第33話:水猫の村と聖獣ユニコーン
<ウィキ視点>
「・・・う;」
息苦しい気分がして俺は目を覚ました。
俺は水の魔力でできた水晶の珠の中に閉じ込められていた。
目の前には水の身体に水色のドレスを着ていてをした女の姿の大精霊がいた。
「・・・久しぶりだなウンディーネ」
「私は会いたくなかったのですけどね」
俺を見て不満そうにウンディーネは顔をしかめた。
「やはり貴方の封印は不完全だったということですか」
「俺の今のご主人様のおかげでな」
「この黄金の髪の人間ですか・・・」
ウンディーネが水鏡を空中に浮かせてお嬢様たちの様子を見ていた。
水の精霊の水猫に案内されながら迷宮内を進んでいる。
「この人間達には邪な魔力は感じられません。
むしろ聖なる魔力を感じます・・・」
ウンディーネはお嬢様を見て何か思案しているようだ。
「大方、貴方がこの人間達をダマして言う事を聞かせているのでしょう」
「どうだかな・・・」
ウンディーネの言葉に俺はむしろ
逆に言う事を聞かされてるんだけどなと今までの事を思い出した。
ドSなお嬢様にプレイで何度泣かされた事か(涙)
「この人間達に会いたくなってきました。
貴方の処遇はその時、決めましょう。
せいぜい、自分の運命を祈りなさい」
そう言ってウンディーネは穏やかに微笑んだ。
優しく穏やかな清流のような
水の大精霊ウンディーネらしい笑みだが敵意は俺に伝わっていた。
静かに俺はお嬢様を待つ事にした。
今の俺にはどうする事もできないしな。
<ユーエリア視点>
私はハイにゃんに掛けていた雷の網の魔法を解くと
ユニコーンのいる水猫の村へ案内されていた。
(雷の網を解く時、ハイにゃんは痛いのが取れて残念がってた)
「ここのトンネルをくぐると水猫の村にゃw」
ハイにゃんの案内で大迷宮の入り口の同じ水のトンネルをくぐった。
そしてトンネルの向こうには小さなメルヘンチックな家が
たくさんある村に着いた。
周りには水が水球になって浮いている。どういう仕組みなんだろう?
けど、村全体が黒い霧に覆われていた。なんか嫌な感じだ。
「かわいいな」
「かわいい~www」
「ここに水猫さんたちが住んでるんですか~」
「まるで童話にでてくる小人の家みたいだわ」
「・・・故郷の家を思い出したわ」
みんなは初めて見る村の様子に感心している。
まるで三匹の子ブタに出てくるレンガの家の縮小版だった。
あ、白雪姫の小人の家にも似てるかも。
小人か~ノッレは故郷を思い出したのか少し暗くなってた。
何か事情があって故郷にいられなくなったのかな?
なんて、思っているとアンナが何か気が付いたようにこう言った。
「他の水猫さんたちがいませんね;どこですか?」
そう言えば村にはハイにゃん以外、一匹も水猫がいない。
「最近、村に瘴気がすごくて家から外に出られなくなってるのにゃ;
ハイにゃんはユニコーン様から特別に村の警備のために浄化の魔法を
掛けてもらってるから平気なんだけどにゃ;」
どうやらハイにゃんは村の警備兵だったようだ。
それでユニコーンから特別扱いされているらしい。
「にゃ。村の村長のテツにゃんにユニコーン様の森へ行く許可を貰うにゃw」
そう言ってハイにゃんはその村長のテツにゃんの家に案内した。
村長の家らしくひとまわり大きい家だった。
ハイにゃんはコンコンとその家のドアをノックした。
「テツにゃん~いるにゃか?」
そうすると中からかわいい感じの目が丸い水猫が現れた。
しっぽが鉄のように堅そうだ;
「ハイにゃん、どうしたにゃ?
にゃ?人間がなんでこの村にいるにゃか?」
テツにゃんは私たちを見て驚いていた。人間が珍しいらしい。
「ウンディーネ様に会いたいそうにゃ。
だからユニコーン様にも会いたいみたいにゃw」
「にゃ~。人間がこの村に来たのは400年ぶりだにゃw
ようこそ水猫の村へにゃw」
ハイにゃんの説明を聞いてテツにゃんは私たちと握手をした。
歓迎されているみたいね。
するとテツにゃんは咳込み始めた。
「ごほっ;ごほっ;ごめんにゃ;
瘴気で調子が悪いにゃ;」
「テツにゃんくん、はい、ガスマスクにゃ」
すると家の中からしっぽが雪のように白い水猫がガスマスクを持ってきた。
「ユキにゃん;すまないにゃ;」
そう言ってユキにゃんからガスマスクを受け取って
テツにゃんは装着した。
なんか、もの凄く変だ;;;
みんな笑いを堪えている。
「・・・何でみんな笑ってるにゃか?」
「それはテツにゃんが変だからだろにゃ~」
さらに中からタバコを吸っている緑のしっぽの水猫が出てきてそう言った。
タバコ吸っている割に健康そうだ。
「ケンにゃん、ヒドイにゃ;」
「ま、仕方ないにゃ;俺らも被るからおあいこにゃ」
そう言ってケンにゃんやユキにゃんやハイにゃんもガスマスクした。
ますます変な猫の集団になった。
「こんな恰好で済まないにゃ;
ユニコーン様に所に案内するから着いてきてにゃ;
あ、ケンにゃんとユキにゃんは瘴気が心配だから家でお留守番しててにゃ」
「テツにゃんは心配性だにゃ~」
「いってらっしゃい、テツにゃんくん」
ケンにゃんとユキにゃんは手を振って家の中に戻って行った。
そして、テツにゃんとハイにゃんに連れられて
ユニコーンがいる所に案内してもらった。
村の外に進むと水晶で出来た木々の森の中に入った。
水色だけでなく赤や緑や紫や黄や橙や藍などの
七色のいろいろな水晶の木が綺麗だった。
「まるで、水晶の模型みたいね・・・」
「森全体が宝物みたいだな」
「きれい・・・」
「わ~すごい美しいです」
「こんな風景があるなんて・・・」
みんなこの森の美しさに感動していた。
「けど、瘴気がここにも来てるにゃ;
苦しいのは嬉しいけど森が汚れるのはイヤにゃ;」
「ホントはもっと美しい森なのににゃ;
ってハイにゃん;;;そのドMな趣味治した方がいいにゃ;」
ハイにゃんのドMな感想にテツにゃんが突っ込んだ。
ハイにゃんとテツにゃんの言葉からこの森はホントはもっと美しいらしい。
見ると水晶の木が所々崩れてるのもあった。瘴気のせいなのだろう。
しばらく進むと、水晶の木々に囲まれた静かな泉に着いた。
しかし、その泉も少し瘴気で黒く汚れている。
「ユニコーン様にゃ!!」
「ユニコーン様が倒れてるにゃ!!」
ハイにゃんとテツにゃんが泉の中心に
倒れているユニコーンを見つけて叫び声をあげた。
なんだか、ユニコーンは苦しそうだ;
<ユニコーンは汚れなき白き乙女よこちらへ・・・>
突然、澄んだ声が頭の中に響き渡った。
「もしかして白き乙女ってイノーゼ?」
「わたし?」
みんなが一斉に白い髪のイノーゼを見た。
<聖なる力を私に・・・。どうか乙女・・・>
ユニコーンらしき澄んだ声にイノーゼは泉の中心のユニコーンの側に向かった。
泉をイノーゼが歩くと泉の瘴気が浄化され綺麗になっていく。
「これはイノーゼの力なの?」
「すごいわ・・・」
「無の魔力って触れただけで浄化もできるんだな」
「イノーゼちゃんすごいです」
私たちはイノーゼの浄化の力に驚いている。
イノーゼはユニコーンに触れると光り輝き瘴気が浄化された。
浄化の力が広まり、泉から水晶の森へそして
水猫の村全体に伝わって瘴気が一掃された。
<ありがとう白き汚れなき乙女よ・・・おかげで助かりました>
「お馬さん元気になってよかった」
元気になったユニコーンを見てイノーゼは微笑んだ。
「それにしても何で瘴気が浄化されたのかしら?」
「瘴気を浄化するには無属性の魔力を持つ、
処女の汚れてない幼い乙女でないと無理にゃw」
ハイにゃんの解説にみんななるほどと納得した。
するとリックは何か気が付いたようだった。
「なるほど~ユーエリアはドSで無理だし
ノッレは見た目は幼女だけど大人(18歳)だしな」
「リック・・・。私がドSで汚れてるって言いたいの?」
「幼女だけど大人ってなによ!!私は立派な大人よ!!」
「・・・!!!」
ドカッ!!バキッ!!
私とノッレのダブル突っ込みにリックはノックアウトした。
「女の子に失礼な奴にゃ・・・;」
「リック、痛そうでうらやましいのにゃw」
<・・・;;;>
水猫たちとユニコーンはリックの惨状に三者三様の反応をしてた;
「で、本題に入りましょうか?
ウンディーネに合わせてくださらない?」
<・・・人間がウンディーネ様にお会いするのは400年ぶりですね>
私がそう言うとユニコーンは何やらしみじみ何かを思いだしていた。
どうやらユニコーンの言葉から400年間、
ウンディーネは人間に会ってないらしい。
<懐かしいですね。
そういえば、
そこの青灰色の少年に似た人間がウンディーネ様に会いに来ていました>
「俺に似た奴?」
リックはユニコーンにそう言われて首を傾げた。
<たしか、勇者と名乗ってウンディーネ様と契約を結びに来たのでした。
魔王を倒す力が必要らしいと言って>
「俺の先祖が確か勇者だったはずだぜ」
<おお!!その人間の子孫でしたか!
これはウンディーネ様にお会いする資格がありそうです>
「そういえばそっくりにゃ」
「面影があるにゃw」
ユニコーンと水猫たち曰く、リックは勇者にそっくりだという。
リックの先祖って言ったらエンジェルム王国の初代王か;
たしか、勇者だったわね;今更ながらリックが王子である事を痛感した。
<では、ウンディーネ様のいる聖域にご案内いたしましょう。
ハイにゃんとテツにゃんは村に戻っていなさい。
水の大精霊の聖域は普通の水の精霊には不可侵なので>
「わかったにゃw」
「村に戻ってますにゃw」
ユニコーンにそう言われハイにゃんとテツにゃんは敬礼した。
<では、水の大精霊の聖域の道を開きます>
ヒヒーーーーーーーーーーーーーーン!!!!
ユニコーンは高く嘶いた。
すると泉の水が引いていき地下へ続く水晶の階段が現れた。
<どうぞ、人間方。どうぞお通りください>
そう言ってユニコーンは階段を下りて行った。
私たちもそれに続く。
ウンディーネの所にウィキはいるのかしら?
階段を降りながら私は無事を祈った。
つづく