第37話:エンジェルム王国の騎士団長たちの会議と水猫に困る弟の頭痛
<リイム視点>
赤、緑、青のエンジェルム王国を守る
それぞれ3つの騎士団の騎士団長たちが
一同にエンジェ城内の会議室に集まっています。
私、赤の騎士団長であるリイム・スピアーズは議題の資料をめくりながら
今、王国で起こってる異変について話す事にしました。
「今、王国内に黒目黒髪の異国人らしき人物たちが
不法入国している事態がここ半年間、起こっています」
私は不法入国者たちが写った写真をレイルとジークに見せました。
髪と目が黒曜石のように黒く、
顔立ちはエンジェルム王国人と比べたら若干幼い感じの者たちが写っています。
「黒髪って事は魔族なんじゃないの~?」
青の騎士団長であるレイルが長い青髪を指でくるくるといじりながら
イスに凭れかかってめんどくさそうにそう言いました。
会議なんだからもう少し真面目に聞いてほしいものです。
そんな幼馴染に少しイライラしながら私は話を続けました。
「いえ魔族は瞳は赤いはずですので違うと思います」
「そうだな、それに角もなさそうだし人間だろう」
緑の騎士団長であるジークも写真を見ながら私に同意してそう言いました。
「人間ね~。だったらその人間たちはどこから来てるのかしら?」
「赤の騎士団の諜報員の報告によると大陸外からやってきたらしいです」
レイルの疑問に私は資料をめくりながら答えました。
「じゃあ、どこから来てるのよ?
隣の大陸の小人族と神鳥族の国とは容姿がぜんぜんちがうじゃない;」
レイルは不思議そうに不法入国者たちが
どこから来るのか素性について首を傾げました。
小人族は総じて土色の茶色の髪色と緑色の瞳をしていて
幼い子供のような容姿をしています。
大人でも小人族は子供のような姿をしているようです。
小人族は王国と貿易はしていますが引きこもりなので
他国と交流はしていません。
神鳥族は鳥のような翼をもつ人間で自由に空を飛ぶ事ができる種族です。
かなり陽気な種族のようで面白い事ならなんでもやり、
しかし、人に危害を加える事は絶対しない仁義な種族です。
隣の大陸ではその2つの種族の王国が二分して国を作ってます。
それらの種族と不法入国者は別物でしょう。
「王国沖の巨大な無人の島々があやしいと赤の騎士団は踏んでます」
私は会議室のテーブルの上にその無人島の地図を広げてみせました。
その無人島は複数の島からなる列島になっていて規模は小国並みの大きさです。
「あの島って50年前に王国が調べた時には無人の島だったはず」
「しかも、年中、雷が落ちる危険地帯だったわよね」
とジークもレイルも無人島について情報を思い出しているようでした。
「でも、考えられるのはそこしかありません。
しかも報告によるとそこに変な建物が立ってるという報告もあります」
私はその無人島の島々にある建物の写真を2人に見せました。
「珍妙な建物だな・・・;」
「なんか石の板が屋根の上にたくさん乗ってて、
そこに金の魚みたいな置物が2つてっぺんにのってるわね?;」
2人は奇妙な建物だと珍しそうに建物が写った写真を見ていました。
石で組んだ高い土台の上に階層ごとに
色が分かれた塔みたいな建物が立っています。
階層は下が大きく上にいくにしたがって小さくなっていきます。
王都で流行っている四角い大きいお菓子のデコレーションケーキに
小さいケーキが段ごとに積まれているような感じですね;
黒い漆塗りの窓が配された白壁が特徴的で
階層は段ごとに赤かったり青かったりしてます。
最上階は全て金色で豪華さを感じました。
「その魚の置物は避雷針の役割を持っているようです」
「ああ、雷が多い島だものね。納得だわ」
私の説明にレイルも納得したようでした。
雷がその魚の置物に落ちる瞬間の写真を見て感心しています。
「他に一般の街もそんな魚の置物が置かれているようです」
「低い一階建ての木の建物が多いわね」
「なんか街の民も珍妙な服装をしているな」
その異国人の街の様子の写真を見て
私を含めた騎士団長一同珍しがっていました。
細長い木で出来た建物で屋根は石の板がたくさん載ってて
金の魚の置物が乗っていました。
ドアも横にスライドさせる仕組みになっていて珍しいです。
街の人々も珍妙な服を着ていて、
身体に布をかけて着るようになっていて
その服を太い細長い布で縛っている固定しているようでした。
女性は綺麗な花や柄物の衣服が多く、男性は紺や黒の衣服みたいでした。
男性はそれに加え裾が広いかかとまで届く
スカートのようなズボンをはいています。
かなり文化も違うようですね。
「ハイセンスよねぇ・・・あたしも花柄のその衣服着てみようかしら?」
「女装はやめてください;」
「あら?あたしは心はレディよ!!」
レイルは花柄の異国の服を着た女性の写真を見てそう言っていました。
失礼ねとぷんぷん頬を膨らませながら怒ってました。
レイルは夜会や舞踏会に出る時はドレスで女装して出ています。
・・・仮にも青の騎士団長で公爵なのだから変な事はやめてほしいものです。
「そんだけ文化的な街ができているって事は
無人島に新興国ができているわけだな・・・」
「そういう事になりますね」
ジークは新興国の街の写真を見ながら考え込んでいるようでした。
「そいつらが王国に偵察しに来ているって事か・・・
うちの騎士団もそいつらを逮捕しているようだしな」
「そうですね。これまでに不法入国者が数名収容所に収監されています。
その収監者によるとライシンラから来たと言っていました」
ライシンラ・・・。それが新興国の名前らしいです。
その国の黒目黒髪の人間たちが勝手に王国に侵入しているので
王国も困り果てています。
「なんか~そいつら王国の民にちょっかいかけて怪我させたのもいるらしいわ」
「・・・国際問題になりそうですね」
レイルの一言の事実に私は頭を抱えました。
傷害事件も起きているとは;
もし、殺人事件まで発展したら国際問題になります;
はぁ・・・。私はため息をつきました。
「酷い時はその新興国に抗議しましょう;」
「王国の警備の強化もしないといけないわね。
あたしの騎士団も緑と連動してあまりにヒドくなったら出るわ。
赤のほうも情報集めに専念して」
「3つの騎士団を連動させて細心の注意を払って巡回せねばな;」
こうして不法入国者の対応の方針が決まりました。
騎士団全体が団結して異国人から国を守らなければなりませんね。
王国の警備強化と、もし国際問題が激化すればライシンラの国に
抗議の使者を送る事に王様に進言する事にしました。
こうして会議は終了しました。
<アルフォンス視点>
僕はお姉様の屋敷の客室であくびをしながら目を覚ましました。
パジャマから服に着替えて軽く伸びをします。
父上と母上からお姉様のお屋敷に泊まりに来るお許しを得たので、
ときどき泊まりに来ています。
母上はイヤイヤな感じで許してくれたけど、
少しずつお姉様に打ち解けてるみたいだった。
「良い天気だねw」
僕は部屋の窓を開けて春の空気を吸い込みました。
穏やかな春の風が心地よいです。
「アル様!!おはようございます!!」
部屋に従者のドーソンが入ってきた。
目覚めのモーニングティーをお盆に持ってきている。
僕はそれを飲み、ほっと一息をついた。
今日はアッサムティーだね。
「食堂に朝食が用意してあります」
「今、行くよ」
僕はドーソンと一緒に食堂に向かいました。
食堂にはアドバーグたちがすでに朝食をテーブルに用意していました。
アドバーグが今日の朝食のメニューを言います。
「今日の朝食は目玉焼きとレタスのベーコン添えと
ロールパンとツナサラダでございます」
「自然の恵みに感謝を」
僕は朝食を食べ始めました。
ナイフとフォークで器用に切り取り口に運んで食べました。
テーブルの向かい側を見るとお姉様がいない事に気が付きました。
「お姉様はどうしたの?」
「お嬢様は商会の新店舗の視察に
ウィキリードとともにお出かけになられました。
夕方にはお戻りになるかと思います」
アドバーグが恭しくそう言った。
ウィキリードめ・・・。
あの男、僕のお姉様といつも一緒にいてうやらましい・・・。
今頃、あのイヤらしい手でお姉様をエスコートしている事だろう。
僕の中でちりちりと嫉妬の炎が渦巻いていた。
そんな風にイライラしながら朝食を終えた僕はお屋敷内を散策し始めた。
「アル様、今日は何をなさいますか?」
「孤児院でも行ってみようかな?あそこは遊び場がいっぱいあるし」
アスレチックもたのしいし、遊戯室でチェスやリバーシをするのも楽しいし、
室内プールで泳ぐのもいいよね。ドーソンとそんな事を話をして、
わくわくしながら廊下を歩いているとイノーゼとハイにゃんに遭遇した。
「あ、アルくん。おはよう」
「弟様~wwwおはようにゃ~www」
イノーゼとハイにゃんが朝のあいさつをしながらこっちに来た。
イノーゼは僕と歳も近くて話もよく合ってかわいくていいのだけど;
問題はハイにゃん;
ハイにゃんは初めて会った時から変な猫だった。
ある日、お姉様とお茶をしながら話しているとこんな話をしてきた。
「ねぇ?アルフォンス。猫って好き?」
「猫ですか?僕は犬の方が好きかな?」
僕は一緒に庭を駆け回る犬の姿を思い浮かべてみた。
「犬ね・・・。ペットで猫を飼う事にしたんだけど、
苦手かなと思って;」
「猫ですか。猫もかわいいから大丈夫ですよ」
猫か~。お姉様がしなやかでかわいい猫を膝の上に乗せて
優雅に紅茶を飲んでいる姿を想像した。
似合うかもしれない。
そう考えていると部屋のドアが開いて何かが走ってきた。
「弟様~~~~wwwww」
灰色のしっぽで水の身体をした二足歩行の猫が僕に走り寄ってきた;
「うれしいにゃ~wwwww」
「・・・!!!」
その猫が唇をチューってしながら僕に抱きつこうとしていた;
バキッ!!
思わず、僕はその猫を殴ってしまった;
「はっ;僕は何て事を・・・;
というよりこの猫なんなんですか?;」
「ハイにゃんっていうんだけど。
水の精霊で水猫って種類の猫らしいわ;
かなり変わってるけどよろしくしてあげて」
お姉様にそう言われてハイにゃんを見てみると;
「ハイにゃん痛くて幸せだにゃ~wwww
むにゃむにゃ・・・」
「・・・・」
ハイにゃんは気絶しながら痛みを気持ちよさそうにしながら悶えていた。
気持ち悪っ;;;;;;
それがハイにゃんとの出会いだった。
さらにこんな事があった;
僕がお姉様のお屋敷の客室で寝ていると、気配がしたので目を開けたみた。
「寝てるにゃ~wにゃ?起きたかにゃ?」
「わっ!!なんでハイにゃんがここにいるのさ;」
ハイにゃんが僕の寝顔を覗きこんでいた。
「何で僕の部屋に勝手に入ってきてるの?」
僕はハイにゃんに怒りながら聞いた。
「にゃ?にゃんですと~~????」
「だから、何で勝手に入ってきてるの?」
「にゃんですと~~???」
「だから、何で勝手に僕の部屋に入ったのさ?」
「にゃんですと~~~~????」
ハイにゃんは気持ち悪い笑顔で僕が聞いても、
とぼけてそれを繰り返していた。
思わず、僕はハイにゃんを殴った;
バキッ!!
「にゃああああ!!!気持ちいいのにゃ!!!!」
・・・殴られるためにわざととぼけていたらしい;
ますますこの猫が気持ち悪くなった;
次にある日、ハイにゃんの乳首にピアスが付けてあるのを見つけた。
「誰に開けてもらったのさ?それ?」
「ノッレたんに開けてもらったにゃw」
ノッレさんってお姉様の友達だよね?
乳首にピアス開けるなんてもしかして変態?;;;なんて考えていると;
「弟様~wハイにゃんのピアス触ってほしいのにゃ~w」
「・・・;」
断るとまたハイにゃんが変に興奮するといけないので黙って触った。
怒ったり冷たくしたりすると逆にこのペットは喜ぶし扱いに困っていた。
ぐいぐいと軽く引っ張ってみる。
「触ってて痛くない?」
「ふにゃ~wwwにゃああああwwwwww」
乳首のピアスを引っ張られハイにゃんはうっとりとした表情をしていた。
「痛いの気持ちいいにゃあああwwww」
僕はそれを見てまたハイにゃんを殴った。
バキッ!!
「にゃああああ!!!萌えだにゃあああ!!!!」
叫びながらハイにゃんは痛みにまた気持ちよくなっていたようだった;
最後にハイにゃんにお姉様のどこが好きか聞いてみた事があった。
「ハイにゃんはお姉様のどこか好きなの?」
「優しいとこにゃw」
ハイにゃんの答えに僕も同意した。
「そうだよね~www
お姉様はどんな人でも優しく微笑んでくれて、
笑顔でいてくれるもんねwww」
お姉様は優しくて美人ですごくいい人だw
弟の僕にもやさしく微笑んでなでてくれるしw
そんな事を思い出しながら僕は笑っていた。
「ユーエにゃんの優しいとこはそんなんじゃないにゃ」
「え?じゃあどんなとこ?」
ハイにゃんはお姉様はどんなとこが優しいと思ってるんだろう?
「ユーエたんはハイにゃんをナイスなタイミングでしばいてくれるにゃw
ムチさばきが痛くてすごく気持ちいいにゃw
優し過ぎだにゃあああああwwwwにゃ~んwww」
「・・・・」
バキッ!!
僕はまたハイにゃんを殴った。
するとまたハイにゃんは顔を真っ赤にして痛みを気持ちよさそうに悶えてた。
「弟様もいいタイミングでしばいてくれるから好きにゃwwww」
「あああ!!!猫より普通の犬がペットにほしかったよ!!!」
僕はハイにゃんより普通の犬がペットにほしかったよ;
結論としてハイにゃんはお姉様に悪影響しか与えないペットだと感じた;
僕はそんな事を回想で思い出してた。
「にゃ~んwwwそんな冷たい目で見ないでほしいにゃw
照れるにゃw」
「・・・」
ハイにゃんは僕の視線に照れながらくねくねしていた;
・・・僕、こんなペットほしくなかったよ;;;;
なんか頭が痛くなってきた;;;
そんな事考えながらこの先どうしようか悩んでた。
つづく
どうやらエンジェルム王国に不法侵入者たちが入り込んでいるようです。
それとハイにゃんのドMさにアルフォンスは困ってるようです;;;
確かにあんな猫がいたらヤダよね;;;