第29話:デート秘密計画
<ユーエリア視点>
ある日、別邸2階のバルコニーのテラスで本を読んでいると、
お茶とお菓子を持ってきたメイドのアンナからこっそり秘密の相談をされた。
「あ、あの・・・。お嬢様、ご相談したい事がございます」
メイドのアンナが顔を真っ赤にしながら私に何か相談があるようだ。
私はおやつのパンケーキのバニラアイスキャラメルソース掛けを
フォークとナイフで切りながらアンナに聞く事にした。
「何か悩み事でも?」
「実は・・・ウィキさんの事なんですけど・・・。
どうしたら、デートに誘えるんでしょうか?」
アンナは意を決してそう打ち明けた。
そういえば、アンナはウィキの事が好きだったわね。
「ストレートに言えばいいと思いますけど?」
「いろいろアプローチしたのですが・・・;
どれも、断られました;」
あ・・・それはご愁傷様。
ウィキはアンナの事、苦手なのかな?
でも、女嫌いって訳でもなさそうだし・・・。
(ウィキはリックと一緒にエロ本を見てた事もあるし)
「そうね、2人っきりが無理ならみんなでどこかへ行くのはどうかしら?」
「みんなでですか?」
「・・・隙を見てアンナとウィキを2人っきりにさせますわw
そして、告白でも何でもしたほうがいいですわw」
私の言葉にぽんっとアンナは顔を真っ赤にさせ沸騰していた。
「こ、告白ですか?!そ、そんな大それた事!!!//////」
「アンナは甘いですわ。ウィキは押しに弱いのです。
・・・ガンガン攻めまくって落としなさい」
「落とす・・・落とすですか・・・」
落とすという言葉に頭の中でぐるぐるしてるのかアンナは復唱してた。
「分かりました!!がんばってみます!!」
と元気よくアンナは返事した。
「そうと決まったら計画が必要ね。
みんな(ウィキを除く)で計画を立てましょうw」
「そうですねw何かいい考えが浮かぶかもしれませんしw」
こうしてウィキとアンナをくっつけようデート秘密計画が始まった。
ウィキにもLOVEの予感か~w
おもしろくなってきたわねw
夜中、ウィキが眠った後、ウィキを除くみんなを私の部屋に呼び寄せて
ウィキとアンナをくっつけようデート秘密計画を会議する事にした。
(ちなみにお城からリックがうちの別邸に泊まりに来てます)
「では、ウィキとアンナをくっつけようデート秘密計画作戦会議を始めます」
眠そうなみんなを議長の私が見渡した。
するとノッレが手を挙げた。
「まず、どこに行くかとどう2人っきりにさせるかだよね」
「そう、何かいい考えがあるの?」
「王都の大劇場で『オペラ座の魔道師』がやってるので
カップルシートで2人を座らせるのはどう?」
カップルシートかいいアイデアだと思うけど;
(カップルシートは恋人同士の2人分の繋がったソファみたいな席)
ちなみに『オペラ座の魔道師』は某怪人の出る話を
私がアレンジして本を書いたのを大劇場で演劇してるらしい。
「大劇場は役者が不評だってウィキが気に入らなかったからダメね」
「・・・そっか」
私の言葉にがっかりしたノッレだった。
「じゃあ闘技場なんてどうだ?
腕自慢同士の剣術試合は見ものだぜ?」
「カップル同士で剣士を応援して盛り上がるのもありだぜ」
リックとニッキーは脳筋なのか闘技場を進めてきた。
「デートにデスマッチはムードないわよ;」
「そうよ、そうよ!デートで血を見るなんてムードが台無しだわ!!」
「っていうか汗臭い男の剣試合を見るなんてデートじゃないわ!!」
「・・・デートにそこはイヤそう」
「同感です」
「私もそこでウィキさんとデートするのはイヤです」
「「・・・orz」」
私を含めた女性陣から次々にダメ出しされてリックとニッキーは凹んだ。
「あ、リックに頼んでお城の庭園の薔薇園を貸してもらって
デートってのもロマンチックよねw」
おしゃれなロザンナらしく女の子らしいデート場所を提案してきた。
「あ・・・私、植物に付いてる虫が苦手でごめんなさい;」
「いいと思ったんだけどねぇ;」
アンナに庭園デートは無理らしくロザンナはがっかりした。
「美術館や博物館なんてどうでしょうか?
歴史ある美術品を一緒に見るのもいいと思います」
キラがそう提案した。美術館デートか。頭が良いキラらしい。
「・・・つまんなくて寝ちゃいそうです;」
「・・・;」
アンナは美術品などには興味なさそうだ。呆れてキラは黙った。
「おうちで2人っきりとか?」
「のんびりいいw」
イノーゼとマークスは別邸の屋敷でデートすればいいと提案した。
「それはできませんぞ;別邸をアンナたち使用人に貸し与えるなど
名門貴族の執事として許可できません」
「本邸のご主人様も許可しないと思います」
執事のアドバーグとメイドのクレアが反対した。これもダメか・・・。
「じゃあ、どうすればいいと思いますの?」
私がみんなに問いかけた。
みんなアイデアが出ないようね。頭を抱えて悩んでいる。
すると、クレアがおそるおそる手を挙げた。
「アークレイ伯爵領内のクリア湖なんてどうでしょうか?
馬車で2、3時間で行けますよ。
周りの木々も秋で紅葉が美しいですし。
それにボートで湖の中心のウォーターミストの大滝を見るのもいいです」
湖でデートか~。ボートで2人っきりもいいかもしれない。
「ウィキさんと2人っきりで湖でボートですかwww
いいですねw」
アンナもウィキとの湖でのデートを妄想してきゃぴきゃぴしてた。
「じゃあ、決まりですわね。
表向き遠足としてみんなとクリア湖へ行くとしまして。
機会を見てウィキとアンナを2人っきりにしましょう」
こうして行き先が決まり。
どうやってウィキとアンナを2人っきりに
させようかみんなで細かく話しあった。
翌朝、ウィキにクリア湖へみんなで行く事を話した。
「クリア湖か」
「秋の紅葉が綺麗らしいわよ」
私の言葉に思案しているようだ。
「・・・だとしたらあの大精霊がいるよな(ぼそっ)」
「何か言った?」
「いや?」
ウィキがぼそっと何か呟いたようだ。何言ったんだろ?
「・・・そういえば、ウィキって女の子好き?」
「なんだよ?お嬢様、いきなり;」
「アンナの事どう思ってるの?」
私がストレートにウィキにアンナの事を聞いてみるとぎょっとされた。
「アンナか・・・
あいつは昔の知り合いに似てるから戸惑うんだよな」
そう言ってウィキは切ない顔をした。
昔を何か思い出してるかのようだった。
「昔の彼女とか?」
私がそう言うとウィキは固まった表情を一瞬した。
すぐ普通の顔に戻ったが。
「さあな・・・」
・・・何やらウィキの過去にはいろいろあるようだ。
なにが、あったのだろう?
気になる・・・。
「さ、みんなのとこ行くんだろ?
トレーニングしようぜ」
そう行って外の武道場へウィキは行った。
誤魔化された、気がするけど;
私もジャージに着替えて武道場へ行った。
<ウィキ視点>
深夜、俺は自分の部屋で久々に酒を飲んでいた。
窓を見るとぼんやり明るい月明かりが見える。
「・・・俺が恋愛か」
俺はピンクのカクテルが入った氷のグラスを傾けて飲んだ。
カクテルの名前は『ラヴポーション』。
愛の媚薬っていう名前のカクテルだ。
「あいつみたいな可愛い感じのカクテルだな」
そういえばあいつが大人になった時、
これを一緒に飲もうって約束してたっけ。
結局、戦乱や内紛ばっかりで酒を飲む暇もなかったわけだが;
「約束は果たせなかったけどな・・・」
あいつの愛らしい顔を思い出す・・・。
結局、あいつを失って何もかも失ったわけだが・・・。
ぐびっとグラスの酒を飲む。
「あれから400年か・・・」
もう、それだけ時間が立ったのか・・・。
月日が流れるのは早い。
「俺が恋愛できる日がくるのか・・・?」
俺があいつ以外の他の女を好きになる事なんてありえないよな。
「アンナって・・・人間に恋愛?
そんな事ありえないな」
確かにあいつとアンナは似てるけど種族が違う。
それに俺は・・・。
「考えるのよそう・・・」
俺はグラスの中の酒を飲み干し、
氷を歯で砕いた。
そして、カクテルの瓶を閉めて戸棚にしまった。
「人間を好きにか・・・。
俺の中のわだかまりは消えてない。
もし、それを変える事ができるなら」
俺は過去を捨てて生きられるだろうか?
いや捨てるなんてできない、昇華するんだ。
昇華する鍵は・・・。
「あのお嬢様か?でも、ドSだぞ;」
あのムチ持ったお嬢様の顔思い浮かべた。
・・・プレイを思い出して愛があるのか不安になってきた。
ホントに俺の意識を変えられるのか?俺は考えを止めた。
「寝よ、寝よ;」
俺は気を取り直してパジャマに着替えた。
そしてベッドに入り布団を被った。
「アイ・・・」
俺は久々にあいつの夢を見た。
幸せだったあの頃の・・・。
本当はあいつの笑顔に再び会いたい。
もう無理だって分かっているけどな。
つづく
なにやらウィキの過去にはいろいろありそうですw
アンナと恋愛できるのでしょうか?
次回、湖へ行きますw