第34話:水の大精霊ウンディーネ
<ユーエリア視点>
私たちはユニコーンに連れられて水の大精霊の聖域に向かう事にした。
下に続く階段は透明な水晶でキラキラと輝いていた。
曲がりくねった螺旋階段を下りていって地下の奥に着いた。
目の前に水色の螺旋模様が描かれたレリーフの白い扉がそこにはあった。
<ここの扉を開けると、水の大精霊ウンディーネ様の聖域になります。
私は側近と言えど聖域の中に入れません。ここでお待ちしております>
ユニコーンは聖域には入れないらしい。
私たちだけでウンディーネに会う必要があるようだ。
私が目線で準備はいい?と問いかけるとみんな黙って頷いた。
扉の重い音がきしみ開けて行く。
<では、御武運をお祈りしております>
私たちはユニコーンの言葉を聞きながら聖域の中に入った。
中は濃い水色のクリスタルが所狭しと壁から天井までびっしり生えていた。
「これは水属性の魔道石ね。
しかも、魔力の濃度がかなり濃いわ;」
「俺も力をびりびり感じるぜ・・・」
「すごい力」
私は部屋全体から水の魔力の力を感じ取っていた。
リックとイノーゼも感じ取っている。
「こんなにたくさんの水晶売ったらいくらになるでしょうか?」
「水の魔道石だからかなり儲かりそうね」
「私も商会の社長として気になるけど今はそれどころじゃないわ」
アンナとノッレがかなりの水の魔道石を見て値段が気になってるようだ。
宝石のサファイヤ並みの価値だからね・・・水の魔道石は;
私も社長として気になるけど上にいるだろう水の大精霊は許さないだろうし。
水の魔道石の階段を見上げるとそこの祭壇には
水のドレスに身を包んだ美女がそこにはいた。
身体全体が水で出来ていてすごい魔力を感じる。
「ようこそおいで下さいました。
どうぞ人間方こちらへ上がって来てください」
水の大精霊であるウンディーネがそう言ってほほ笑んだ。
私たちはお招きに預かり階段を上がってウンディーネと対面した。
「初めまして、私は水の大精霊ウンディーネ。
自然界の水の魔法を司る存在です。どうぞよしなにお願い致します」
ウンディーネは丁寧に一礼して私たちに自己紹介した。
「私はアークレイ伯爵家第一子ユーエリア・アークレイですわ」
「俺はエンジェルム王国サムエル王家
第2王子セドリック・サムエル・エンジェルムだ」
「私はノッレ」
「わたしはイノーゼです」
「私はアークレイ伯爵家のメイドのアンナです」
私たちは互いに自己紹介すると本題に移る事にした。
「それで、私たちの仲間を返してもらえないかしら?」
「仲間とは?」
「銀髪のヘタレな男が捕まってるはずよ」
「ヘタレ・・・;」
私のあけすけなウィキの扱いにウンディーネは目を丸くしているようだ。
「ああ、彼ならそこに居ますわ」
ウンディーネは指をパチンと鳴らすと
水色の水晶の珠が現れて中にウィキがいた。
「ウィキさん!!!」
「お待ちなさい」
アンナが思わずウィキの側に駆け寄ろうとするがウンディーネに止められた。
「貴女がたは彼のような邪な魔の者ではありませんね。
神聖なる魔力を感じます。勇者の血脈もいるようですし。
なぜ、彼を助けようとするのですか?」
ウンディーネはそう私たちに問いかけた。
やっぱり、ウィキが悪魔だと大精霊は知っているようだわ。
「ウィキさんはそんな邪な人ではありません!!
亡くした恋人を大切に思っている心優しい人です!!」
アンナはウンディーネに向かって怒ってそう叫んだ。
「ウィキおにいちゃんは優しい」
「そうだわ!孤児院の子たちにも笑顔で接してたし」
イノーゼとノッレもウンディーネに向かってそう反論した。
「ユーエの尻に敷かれるヘタレな奴だから悪い事できなさそうだしw」
そう笑いながらリックもウンディーネに向かって剣を構えた。
「そうね・・・、私のムチの調教がある限りウィキは私の下僕で良い奴よ。
だから私の下僕を返してもらうわ!!」
私はウンディーネに指差してそう宣言した。
するとウンディーネは真剣な表情をした。
「そうですか、彼を信じているのですね?
良いでしょう!!その信念!!試してあげましょう!!」
ウンディーネが片手をあげると周りに次々と水の間欠泉が吹きあがった!!
「『スプラッシュボルグ』!!」
そして渦を巻いた水流が槍のように私たちに襲いかかって来る。
私たちがそれらを避けるとその飛沫が
地面に弾けムチのように襲いかかってきた。
「きゃ!!!!」
「うおっ!!」
「いたっ!!」
「いたい!!」
「くはっ!!」
私たちは地面に叩きつけられたがすぐに立ちあがって耐性を立てなおす。
「『キュアヒーリング』」
イノーゼは回復魔法で私たちを癒やした。
水の攻撃でできた打ち身の傷が癒えていく。
「行くわよ!!『ブロックバレット』!!」
ノッレは無数の岩の塊を弾丸にして
それを空に飛ばして多方面からウンディーネにぶつけた。
「土の小人族ですか?
やりますね!!では、これはどうです?」
ウンディーネは腕を剣のように変化させて切っ先を向けて突進してきた。
「俺がいる事忘れるなよ!!」
ガキン!!と盾でウンディーネの腕の剣をリックが防御した。
「『瞬発突剣』」
リックはお返しにカウンターで剣を槍のように構えて突進させて突き返した。
「くっ・・・」
「『散雨飛沫』」
ウンディーネは剣のダメージを受けて顔を歪ませた。
リックは突きの連続攻撃でウンディーネを翻弄する。
水の魔力同士だと効かないが
剣に水の魔力を通さず無属性の魔力を代わりに通して攻撃したようだ。
「甘いです!!『アクアローリングカッター』!!」
ウンディーネは至近距離で水の回転した刃の魔法を放った。
「あぶねっ!!」
リックは慌ててそれを横へバックステップで避けた。
「『神拳波連散』」
私はその隙にウンディーネの後ろから全属性の
黄金の魔力の拳の三連撃を喰らわせた。
軽くウンディーネが吹っ飛ぶ。
「ぐはっ!!」
「『ダブルトレースラッシュ』」
吹き飛ばされたウンディーネをアンナは2つのお盆で×の字に切り裂いた。
「ほほほ・・・ここまでやる人間たちは勇者たち以来です」
ウンディーネは切り裂かれた身体を
空中に現れた水で補修して繋げて身体を元に戻した。
「な、反則だぜ・・・;」
「そうか;周りの水の魔道石の効果ね;」
リックはその様子に絶句した。
周りの水の魔道石の魔力の力がウンディーネを回復させているんだわ。
石から放出している魔力を空中から吸収して回復させてるみたい。
「その力がある限り私は倒せませんよ!!」
ウンディーネはそう言うと周りの水の魔道石の結晶が
壁や床など一面に輝きだした。
すると、その水色の光がウンディーネに吸収された。
「受けなさい!!『セイントアクアバブリーレイン』!!」
上空から泡の塊が次々降ってきた。
そして、水蒸気爆発のように弾けまくった。
「「「「「わああああああああ!!!!!!」」」」」
私たちは泡の爆発に巻き込まれて壁や床に弾き飛ばされた。
くっ・・・これは効いた;
「たわいないですね。
勇者の血脈も居るのにこの程度に倒されるなど信念はこの程度ですか?」
穏やかに微笑みながらそう挑発するウンディーネ。
「・・・ふざけないでください!!信念ならあります!!」
アンナがふらつきながらも立ち上がってウンディーネを睨みつけた。
「私にはウィキさんに恋愛的に好きになってもらいたいって信念があります!!
いつか、ウィキさんと恋人になって結婚して子供を産んで・・・。
それで、4人の子供と10人の孫たちに囲まれて大往生したいです!!」
「それが叶わない恋だとしても?」
ウンディーネは夢を語るアンナに向かってそう冷たく言い放った。
「今は無理かもしれない・・・。
けど、ウィキさんの昔の恋人のアイさん以上に
私はウィキさんを愛しているんです!!
だから、負けません!!!!」
アンナは2つのお盆を構えてウンディーネに向かって投げた。
「メイド流格闘盆術!!奥義!!」
そのお盆がウンディーネの前後に浮かんで止まった。
そして、丸い結界にウンディーネは包まれた。
「『マジックトレーイリュージョン』!!」
アンナはそう叫ぶとお盆を持った数十人の分身が現れた。
それが次々にウンディーネに向かってお盆で切り刻んでいく。
「きゃあああああああああ!!!!!!」
「とどめです!!私の信念あなたに見せて差し上げます!!」
そうしてお盆でアンナは2つのお盆を持ったまま回転して
ウンディーネを切り飛ばした。
「やりました・・・」
そのままアンナは気を失った。
私は立ち上がってアンナに駆け寄った。
「お嬢様、やりました・・・。
奥義の反動で動けませんけど」
「よくがんばったわ。アンナの信念見届けたわ」
「私、ウィキさんを愛してますから・・・」
アンナの微笑みからウィキの事がどれだけ好きか伝わってきた。
「うふふふふ・・・ここまで追い詰められるとは思いませんでした」
よろよろとウンディーネが立ちあがってこっちにやってくる。
周りの魔道石の魔力でも身体の再生が追いつかないのか
所々、身体から水が分離してる。
「そ、そんな・・・!!」
「まだ、立ち上がれるっていうの?!」
絶望に顔を真っ青にするアンナと私。
「私の本気はこれからです」
そう言うと、ウンディーネは周りの水の魔力を集め出した。
ウンディーネの優しい微笑みが私たちを戦慄させた。
水の大精霊の本気。
戦いはまだ続きそうだ。
つづく
水の大精霊とのバトルですw
さすがに大精霊だけあってしぶといですw
彼女の本気とはいったい?
次回もバトルですw




