第10話:店内リフォームと新たな従業員の確保
私、ユーエリア・アークレイは廃墟になっている店舗の中にいます。
もちろんウィキたち仲間も一緒です。
錬金術の授業の他にもやる事があるのでここに来ました。
むしろ、こっちのほうが本業です。
ユーエリア商会の店舗を修繕して立派に使えるようにしなければなりません。
なのでリフォームです。掃除を店舗全体にしてから行います。
はたきとホウキで手分けしてクモの巣や埃を除去しました。
3時間かかって綺麗にした後、
リフォームするため1階の店部分に集まりました。
「みんな、良く見なさい。今から建築魔法のお手本を見せるわ。
ウィキ、チョークを」
「あいよ」
私はウィキから真っ白なチョークを渡され地面に複雑な魔法陣を書きました。
それに手を当てて風と土の魔力を流します。
すると、事前に持ち込んだ木材が勝手に浮かび上がり
棚やレジをする所や本のラックなどが出来上がって行きます。
なんか方法が鋼の腕をした錬金術師の錬金術と
似ていますがこれが建築魔法なのです。
目に見えないですが風と土の精霊が建築のリフォームを行っています。
「すっげー!!!」
「建築魔法ですか?!ユーエ先生は多彩な才能をお持ちなのですね」
「普通、家を建てるのって何十人もの建築魔道師がいるんじゃないの?;
反則的ね・・・;」
「ユーエおねえちゃんすごい」
リック、キラ、ノッレ、イノーゼはそれぞれ驚きながら店内を見渡している。
私はそれを見て高笑いをした。
「おーほっほっほっ!崇め奉りなさい!!!」
「お嬢様がまた調子に乗っているな;」
「・・・私自身すごいんだからしかたないじゃない。踏むわよ?」
私が履いているブーツでウィキを踏み倒した。
「・・・お嬢様、ブーツのヒールの感触がキツいです(涙)」
「もっと、よく味わいなさい。ほれほれ」
「・・・俺の未来はどっちだ?(涙)」
「「「「・・・・;」」」」
私は足をぐりぐりとウィキを踏みつけた。
みんなはそれを見て呆れているようだ。いつものことである。
私は気が済むまでウィキを踏みつけた後、次の作業に移った。
「木目調だと雑貨店といった感じはしないわね。
みんな、持ってきたペンキで白に塗りなさい」
「なんで白なんですか?」
私がそう命令するとキラが店内の色に疑問を投げかけた。
「古代の雑貨店はみんな白い内装だったそうよ。
夜も明るく目立つように白い色に統一されていたらしいわ」
大ウソ言いました。地球のコンビニが大抵、中が白っぽいだけです。
「そうなのですか。初めて知りました」
「店内が地味なのよりも白い方が斬新だよな」
「大抵のお店は木目調だもんね」
「めだちそう」
みんなは大ウソに納得してくれたようだ。
ウィキは私を見て苦笑いしている。
「さ、みんな色を塗るのよ。
あ、商品を置く棚や会計するところはクリーム色にしてね。
分かりやすいように」
「「「「はい」」」」
みんなに店内の色塗りを任せてバックヤードに行く。
倉庫や従業員の控室なども修繕する。
「『リペア』」
私がそう呪文を唱えると置かれていた
ボロボロの家具のタンスや仮眠ベッドなどが新品同様に新しくなった。
この魔法は無属性魔法のリペアという魔法で、
物の時間を戻し新品にする無属性の魔法です。
青い狸の某ふろしきと同じ効果と思ってくれればいいわ。
1階のバックヤードの修繕が完了した私とウィキは2階に行きます。
2階は住居部分でそこも家具が荒れ果ててボロボロになっています。
窓の部分もガラスが割れていました。
そこもリペアの魔法で直します。すぐ新品になりました。
それをした後、私はポケットからある瓶を取り出しました。
「お嬢様、それ塩か?」
「お清めの塩。ここで前店主が首つり自殺を図ったらしいから
お払いしようと思って」
街の人からこっそり前の店主の話聞いたのよね。
変な怨念がここに漂っているわ。
それが集まって悪霊になる可能性があると霊感が告げている。
私は霊力を塩に込めてばら撒き、隅に盛り塩を作っておきました。
「なんかイヤな感じがするな;」
「あ、ウィキは悪魔だっけ?」
「お嬢様が最初に俺に会った時使った呪文みたいな強さは塩にはないけど、
気持ち悪い・・・;」
ああ、真言の事ね。
ウィキは悪霊に近いからお清めの塩に気持ち悪がってるんだね。
「これでこの部屋は浄化されたんだし我慢しなさい。
1日経ったら悪霊は浄化されるし片付けるから」
「・・・了解。うっぷ」
ウィキは吐き気を堪えながら。了解した。
「天井は雨漏りしてないかチェックをしないと。
ウィキ屋根に上がるわよ」
「屋根にいる方がマシだ。早く行こう」
窓を開けてウィキは私をお姫様抱っこしてジャンプして屋根に登りました。
「あ~、ガタがきてるな」
ウィキが屋根を触って見ると所々腐ってるところがあります。
「これも『リペア』ね」
私はすぐに屋根を魔法で直しました。魔法社会万歳です。
屋根の色は真っ赤で上空から見ると目立ちそうです。
お店の外装全体も直り新品同様になりました。
「よっと」
ウィキは再び私をお姫様抱っこしてジャンプして店前に着地しました。
風魔法で落下の衝撃を和らげたようです。
「あ~看板も直ってるな;」
「『ロキ青果店』。昔はここ八百屋だったみたいね」
野菜の絵が描かれている看板が堂々と入口の上に飾られている。
この世界は分かりやすく看板に商品がイラストで書かれている場合が多いのだ。
「取り変えなきゃね。ウィキ交換しなさい」
「あいよ」
私が収納魔法を使って空間からユーエリア商会の看板を取りだすと
ウィキはそれを抱えて、風魔法で浮き上がり看板を交換した。
「薬の瓶とはたきやホウキ類のイラストが立派だな」
「うん、立派立派」
ウィキの言葉に私は満足そうにうなずいた。
主力商品のポーションの瓶と日用品のほうきなどが左右に描かれ、
真ん中に『ユーエリア雑貨店』と書かれている看板がどんっと掛かっていた。
「それとこれね」
その他の売る予定の日用品や薬類のイラストが掛かれた
折り畳み式立て看板も入り口横に置いた。
これで何が売ってるか分かるだろう。
「子供でも来やすくするためか?」
「お使いに来る、文字が読めない子供でも分かりやすくないとね」
3歳児でも働く庶民がいるくらいだからね。
実は数日の間に他の店を偵察に行ったのだが
王都の店では丁稚奉公に来る子供も多いらしかった。
なので立て看板も置いたのである。
「準備中なので入口のドアにも「close」の立て札も飾ってっと。
俺もペンキ塗り手伝おう」
「私もそれをチェックしなきゃね。センス良く塗ってもらわなきゃお仕置きよ。
ウィキとリックだけ」
「なんで俺とリックだけ!!(涙)
男だけならキラはどうして抜かすんだよ!!」
「キラはなぜか純粋そうな気がしてプレイしたら壊れる気がする」
「俺も純粋に生まれたかった・・・(涙)」
ウィキは自分の運命に涙した。
それにキラは病院の坊ちゃんみたいだから王立病院の兼ね合いもあるからね;
プレイしたらエリクサーの取引に影響が出そうなのでやめとく。
話がそれたわ;で、みんなの所に戻って店内のペンキ塗りを手伝いました。
他に弁当コーナーの棚の冷蔵庫機能
(氷と無の魔道石に温度変化の魔法陣を組み込んだもの)や
これと同じ仕組み(さらに火の魔道石を加えて暖房機能も付けた)で
室内の温度を一定にするエアコン機能も付けて、
店内の明かり(天井に光の魔道石を組み込み魔法陣を刻印した
半円上のガラスをかぶせた物)を設置したりしました。
「これでコンビニに近くなったわ」
「何だか他にはない雑貨店になりそうね」
「魔道石をふんだんに使って棚の機能を改造するなんてすごいです」
「・・・魔道石を自作できるなんて反則だよな;」
「あかりぴかぴか」
私が満足そうに言うとノッレたちもその店の機能のチートさに驚いてるようだ。
「俺とお嬢様は魔力扱いがチートの専門家だからな」
「わざわざ買いに行かなくてもいいのが強みよね。
とにかく店舗の改装は完成よ」
「「「「「おおおおお!!!!」」」」
私とウィキは魔力を低コストで結晶化でき
魔道石を作れるので予算がそれほど無くても魔道具が作れるのが強みだ。
とにかく、商品を入れればまさにコンビニだわ。
みんなは喜んでバンザイしました。
商品はしばらくは私たちだけで自作するけど、
他の人に錬金術を教えて商品を作るところを
アウトソーシングできるようにしないと。
初級錬金術を覚えているノッレたちに
アウトソーシング先の人たちに教えるのもありだわ。
アークレイ伯爵領にある村ごと雇ったり
新たに移民をつのって工場を作ったりするのもいいわね。
夢が膨らむわ。
こうして店舗のリフォームは完了したわ。
次は従業員の確保。幼いノッレとイノーゼだけじゃ店を回せないわ。
なので、リックに誰か適当な人がいないか探させた。
「緑の騎士団を怪我で退役した人がいるぞ。
働きたいって言うんで連れてきた」
そう言ってリックが連れてきたのは30代後半ぐらいの男の人2人で。
サムとフリッツというそうだ。2人とも私に礼儀正しくお辞儀した。
「よろしくお願いします」
「こんな僕たちを雇ってくださるとはユーエリア様には感謝しきれません。
ありがとうございます」
ボサボサ茶髪に濃紺の瞳で右手を欠損してるのがサム。
たれ目で人が良さそうだ。
新緑の瞳にゆるい金髪をひとまとめにしているのがフリッツ。
こちらは左足が欠落している。
没落貴族らしく平民として騎士団に入ってたそうだ。
こちらは真面目で元貴族らしく優雅そうな雰囲気。
街を襲った魔物との戦いで手や足を欠損したらしい。
「初めまして。サムにフリッツ。私が雇い主のユーエリア・アークレイです。
従業員として雇うからにはお給料や雇用保険など保証致しますわ。
雇用保険の一つとして国とは別に医療保険と言う物もございますの。
医療保険の一環としてこれをお受け取りになって。ウィキ」
「はっ」
私がウィキに命じると義手と義足らしきものを持ってきた。
「この義手と義足は神経と繋いで普通の手と足のように
繊細に動くしろものですわ」
「すごい!!」
「!!!!これをいただけるのですか?」
サムとフリッツは義手や義足を見てその繊密さに驚いている。
見た目、肌色のオーク(二足歩行の豚の魔物)の皮でできた
魔道人工皮膚で覆ってあるので
人間の普通の手足と変わらないそれはオークの筋肉でできた魔道人工筋肉と
聖水でできた魔道人工血液と無属性魔道石で作った魔道人工骨と
アルケニー(蜘蛛型の魔物)とミスリル(魔法銀)を
合成した糸を編んで作った魔道人工血管や神経などで構成されている。
複雑な魔法陣の印刻も内部でされている至高の一品なのだ。
元ネタは某錬金術漫画で、それに出てくる
機械の腕を参考にウィキと一緒に作ってみたものです。
「もちろん我が商会の医療保険なのでタダでそれらをお譲り致しますわ」
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
「再び足が使えるようになるなんて思いませんでした!」
2人は感謝をして、それらを付けてみた。
付ける時、少し神経の痛みがあるものの装着は成功したようだ。
「サム、フリッツ、これから宜しくお願い致します」
「一生懸命頑張ります」
「必ずお嬢様の期待に応えられるようなお店にして見せます」
「期待していますわ」
「「はい」」
2人は静かにやる気に満ちてお店を盛り上げる約束をしてくれた。
これで従業員は確保できた。
準備期間として四則計算やそろばんの使い方、商品の詳細と値段の把握。
お弁当の作り方などを1カ月で教えた。
サムやフリッツだけじゃなくてノッレたちも研修に参加してマスターした。
2人づつのローテーションで店を回す事になる。
あ、研修はプレイなしのスパルタもなしで普通に教えたわよ。
節度は守ってるわ。表向き伯爵令嬢だし。
なに、ウィキ?その猫かぶってますねって胡散臭げに見る目は?
全裸で亀縛りで露出プレイの刑にしてあげるわよ!!
つづく
ついにコンビニが完成しましたw
次回は開店の様子を書きますw