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第26話:義母上の本音と和解

<ユーエリア視点>


翌日、別邸に父と義母が慌ててやってきた。

アドバーグの息子で筆頭執事のカイルも一緒だ。黙って一礼される。

別邸内の客間に案内する。

もちろん、弟のアルフォンスも一緒にそこにいる。

気まずそうに客間のイスに座った父たちを見ている。


パンッ!!


母がイスから立ちあがりぱんっと私を平手で叩いた。


「お姉様!!」


「・・・!!」


アルフォンスと父がその様子に慌てた顔をしている。


「あなたがアルフォンスをそそのかしたからこうなったのです!!

 恥を知りなさい!!」


義母は人を殺せそうな勢いで私を睨んだ。


「母上!!お姉様は悪くありません!!

 僕が勝手にお姉様のお屋敷に行ったんです!!」


アルフォンスが泣きながら義母に言った。


「黙りなさいアルフォンス!!

 この子はグレン様だけじゃなくて息子まで奪うの?!

 私の大事な物をすべて奪うの?!この泥棒猫!!

 母親に似て大っ嫌いよあなたなんか!!

 あの時、母親と一緒に死ねばよかったのよ!!」


義母の言葉の刃が私を襲う。

まあ、嫌ってるのは予想できたから何言われても平気なのだが;

すると、父が立ちあがって


パンッ!!!


父が義母の頬を叩いた。


「俺の娘を悪く言うな!」


「・・・!!!」


父は怒りの表情を義母に向けた。

義母は涙を流し部屋を出て行った。

気まずい空間が流れる。


「旦那様・・・。奥様のお気持ちも考えてください。

 確かに奥様がお嬢様を叩いたのはやりすぎですが。

 旦那様が奥様を叩き返すのはどうかと思います。

 奥様は旦那様に愛されているのか、

 自分の居場所があるのか不安なのです」


カイルはそう父に諭した。

父は悲しそうな表情をした。


「そうなのだが・・・。

 俺も複雑なのだ・・・。

 まだ、リアの事が忘れられない自分もいる」


「旦那様・・・」


父も複雑なのだ。

リアというのは私の母の名前でユーエリアのリアの字は母から取ったそうだ。


「とにかく、奥様を追うべきです。

 手分けして探しましょう」


カイルがそう促すと父達とともに義母を探す事にした。


<ドヌーブ視点>


私は別邸の外に出て森の中で蹲っていました。

悔しい!!あの姉にそっくりなユーエリアにみんなを取られるのが。

私の姉は美人で性格も良くて、

いつも私は添え物のクレソンのような存在だった。

悔しくて貴族の礼儀作法も化粧もドレスも

美人の姉に負けたくなくて努力したわ。

グレン様と初めて会ったのはとある夜会だった。


私は夜会の人ごみから逃れてバルコニーで休んでたわ。

いつも私に話しかけてくる人達は姉目的で繋がりを持とうと必死だったわ。

ひどい、誰も私を見てくれない・・・。

私は夜空を見上げながらため息をついた。


「誰でもいいから私自身を見てくれる人はいないのかしら?」


・・・自分自身の価値を認めてくれる人がほしい。

そう思っていると誰かに話しかけられた。


「これ、落としましたよ」


金髪の紳士がハンカチを差し出した。

私のハンカチだわ。薔薇の刺繍がしてある。


「あ、ありがとうございます」


私はそのハンカチを紳士から受け取った。


「君は社交界の『一輪の真紅の薔薇』ですよね?

 燃えるような真紅の薔薇のような髪が美しいと聞いた事あります」


「え?そんな、薔薇なんて・・・」


そんな事言われたの初めてだわ。しかも殿方に・・・。

私は嬉しくなって微笑んだ。


「その薔薇の淑女さん。私と一緒に踊りませんか?」


「え?は、はい」


私は紳士から差し出された手を取ってダンスホールに向かったわ。

ステップに合わせてワルツを踊る私たち。

紳士は美しかった。黄金の流れるような髪に夜明け前の空のような深い青の瞳。

すっと通った鼻筋、薄い唇。

私は彼に見とれながらワルツを踊った。

楽しい時間はあっという間に過ぎて夜会は終幕を迎えた。


「あ、あのお名前は?」


「私はグレン・アークレイです。

 いつかどこかでまた会えるといいですね」


グレン様はそう言って夜会の会場から去って行った。

私はその後ろ姿を名残惜しそうにいつまでも見ていた。

私はドキドキする鼓動を抑えあの人を好きになっていた。


数年後。

私は姉から婚約者を紹介すると言われて屋敷の客間まで行った。


「あ、ドヌーブ、紹介するわ。

 婚約者のグレン・アークレイ様よ」


「初めまして」


なんと、あの夜会の紳士が姉の婚約者というのだ!!

私はショックを受けた。

なんで、なんで、なんで・・・・。

初めて好きになった人が姉の婚約者なの!?

しかも、グレン様は私の事忘れてるようですし!!


私はその夜、枕につっぷして泣いた。

姉はいつも私の欲しい物を取ってしまう。

私は姉を心の底から憎んだ。


その1年後、2人は結婚した。

しかも、お腹に子供がいるそうだ。

幸せそうに過ごす2人に私は嫉妬の感情を燃やした。

けど、醜い感情を知られたくなくて

2人の屋敷には近づかなくなり疎遠になった。


それからしばらくして姉の死が聞かされた。

子供を産むのと引き換えに産場で亡くなったそうだ。


グレン様は放心状態で過ごしていると聞いた。

私の心は複雑だった。

姉が死んで嬉しいのに悲しむグレン様は見たくなかった。


数か月して、私は父の命令でグレン様と結婚する事になった。

家同士のつながりが欲しかったみたい。

私はうれしかったがグレン様は姉が忘れられずギクシャクした生活が続いた。


そして、1年後。

私とグレン様との子供を産んだ。

うれしかった。グレン様もよろこんでくれた。

私は男の子のアルフォンスを産んだ。

アルフォンスは跡取りよ。私は初めて姉に勝った気がした。

その内心に気づいたのかグレン様は複雑な顔をした。


アルフォンスの世話をしつつ、気になったのは姉の子供のユーエリアだった。

ユーエリアは聡明なのか一の事を十以上理解するほどの天才だった。

グレン様もユーエリアを溺愛している。

ユーエリアの姿が姉の姿と重なった。

私は胸が痛くなった。

私は思わずグレン様にこう言った。


「私はあの子を嫉妬で殺すかもしれない」と


実際、あの子が寝てる間に首を絞めようとした事があったわ。

屋敷のメイドに止められましたが。

グレン様は真っ青な顔をしてユーエリアが5歳の誕生日になった時に

あの子を別邸に離して暮らさせ始めた。


これで私は姉の呪縛から逃れられるそう思ったけど・・・。


あの子はどうしたのか自分で商会を立ち上げた。

しかも、わずか3年で王国でも有数の規模の商会にしたのだ。

グレン様もそれを知って嬉しそうな顔をしてた。

アルフォンスもあの子の顔を見て気に入ったのか慕ってそうな顔をしていた。


・・・あの子に家族の愛情全て取られてしまう。


なぜ、姉が死んでもその影におびえ続けなければならないの?

私は絶望感に立たされた気がした。

泣きながら回想をしていると森の中の茂みから毛むくじゃらの手が見えた。

見上げると熊が私に襲いかかって来た。


「きゃあああああああ!!!!」


私は恐怖のあまり目をつぶった。私はここで死ぬの?

絶望が私を襲った。


「『フレイムショット』!!」


炎の塊が熊に当たると燃え上がり、熊は倒れた。

振りかえると憎いあの子がそこにいた。


<ユーエリア視点>


危なかった;;;;;;

間一髪、式紙を使って森の中を探させて急いで義母を見つけた。

熊に襲われそうになってるのを魔法で助けた。

数分遅れてたら義母の命はなかった。


「・・・礼はいいませんわよ」


義母はぷいっと私から顔をそむけた。


「礼なんていりませんわ。

 義母上ははうえですし」


「私が礼を出来ない愚か者って言いたいの?!」


義母はそう言って私を睨みつけた。


「いいえ。

 義母上は私を怨んでるのは昔から知ってました。

 私を怨む事で心の平穏を保てるのなら怨まれたままでいいと思っています。

 母の面影を持つ私ですみませんでした。

 もし、顔を見たくないのなら貴族の位を捨てて私は家を出てもかまいません」


「・・・!!」


私がそう言うと義母は驚いた顔をした。


「そういう優しい所、私の姉にそっくりね・・・」


義母は母を思い出したのか複雑そうに私を見た。


「母と比べられても困ります。

 私は私です。

 それに今の母は貴女です」


「・・・」


義母は黙ってすまなそうに私を見た。


「ドヌーブ!!無事か!!」


「母上!!」


父とアルフォンスがカイルやアドバーグたち使用人を

引き連れてやってきた。

もちろんウィキもいる。


「済みませんでしたわ。グレン様、アルフォンスも」


「無事ならそれでいいんだ」


父は義母を見てよかったと安心したようだ。


「ドヌーブ。叩いて済まなかった。

 君の気持ちを考えずに怒ってしまいすまない」


「いえ、私もあの子にヒドイ事言ってしまいましたわ」


「俺はお前の事を大切な家族だと思っている。

 正直、リアの事は忘れられないが

 お前を妻として愛せるよう努力するから許してほしい」


父は義母にそう言って頭を下げた。

それを聞いて義母は一筋の涙を流した。


「はい・・・」


どうやら父と義母は和解できたようだ。

義母は私の方を見て意を決してこう言った。


「た、たまには屋敷の方に顔を出しなさい!!

 月に一回、家族で一緒に食事するのを許してあげるわ!!

 これはグレン様やアルフォンスが喜ぶから言ってるだけで

 私の意思じゃありませんからね!!」


「母上、分かってくれたんだね!!」


ツンデレな義母の様子にアルフォンスは笑顔になった。

義母らしい高飛車な言葉に私は「はい」と笑顔で答えた。


「よかったな、お嬢様」


「まあ、家族だし解り合える事は良い事だよね。

 高飛車なのは義母ははに似たと思ってるし。

 義母は母として実は気に入ってるよ」


「ドSなのは奥様譲りかよ;;;」


ウィキは義母と私を見比べて怖がってた;;;;

失敬だなあ・・・;

あとで地獄の回転木馬くんオルタナティブをウィキで試そうかしら?

そんな事を考えつつ家族のつながりが再生できて嬉しくなった私だった。

父達は別邸で世間話をして私にお礼を言った後、弟を連れて帰って行った。

そんな穏やかな1日だった。


つづく


無事、家族との仲が縮まってよかったですw

ドヌーブはツンデレですw

高飛車な所は彼女似だとユーエリアは思ってます;

少なからずとも彼女の影響は受けているのだった;

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