第18話:深夜の戦闘2
<ノッレ視点>
やっとの事でジャンさんに勝てた私たちはロープを持ってきて彼を縛った。
このロープは特別製で縛られると魔法が一切使えなくなるんですって。
ユーエリア雑貨店でも売ってます。3m3000イエンで。
緑の騎士団も喜んで使ってる品だそうよ。
「おねーちゃん!!リックおにいちゃん!!」
「イノーゼ!!」
「無事だったのか?!」
イノーゼが縛られたガルドさんを引きずってここまでやってきた。
よかった無事だったのね。
「いててててて;;;お嬢ちゃん痛いよ;」
「ごめんね。わたし、持ち上げて運べないから」
「いいけどさ、あ~ジャンもやられちゃったんだね;」
痛がるガルドさんに素直に謝るイノーゼ。
ガルドさんが簀巻きにされたジャンさんを見てやれやれって表情をした。
「あ・・・ガルドか?」
「よ~。お前もやられたんだな」
「く・・・ここまでか;」
ガルドも捕まってるのを見てジャンさんは悔しそうに歯ぎしりした。
観念したのか抵抗はしないらしい。
「さあ、お前たちの他に仲間は何人いる?答えろ」
リックが2人に剣を構えて二人の顔を少し切った。
「言うから落ち付いてくれ!!」
「俺たちの他に空中ブランコのロビンとデイジー。
あと、猛獣使いのルルシアと綱渡りのミーロと治癒魔道師のヤーミだ」
2人は慌てると、ジャンさんが他の仲間の名前を吐いた。
「ミーロ、やっぱり来てるのね・・・」
「やっぱりユーエを誘拐しにきたのか?」
私はジャンさんの言葉に悲しげに顔を伏せた。
リックは誘拐の目的がユーエなのかジャンさんに聞いた。
「今頃、仲間の誰かがユーエリア嬢を攫ってる頃だろうな」
「そんな!!!」
ユーエが危ない;;;;;早く行かなきゃ。
「行ってよ。俺たちは抵抗しない」
「ガルド!!」
「俺は女の子の味方なの。
後ろ盾の男爵より女の子の方が大事だ。
それに女の子の誘拐はホントは俺、反対だったんだよね。
悲しそうな子を目の前にして野暮な事はできないよ」
ジャンさんがガルドさんを窘めるも
ガルドさんは紳士みたいで助けにいくよう私たちを促した。
「ユーエの部屋は2階だったよな。
行くぞ」
「ユーエおねえちゃん助ける」
「ガルドさんありがとうございます」
「いいってw早く行ってw」
「・・・ミーロを救ってやってくれ。俺たちは理由があるんだ」
私たちは簀巻き状態のジャンさんとガルドさんを置いてユーエの所に向かった。
ミーロ!必ず悪事から手を引かせて見せるから。
<ニッキー視点>
「ぐはっ!!」
「ごばっ!!」
「きゃああ!!」
俺たちは空中ブランコ乗りの双子の電光石火な早さの攻撃に
手も足も出せないでいた。
「もう限界・・・」
「死にそう」
「みんな!諦めるな!!・・・ぐぼっ!!」
ロザンナもマークスももう座り込むほど体力の限界に来ていた。
俺も石の弾丸を顎に受けてのけぞった。体力も限界で倒れ込む。
ちくしょう・・・。
「はははは!!もう終わり?」
「やっぱり、この程度の人間なのよ。ここで惨たらしく死になさい」
双子が立ち止り手を上げると先端がするどい矢じりのような
巨大な石を3つ浮かび上がらせた。
「ははは!!さよなら!!」
「さようなら、雑魚の3人衆さんたちw」
巨大矢じりは俺たちに向かって真っ直ぐ飛んでくる。
俺はここで死ぬのか?
廃墟で病気で死にかけて、やっとの思いで助かって、
それで明るい希望が見えたって言うのに・・・。
そういえば、ユーエは俺たちが病院から退院した時
「貴方たちの夢は何?」
って聞いてきたっけ。
ロザンナは
「洋服のデザイナーになりたい。自分だけのファッションの服を作りたいわ」
って言って針と糸を使ってユーエとウィキから
服飾魔法を徹夜しながら習って勉強してたっけ。
服の絵もいろいろ書いてた。
マークスは
「占い師になりたい。自由な時間だけ仕事して、ゆったり昼寝したい」
って言って水晶玉片手にウィキから占星術を習ってた。
昼寝が理由ってマークスらしいけどな。
俺の夢は・・・。
「腹いっぱいご飯を食う事!!
料理人になって好きな料理作ってたくさん食べるんだ」
俺の夢を聞いたウィキも腹いっぱい食いたいって言ってたし、
ユーエもやるなら世界一の料理人になりなさいって
ニホンショクを始めいろんな料理を教えてくれたんだ。
ロザンナもマークスもノッレもイノーゼもキラもリックも
アドバーグさんやアンナさんやクレアさんも
みんな、みんな褒めてくれたんだ。
俺はこんな所で死にたくない!!死にたくないんだ!!
「俺は死にたくない!!死にたくないんだああああ!!!!」
俺は力を振り絞って急いで立ちあがって剣を水平に振るった。
「『水平斬』!!!」
俺は襲ってきた3つの巨大矢じりを力の限り次々と切り落とした。
石の残骸が地面に落ちた。
「「な!!!!」」
双子は驚いて動きが止まった。どうだ?驚いただろ?俺の底力?!
「・・・僕もがんばる。
『フリージング』」
マークスは手をついて地面を凍らせた。
双子の足がその勢いで凍りついて動けなくなった。
「・・・私も負けてられないわ!!」
「がはっ!!」
「ぐはっ!!」
ロザンナは必至に立ちあがって双子の首根っこを剣の柄でぶっ叩き気絶させた。
「やった!俺たちの勝利だ!!」
「勝利」
「辛勝だけどね;でも、勝ったわ」
俺たちはそれぞれ、拳を突き合わせて勝った気分を味わった。
そのあと、倒れた双子を魔法のロープで簀巻きにして縛った。
一応、ニッキーが双子の手足を凍らせて動きを封じたので動けないだろう。
「でも、俺たちも動けないな・・・」
「体力、ない」
「ユーエたちは大丈夫かしら?;」
俺たちはヘタリと座り込んでユーエたちの無事を祈った。
もう少ししてから追いつくから待っていてくれ。
<ユーエリア視点>
私はウィキとともに私の寝室に現れた侵入者と対峙していた。
「この前はどうも。再び会えてうれしいですよ。ユーエリア嬢」
治癒魔道師のヤーミがふてぶてしく私を見る。
「会えてじゃなくて会いに来たでしょ?侵入者として」
「これは一本取られましたね。あれ?それが素なのですか?」
これはうっかりとオーバーリアクションでヤーミが言うと
私の口調が令嬢っぽくない事に気が付いたようだ。
「そうよ。それとも令嬢として丁寧な振るまいの方が良いですか?
ヤーミ殿?」
「ははは。別に猫かぶらなくてもいいよ。僕も敬語は疲れたし」
どうやら向こうも猫かぶってたらしい。少年らしい口調が素らしい。
「さて、男爵の隠れ家にご招待するよ。ユーエリア、君を誘拐する」
「私は黙って誘拐されるような可愛い性格ではないわ。
それに、そこのミーロは誘拐に乗り気じゃなさそうだし。
誘拐するのが嫌な顔してるわ」
私がサーカスのお姫様の衣装に身を包んだミーロを指差すと
ヤーミはやれやれと呟いた。
「ミーロたちサーカス団とは特別な約束をしているんだよ。
約束を破るなら、約束を破ってもいいんだよ?」
「・・・!!!約束は守ります;」
ミーロはしぶしぶナイフを構えた。
「いい子だね。それじゃあ、誘拐させてもらうよ。
ルルシア?例の物を」
「アレね」
そばにいた猛獣使いのルルシアは隠し持っていた
黄色い粉の入った瓶を取り出して空中に投げた。
そして、ムチで瓶を粉々に砕いた。中の黄色い粉が部屋中に充満した。
ヤーミ達はいつのまにかガスマスクしてる。
な、身体がしびれ動けない・・・。もしかして、しびれ粉?
目線でウィキを見るとなぜか悪魔である彼もしびれている。何で?
「・・・!」
「・・・!」
声も出せないようで動けない。
「はははは。これは聖水をブレンドしたしびれ粉だよ。30分は動けない。
最近の錬金術は遅れていて作らせるのも材料が高価になって苦労したけど」
聖水!!道理でウィキもしびれてるわけだ;
こいつウィキを悪魔と知ってるの?
最近の錬金術って・・・昔の錬金術を知ってそうな雰囲気。
やっぱこいつもウィキと同じ悪魔なの?
くっ・・ピンチだ。
痺れて倒れてる私をヤーミは抱きあげて奴の周りの空間が歪んだ。
もしかして瞬間移動?
私はあっという間にどこかに連れ去られた。
<ミーロ視点>
ユーエリア様がヤーミに無事誘拐されました。
うれしくないのはなぜなのかな?
私、ホントはこんな事したくないのに。でも・・・。
「ミーロ。早くこいつを始末するよ」
「!!」
ルルシアが床に転がっているウィキさんを指差しました。
ユーエリア様の従者のウィキさん。
そうだよね;私たちを見られた以上始末しないといけない;
「・・・」
「ミーロ!私たちの正体が知られた以上、
目撃者を消さないと騎士団に捕まる!!
殺さなきゃこっちが殺られるんだ!」
・・・貴族を誘拐したら少なくとも平民は死刑です。
でも、こんな事を続けて子供たちに顔向けできないわ;
・・・本当にこれでいいの?
「ミーロ!」
「・・・!」
私はナイフを動けないウィキさんに振り上げました。
こんなことしたくないのに。私が心の中で戸惑っていると、
ガシャーーーン!!!
いきなり誰か窓を突き破って入って来ました。
青灰色の髪の確かリックだったかな?
「いてててててて;;;;ガラスが刺さった;
やっぱり身体強化して無理にジャンプして二階に来たのは無理があったな;」
リックは背中に刺さったガラスのかけらを取り除いて痛がっています;
二階にジャンプって魔法でそこまでできるのね;
「あれ;ユーエがいない!ウィキ!もしかして動けないのか?
お前らユーエをどこにやったんだ?!」
この状況にリックが私たちを睨んで剣を構えました。ああ、怒ってるね。
「遅かったみたい;」
「ミーロやっぱりここに忍び込んでいたのね;」
イノーゼとノッレが続けてベランダの窓から部屋に入って来た。
ノッレは私を見て悲しそうな顔してる。
「なんで誘拐犯になったのミーロ?」
「・・・」
ノッレの問いに私は答えられないでいました。
「そんなの貴族の犬には関係ないでしょ!!」
ルルシアが代わりにそう叫びました。
「あなたに聞いてないの!!友達のミーロに聞いてるの!!
それにあんたたちだって男爵の犬じゃないの?」
「うっ・・・;」
ノッレの言葉にルルシアは言葉を詰まらせました。
「ミーロ、私は友達だからあなたに悪い事してほしくないの。
お願いこれ以上罪を重ねるのはやめて!」
「・・・ノッレ」
私は涙を流しました。
こんな事していてもノッレは友達だって言ってくれてるのね。
私、私は・・・。
「ごめんなさい・・・ごめんなさい」
私はナイフを落として座り込んだ。
ルルシアもそれを見てムチを手放した。
・・・!いきなり胸が痛く・・・;
「ごほっ・・がはっ・・・!!」
私はいきなり血を吐きました。発作がいつもより激しい・・・。
力が抜けて・・・。
ノッレやみんなが叫んでる声がする。
意識が遠くなってく・・・。
これはきっと天罰ね。ノッレ、ごめんなさい。
つづく
み、ミーロが血を吐いた!!!!!
ど、どうなるんでしょうか?
後に原因が分かりますので待ってください。