第15話:サーカス団捜査開始
<ユーエリア視点>
緑の騎士団長のジークハルトがリックと共に帰った後、
その夜みんなにサーカス団調査の依頼を受けた事を話した。
そうするとノッレは苦い顔をした。
「ミーロたちがその誘拐犯人ってユーエは疑ってるの?」
「・・・その可能性があるとは思ってるけど」
ノッレはサーカス団の綱渡りのお姫様と道化師と友達になったらしい。
気持ちは複雑なのだろう。
「そのサーカス団の巡業と令嬢たちが誘拐された地が被ってるんだろ?
偶然にしてはできすぎてないか?」
「ウィキも疑ってるの?!」
ノッレはウィキを睨んだ。ウィキはいきなり睨まれて気後れした。
「か、可能性が高いっていう事はたしかだと思う;」
「・・・・;」
ノッレはウィキの言葉を聞いて俯いた。
「でもさ、捜査した方がよくないか?
騎士団に疑われてんならその疑いを晴らした方が
サーカス団もいいに決まってるし」
「疑われたまま、かわいそう」
「そうね、白か黒かはっきりさせたほうがいいわ」
「友達なのでしょう?ノッレさんも
そのミーロさんを信じて捜査したほうがいいです」
ニッキーとマークスとロザンナとキラは捜査に乗る気だ。
「おねえちゃん、わたしもミーロおねえちゃんの無実を晴らしたい」
「イノーゼ・・・。分かったわ必ずミーロ達の無実を証明してみせるわ」
ノッレもイノーゼの言葉を聞いて捜査する事に決めたようだ。
「決まりね。それじゃ、作戦だけど・・・」
私はみんなに作戦を伝えると明日、行動を開始する事にする。
<ノッレ視点>
作戦を決めた翌日、私はサーカス団のテントにやって来た。
入り口にいるサーカス団員の男の人にミーロの友達で遊びに来たと言うと
団員の住んでるテントに案内してくれた。
ミーロは医務テントにいるらしい。
中に入ると、ミーロはフードを被った若い男に
何やら診察されているようだった。
「ノッレ、遊びに来てくれたの?」
「うん、お邪魔だった?」
「ううん、遊びに来てくれてうれしい」
うううう、ミーロの笑顔に良心が痛んだ;;
「なんか診察されてたみたいだけど、どこか悪いの?」
「軽い喘息で・・・すぐ治るわ」
少し暗い顔をミーロはした気がしたがすぐ笑顔になった。
「無理はよくない。すぐミーロは無理をするんだから」
黒いフードを被った男の人がミーロを少し注意をした。
すると男の人に向かってミーロは舌を出した。
「分かってるわよ~だ。
あ、この人はヤーミ。サーカス団の専属治癒魔道師よ」
「よろしく」
「よろしくお願いします」
私はヤーミさんにあいさつした。
治癒魔道師といえば怪我を治す治癒魔法だけじゃなく
病気も治す薬も調合できる錬金術師でもある貴重な人達の事。
私も少しは治癒も薬も作れるからその人に近いかもしれない。
「お茶を出すから私のテントに行きましょう。
サーカス団のメインキャストは
みんな個人テントを持ってるのすごいでしょw」
「そうなんだ。じゃあ、おじゃまします」
私はミーロの個人テントにお邪魔する事にした。
中は女の子らしく花も飾られているが
シンプルなベッドとテーブルとイスと箱だけだった。
ミーロはポットからお茶をついでコップに入れて机の上に置いた。
お互いイスに座りお茶を飲む。季節がらもうすぐ夏なので冷たいお茶だった。
すこし世間話をした後、本題を切りだす事にした。
「しゃかいけんがく?」
「私の上司が従業員に寺子屋の真似事をして
いろいろ教えてくれているんだけど
その勉強でいろいろな職業の人を見学して参考にする授業があるの。
新たな商売の参考にしたいんだって。
それが社会見学」
ユーエから聞いた作戦は
私たちが授業の一環でサーカス団を社会見学をして捜査をする事だった。
ミーロはそれを聞いてきょとんとしてる?
「その上司って商会の社長さん?」
「うん、貴族のお嬢様だけど庶民にも気さくな人だよ」
気さくすぎてリックやウィキはユーエにムチでしばかれてるけどね。
愛情表現なんだそうだ;
「貴族のお嬢様なの?てっきり噂では庶民の女の人って聞いたけど」
「本人が貴族って知られたくないんだって。秘密ね」
わざと私がユーエが貴族だってミーロに知らせたのは囮になるためなんだって。
もし、誘拐に来たら捕まえるためらしい。
「じゃあ、お兄ちゃんに聞いてみるわ。
良かったらお店に連絡するね」
「お願いね」
こうして社会見学をミーロに頼んで数日後、
お店にフロドさんが社会見学に来てもいいって知らせに来た。
良心が痛むけどミーロたちの疑いを晴らすため。
心を鬼にして我慢しよう。
<ユーエリア視点>
みんなを連れて私はサーカス団のテントの前へやってきた。
入り口の前ではサーカス団の衣装に着替えた
道化師のフロドと綱渡りのミーロが待っていた。
「ようこそ、ブルームテンペストサーカス団へ。
ノッレから聞いとるで、ユーエリア・アークレイ様やな。
ワイは団長のフロド言います。よろしゅう頼んますわ~」
「私は妹のミーロです。よろしくお願いします」
「お招きありがとうございます。
アークレイ伯爵家第1子ユーエリア・アークレイと申しますわ。
こちらこそ宜しくお願いしますわね」
「なんや上品な感じやな~さすが貴族;」
笑顔でお互い挨拶を交わした。
カーテンシーな貴族式のあいさつにフロドとミーロは気後れしているようだ。
「ノッレとイノーゼは知ってますわね。
銀髪なのは従者のウィキリード。
青灰色の髪がリック。
そばかすなのがニッキー。
紺色の髪がマークス。
赤毛なのがロザンナ。
メガネの青年がキラです。
どれも、うちの商会の若き精鋭たちですわ」
「「「「「「「宜しくお願いします」」」」」」」
「よろしゅうな」
「よろしくね」
みんな、一斉に挨拶した。それににこやかに答えるフロドとミーロだった。
「それじゃあ、テントの中を案内するわ~。
ついてきておくんなまし」
フロドに案内されテントの中を案内された。
中央のステージに着いた。
ステージにはサーカス団のメインキャストが勢ぞろいしていた。
「サーカス団の花形たちを紹介しますわ~。
まず、火吹きのジャン」
「・・・よろしく」
ジャンは大柄な体に似合わず寡黙な性格のようだ。
「次はナイフ投げのガルド」
「よろしく~ハニーたちぃ~www」
ガルドは灰色の髪を掻き分けながら投げキッスをした。
どうやらナンパな性格なようだ。
「次は空中ブランコ乗りのロビンとデイジー。
小人族の双子なんやで」
「「よろしく」」
どうやら双子は小人族のようだ道理でノッレと髪の色が似てるわけだ。
土精霊の加護をもってるのだろう。
「あ、ミーロが言ってた小人族の仲間って」
「ミーロから聞いてるぞ。僕たちと同じ種族なんだってな?」
「久々に仲間を見たわ。よろしくね。ノッレちゃん」
ノッレと双子は握手して同じ小人族なのか意気投合したようだ。
「最後に猛獣使いのルルシア。
超ナイスバディーなこのサーカス団のトップスターやで」
ボンテージ衣装から溢れるルルシアの胸に
ウィキとリックとニッキーがくぎ付けになっている。
スケベめ!!!!
キラは恥ずかしそうに目をそむけ、マークスは興味なさそうにぼ~っとしてる。
まったく、けしからん胸ね・・・!!男どもが困ってるじゃない!!
「ちょ////何見てるのさ///////」
「ははははは、ルルシアの胸の大きさは王国一やで。どうや?ええもんやろ」
「変な事言ってるんじゃないよ!!この変態!!」
バキッ!!フロドにルルシアの右ストレートが入りました。
「いい拳や;ルルシア・・・(鼻血)」
「もう、知らない!!」
鼻血を出しながら親指を立てている
フロドにルルシアは機嫌を悪くしたようだ。
「あの?その衣装どこで手に入れましたの?気になりますわw」
「え?あ、2番街の既成服店『メジャーキルト』で注文してもらったものよ。
あそこは常連のお客さんにオーダーメイドも受け付けてるから」
私が聞くとルルシアの衣装はどうやらいつも
ノッレたちの服を買ってる店に売ってるようだ。
常連にそんなサービスがあったのか;知らなかった。
「ぜひ!!買い求めなければ!!そしてプレイに・・・」
「は、プレイ?」
「ごほん、何でもありませんわ;」
目を丸くしたルルシアにごほんと誤魔化した。
思わず伯爵令嬢の仮面が破れるところでしたわ;ほほほ;
「それじゃあ、自己紹介も終わった所でステージ見学や。
いろんな所、見てってや~。まず、そこでナイフ投げをするんや」
まず、ナイフ投げの立て壁が置いてあった。
近くで見ると巨大な丸いダーツ見たいになっている。
「誰かナイフ投げ体験してもええで。
そこの壁に立って見てや。それじゃあ、そこのメガネの兄ちゃん」
「え?僕ですか?」
指名されたキラは壁に貼り付けられている。
どうやら、投げナイフの餌食にされるようだ。
「そんじゃ、行くよ~」
ガルドのナイフがキラの横ギリギリに刺さる。
「ひいいいいい;;;;;;;」
アクロバディックな動きで投げるガルドは余裕なようだ。
あっという間にキラの周りにナイフが突き刺さった。
「ざっとこんな物だね。見てくれたかいレディーたち~」
男性陣は無視して私ら女性にポーズをとるガルド。
だからポーズに昭和の臭いがするって;
「ハラハラしましたわ;」
「キラおにいちゃん放心してる;」
「あんだけギリギリでナイフ投げられちゃね;」
「ご愁傷さまね」
次々に感想を述べる女性陣にガルドは
「俺はプロだからね~。その辺は安心していいよ~。
男はそれぐらい我慢できるはずだし~
女の子たちに見られるなら刺されても本望でしょ~」
とキラの事はクールな扱いをしてるようだ。
「もう2度とやりません!!(涙)」
キラは壁から外されると涙目でみんなの逃げて行った。
「お次は空中ブランコの台へ案内するで。
登ってみる?」
フロドの言葉にマークスは青い顔した。
高所恐怖症らしい。
「なんや、坊。高いとこ苦手なんかい?
でも、台に上るなんて一生に一度しかできないで~」
「イヤ、イヤ」
「そんなに嫌がるなら無理にでも登らせよか?」
「イヤ~~~~~~~(涙)」
「うっ、かわいい坊やな;」
マークスはウィキにしがみついて首をフルフルと振った。
その様子がかわいい。
マークスのお目目うるうる攻撃にフロドは顔を赤くした;
かわいかったらしい。
「ハイハイ!!代わりに俺が登ります!!!」
「俺も俺も!!」
ニッキーとリックが登りたいと手を上げた。
ニッキーは空中ブランコにかなり興味を持ってたもんね。
2人はフロドの案内で空中ブランコの台に登った。
「結構高いな」
「ここで空中ブランコに乗ってるんだな」
高さに感心するニッキーとリック。
ニッキーはブランコの棒に触っている。
すると・・・。
「ああああああ!!!!」
「ニッキー!!!」
「そばかすの坊!!」
ニッキーは空中ブランコに乗って空中に舞ってしまった。
危ない!!!私は急いで反対側の空中ブランコに乗って助けに行った。
「ニッキー!!タイミングよく手を離して私の足に捕まりなさい!!
身体強化の魔法を使うのよ!!」
「・・・!!」
ニッキーは泣きながらタイミングよく私の足に飛び移った。
もし失敗したら風の魔法で落下の衝撃を和らげる
予定だったがその必要はなそさうだ。
台に着地して事なきを得た。
「2人とも大丈夫やったか?」
慌てて顔を真っ青にしてフロドが台に登って来た。
「何とか無事でした」
「怖かった・・・;(涙)」
息を切らせながらフロドを見上げた。
ニッキーは泣いている。
「よかった~。
それにしても、素人やのに空中ブランコできるやなんて。
かなりの逸材や。うちのサーカスに来ぉへん?」
「いやだ!!もう二度とやりたくない!(涙)」
フロドの誘いにニッキーは泣きながら叫びました。
トラウマにならなきゃいいけど;
こうしていろいろステージ内を見学させてもらった。
中には檻のライオンを見せてもらって
ウィキに再びライオンが怯える一幕もあったが。(ライオンが失禁してた)
おおむね、ハプニングもなくステージ見学は終わった。
「次は2軍の練習場に案内するで~。
花形以外は裏のテントで練習しとるんや」
「あの、お手洗いに行ってもよろしいかしら?」
「あ、俺も」
「トイレはテントの裏手に公衆トイレがあるさかいに。
待っとるんで早よしてくださいね」
私とウィキはステージあるテントから出て裏手の公衆トイレに向かった。
・・・団員に付けられてるわね;
私は公衆トイレの中の個室に入りポケットから紙の札を取りだした。
それに霊力を込めると自分の姿をしたもう一人の自分が現れた。
これは式神と言って陰陽師が使う使い魔の一種で
札に込められている霊魂を実体化させる事が出来る。
式神は私の霊魂の一部を札に込めているので自分と同じ姿をしているのだ。
精神もリンクしていてお互いの様子も分かる。
なぜ使えるかと言うと前世のバイト先の悪霊退治してる
お坊さんが教えてくれたのだ。
前世のコネが役に立ってる訳である。
「頼んだわよ」
「了解です」
式神は敬礼をして公衆トイレを出て行った。
尾行していた団員も式神を追っかけて行った。
私は自身の姿を消す『ステルス』の魔法を使いトイレの外に出た。
「待たせたわね」
「捜査開始だな」
外では同じように『ステルス』の魔法を使ったウィキが待っていた。
なぜ、見えるのかと言うとウィキとは従魔の契約をしてるので
お互いの居場所が見えなくても分かるからだ。
ウィキも同じように式神で分身を作り出して
みんなの所に式神を代理として行かせている。
さて、団員の個人テントの場所はノッレから聞いてるし捜査しなくては。
さてさて何が出るのか?手がかりがあるといいわね。
つづく
こうしてサーカスにもぐりこんだユーエリア達。
捜査で何が分かるのか?