奴の手には少し傷ができていた。
「アル様!!!『風華波剣』」
金の童を様付けで呼ぶとはこいつ従者か?
その従者が刀でかまいたちを作り出し次々剣で飛ばしてきた。
俺はそれを軽々避けた。
「ハイにゃんも戦うにゃwww
『水の爪』」
妖怪の猫は水でできた爪を伸ばしてばり掻いてきた。
猫なのでけっこう素早い動きだ。
俺はそれを剣の峰で打ち込み。さらに、柄で猫の腹を勢いよく突いた。
「にゃ・・・。痛いにゃ・・・でも、きもち・・いいにゃ;
がくっ;;;」
猫の妖怪は気持ち良さそうに気絶した。
やっぱり変態だな・・・;
「『風迅突破』」
「『神波猛追剣』」
茶金色の従者の風の速度の突きと
金の童の上からの剣撃が俺に襲いかかった。
俺は霊気と闘気を発して刀でそれらを次々切り飛ばした。
その斬撃が響いているのかびりびりと手を痺れさせているようだった。
「多勢に無勢の攻撃だったが甘いな。
織田真流抜刀術奥義!!
『霊気闘雷剣』!!!」
俺は神速の抜刀をして金の童に向かって切り掛かった。
霊気を纏った雷の波動が抜刀術を加速させる。
「アル様ああああああ!!!!」
「きゃああああああ!!!!!」
金の童の茶金の従者とイノが叫び声をあげた。
しかし、この死合い俺の勝ちだ!!!
俺の刀が金の童に届きそうになったその時。
ガキン!!
「なに!!!」
「あら?かなりの剣術ね~w
でも、所詮子供ね、甘いわ」
青い腰まで届く長い髪の女言葉の男が俺の斬撃を変な刀で受け弾き飛ばした。
俺の刀が空中に舞って地面に刺さった。
変な刀を俺に向けて青い変な男は微笑んだ。
「チェックメイトね。
あ、ジーク?人質のお嬢ちゃんは無事?」
「ああ。無事だ。周りに騎士団も包囲済みだ」
緑の髪の男がいつの間にかイノを取り返していたそうだ。
しかも、武士どもを周りに俺の周りに包囲させている。
「さ、観念なさい?
不法入国の罪であなたを逮捕するわ」
青の男が俺の喉元に剣を向けてそう言った。
くっ・・・こいつかなりの使い手と見た。
飄々としてるのに周りの空気が鋭く、俺の父上並に苛烈な闘気を感じる。
「くそっ!!」
俺は懐から煙玉を取り出して地面に投げた。
周りに白い煙が漂って覆い隠す。
「ごほっごほっ;;;;何この煙なんなの!!!」
「ま、周りが見えん;;;;」
「けむたい・・・;」
「さっきの奴どこにいったんだろ?;」
「卑怯です!!」
周りの奴らが混乱する中、式神の鳥を札から出して飛び乗った。
大鳥に乗って空に飛んで逃げる。
「ああああ!!!あんなとこにいるわ!!!
逃がさないわよ!!
『フリーズビーム』!!!!」
氷の光線が空にいる俺に向かって飛んできた。俺はとっさにそれを避ける。
さっきの女口調の青い男が放った妖術のようだ。
「ああん!!避けられたわ!!戻ってきなさいーーーー!!!!」
青の男の叫び声を背に俺は鳥に乗って逃げた。
もうすでに奴らは豆粒のように地面の下の遠くにいる。
追ってこられないようだ。
「『えんじぇるむ』の武士どもか・・・。
かなりの使い手のようだな。
しかし、武士として再びまみえるようなら必ず勝って見せる!!」
俺は再戦の誓いを決意して『えんじぇるむ』の武士どもを思い返した。
次は勝つ・・・。
「イノか・・・。
白い不思議な童女だったな」
イノの笑顔をふいに思いだした。
思い出して心が温かくなった。また、会えるのだろうか?
そんな事を思い出しながら雷森羅の国に帰る事にした。
<アルフォンス視点>
「大丈夫?イノーゼ」
「うん、だいじょうぶ」
僕はイノーゼを心配して駆け寄った。
どうやら怪我はしてないようだね。
「にゃ?ここはどこにゃ?ハイにゃんはだれにゃ?
ってイノーゼたん!!無事にゃったんだにゃ!!」
「あ、ハイにゃんも無事だったんだね」
「痛くて気持ち良かったにゃw」
「「・・・はぁ;」」
ハイにゃんは気が付いたようだけど痛みを思い出したのか
くねくね気持ち良さそうにしてた。
イノーゼと僕は相変わらずなハイにゃんの様子にため息をついた。
「その黒い少年は謎の火の魔法を使ったと;」
「紙から炎の鳥が出る魔法なんて聞いたことないわ;」
「・・・かなり特異な魔法でした。魔力も感じられませんでした。
なにか他の力を感じましたし」
ドーソンは緑の騎士団長のジークハルトさんと
青の騎士団長のレイルさんに今まで起こった事を話していた。
「新興国の魔法は魔力とは違う謎の力を使っているのか・・・?」
「・・・さっきの変わった剣術といい、かなり気になるわ;
そんな力を使うなら王国の警備をさらに厳重にする必要があるわね」
ジークハルトさんとレイルさんはそう言いながら
周りの騎士団に命じて現場検証をさせていた。
謎の不法入国者か・・・。
さっきの男の子は変な服装だったけど剣の腕はもの凄かったし;
どうやら、何か王国内で動く予感がした・・・。
つづく
雷信と名乗った少年は逃げてしまいましたねw
なにやら事が大きく動く気がしますw
次回をお楽しみにw