第9話:イノーゼの魔力封印解放と練金術授業
病院騒動からしばらくして現在。
私、ユーエリア・アークレイは
元医者であるキラ・スターダストを錬金術の弟子にしました。
主に座学がウィキ、実践の授業は私といった具合です。
私の商会に従業員雇っているノッレとイノーゼもついでに錬金術を学ばせます。
リックもなぜか店舗のワープポイントから
別邸に遊びに来ているので講義を聞いています。
私の別邸の屋敷には錬金術を行う錬金部屋があります。
大きな錬金術の材料を煮込む
巨大な錬金壺が竈の上にドンと設置してあり、
下の竈に薪をくべる事により火力の調整が出来ます。
お釜じゃなくて壺なのは錬金術師の伝統だそうです。
専用の錬金壺を作る壺師もいるそうな。
横の棚には錬金術の材料の薬草や魔道石の粉や
モンスターから採取したスライムのコアなどの素材が並べられています。
各材料は冒険者ギルドを商会として採取依頼したので
定期的に入って来るようになっているのです。
貴族だと折り合いが悪いので商業ギルド長に頼んで身分を隠しています。
ユーエリア商会のユーエリアという名前自体、この世界にありがちらしいし。
「基本、錬金術というのは無属性の魔力を材料に込めて
錬金壺に入れて煮る事によってアイテムが作れる」
「はい!!先生。
だったら無属性の属性の魔力が無い人はできないのではないですか?」
ウィキの説明にキラが手を上げて質問してきた。元気良いね;
「無属性の属性自体誰でも使えるんだ。
「無」だから無属性の魔力はまっさらな魔力そのものだ、
個人個人の魔力は各個人違うのは知ってるよな。
実は体内には魔力の生成と属性変化をつかさどる器官がある。
魔臓器という臓器で魔力を生成しそれを各属性の魔力に変化させる
「火」なら「火」、「水」なら「水」といった具合にな。
魔臓器の種類は個人によって違い、
属性が各個人決まっていると思われてるが。
意識的に魔臓器の属性変化を使わなければ
「無」の魔力は使える。誰でも無属性の魔力を操れる寸法だ。」
「わたし、まりょくがないからまほうつかえない」
ウィキの説明に悲しそうにイノーゼがそう言った。
「病気で魔臓器に障害が無い限り誰でも使えるんだけどな・・・。
イノーゼは見た感じそんなことなさそうだし」
「何でそんな事が分かるのよ!
もしそうならイノーゼは捨てられずにすんだわ!!
・・・ってごめんねこんな話して」
「いまはみんながいるからべつにいい」
ノッレがウィキに噛みつくように睨んだ。
ノッレはイノーゼを気遣うように謝った。イノーゼは苦笑いした。
イノーゼが貴族に捨てられた原因だからデリケートな話題は避けたいのだろう。
「無属性治癒魔法の『スキャン』で外から体内を調べた。
イノーゼは今は健康そのものだ。魔臓器は健康そのもの。
魔力があるはず。
となると魔力がないように見えるのは別の原因があるな」
「別の原因って?」
ウィキはノッレは訝しげに聞いた。
ちなみに『スキャン』は病院のレントゲンや
CTスキャンと同じものと思ってくれればいいわ。
別邸に来たばかりの時、健康診断を2人に受けさせた時にウィキが使ってた。
「魔盲(魔力が無い人の事)って大体が母親の胎内にいる時、
母親に負担を掛けないように無意識のうちに
魔力を封印してしまう人が多いんだよ。
イノーゼには膨大な魔力が眠ってる可能性が高い」
「わたしもまほうがつかえるの?!」
イノーゼはものすごく驚いた。
「ん?使いたいか?よし、今から封印解除してやるか?
今日からお前も魔法少女だ」
「え?ウィキ先生できるんですか?」
「ちょ!!お前;軽っ;お気楽に言うなよ魔法少女ってなんだよ;」
「ユーエが書いた『魔法少女サリリ』みたいね・・・;」
「あ、私が悪ふざけして出版社に出した絵本ね/////」
「サリリちゃんかわいかった。わたしもサリリちゃんになれる?」
「おうwなれるぞw」
ウィキの言葉に驚くキラとリック。
ノッレが私の書いた魔法少女の話を思い出したのか呆れてる。
イノーゼも魔法少女になれるかもしれないと喜んでた。
ウィキはその様子を見てイノーゼの頭をなでた。
そういえば私、魔法少女ものの絵本を悪ふざけで
出版社に送って本を売り出してもらったのよね。
魔法使いサ●ーとカードキャ●ターさ●らを合わせた話。
魔法の国から来たお姫様のサリリが変身して
魔法少女サリリとして悪い魔物を魔法のカードで封印する話。
イノーゼもお気に入りで絵本よく呼んでた。
他に神に選ばれし5人の魔法使いの美少女が活躍する
『美少女魔法戦士ブレザームフーン』や
世に紛れて悪人から秘宝や美術品を盗みまくる
正義の怪盗少女『神魔怪盗ジュンヌ』など
地球のアニメをアレンジして絵本やライトノベルを書いて
出版社に売りまくった。
3歳からそれらを書いているので多額の印税が入っている。
王国では大人気らしい。
ノッレに指摘されて私は思い出して赤面した。
とにかく、ウィキがイノーゼの額に手を当てて魔力を流す。
イノーゼの体内を魔力で探り魔臓器の封印の楔を探し出しているようだ。
封印の楔とは魔力の物質上の弱いポイントの事。
「・・・ここか」
「っ!!」
イノーゼはびくっして硬直した。
ウィキは封印の楔を見つけ出してムリヤリ魔力を流して
イノーゼの魔法の封印を破壊した。
ウィキの激減した魔力でも普通の魔道師レベルは魔力があるので
封印は解除できるのだ。
「・・・!!!!」
「うわっ!!なんだこの力?!」
「すごい魔力反応です!!」
「イノーゼ!!しっかり!!」
イノーゼからすごい魔力が放出している。
リックたちはその魔力の力に顔を真っ青にして混乱した。
イノーゼは上手く魔力をコントロールできなくて震えている。
「ウィキ。あれを」
「OK。お嬢様」
私が命じるとウィキはポケットから銀色のシンプルな腕輪を
取り出しイノーゼにはめた。
フリーサイズなので腕輪がイノーゼの手首にしゅるるんと縮み
丁度いいサイズにはまった。
するとイノーゼの魔力の放出が止まり安定した。
「イノーゼよかった。身体大丈夫?」
「うん、もうへいき」
ノッレはイノーゼを抱きしめ無事を確認して安心したようだ。
「ちょっと!!イノーゼになにするのよ!?
封印解除ってそんなに危険ならしないでよ!!」
ノッレはウィキに憤慨した。
ウィキは怒られて慌ててしゅんとなった。
「ここまで魔力の量が高いとは思わなかったんだよ;;;;
それにしてもこれは・・・お嬢様並みの魔力だな・・・」
「私もウィキに魔法を教えてもらう時に魔力制御上手く出来なかったっけ:
1カ月はその腕輪を付けて訓練したわ」
そう私も魔力チートで苦労したわ。安定するのに1カ月かかった。
イノーゼの付けている腕輪は私のお下がりで
魔力コントロールを補助してくれるものだ。
魔力が並みの力になる代わりに自在にコントロールできるしろもの。
腕輪は元はウィキが自作してコレクションしてたものらしい。
「わたしもいっかげつでまほうつかえる?」
「練習次第ね」
イノーゼにそう聞かれて私はなでなでしながらそう答えた。
これは才能次第だからなあ・・・どのくらいか見当もつかない。
「ともかく、これでイノーゼも魔法が使えるようになったわけだ。
ははははは」
「ははは、じゃないわよまったく。
でも、良かったわねイノーゼ」
「うん」
ウィキの誤魔化し笑いにノッレが半眼で睨みしつつもイノーゼはうれしそうだ。
「話を錬金術に戻そうか?
指定の材料のレシピにしたがって煮るだけなのが現在の錬金術だが
それに変質という技術をすることにより安い材料で気軽に作る事ができる」
「材料に魔力を込めて煮るんですよね?」
「無属性の魔力でな」
なるほどとウィキの説明に感心するキラ。
「その魔力の込める量が繊細なんだ。
でも、発酵魔法ほど材料の魔力変動はないし安定しているので簡単だぞ」
「ウィキ、アレにそうとう苦労したもんね」
しょうゆや味噌作りを思い出したのか苦い顔をするウィキ。
私もあれだけは好きに慣れない。大豆の精霊がわがままでねえ・・・。
その様子にみんなは首を傾げている。
「とにかく、初歩のポーションを作って見せるぞ。
錬金壺に注目。お嬢様やってみてくれ」
「じゃあ、みんなよく見ててね」
私はウィキに言われ錬金壺の前に行った。
「まず、錬金壺に溢れるぎりぎりまでの水と
マジカルウィード500gを入れます」
水を錬金壺にみずをあふれるぎりぎりまで入れて
マジカルウィードを天秤に500g測る。
そしてそれも壺に入れる。
「そして魔力を込めて煮ます。
軽く初級魔法を使う程度にゆっくり沸騰するまで込めます」
「ゆっくりって煮込む時、
初級魔法を連発する感じで煮込み続ければいいのか?せんせー?」
リックが錬金壺を指差しながら言う。
「いい質問だね。沸騰するまで魔力込めを連発するんじゃなくて
1回分の初級魔法の無属性魔力を沸騰するまでゆっくり込めるの」
「げっ!!つまり魔法を沸騰するまで超ゆっくり使えって事じゃんか!」
リックは苦い顔しながら驚いた。
「これは魔力の制御が難しそうですね・・・。高位の魔道師でも難しそうです」
「ユーエとウィキっていつもこんな事やってるの?!」
「むずかしそう」
キラもそれを見て苦い顔してる。
ノッレは驚き。
イノーゼは漠然と難しい事だと分かってるようだ。
魔力を込めて沸騰するまで作業をした。
「おい光が壺の周りに浮いてるぜ」
「綺麗・・・」
「これが錬金術の変質ですか」
「ユーエおねえちゃんすごい」
棒でかき混ぜながら魔力を込める時の
光のエフェクトがきらきら輝いてるのが綺麗とみんな感心してた。
「続けるわよ。沸騰したらスライムのコアと
コウモリの羽根を入れてさらにさっきのように込める。
それで緑色になったら完成」
壺の中の緑色に輝くポーションをおたまですくってビンに詰める。
1回で20本できる計算になる。
「まあお嬢様がやったように繊細な魔力制御してポーション作る訳だ」
「私はすぐできるようになったけどね」
「お嬢様はチート・・・天才だからだろ」
魔力の量だけじゃなく制御も反則なチートだって錬金術を習った当時、
ウィキから言われたっけ。
「・・・すげえ」
「先生方は魔力制御も天才なのですね!!」
「ユーエあんたすごい奴だったのね」
「ユーエおねえちゃんすごい!!」
まあチートですから。これぐらい当然よ。
みんな、目を輝かせて驚いていた。
「これをみんなもやりなさい」
「ええええ!!!できるわけねえ!!」
私がそう言うとリックは頭を抱えて叫び声をあげた。
「僕はやります!!!錬金術界の革命的技術をマスターして
目標のエリクサーを作るためならなんでもやります!!」
キラは感激してやる気度がさらに増したようだ。
おお!!バックに炎が燃えている。
「難しそうだけど私もやるわ。できたら薬代が浮きそうだし」
「わたしもやる」
ノッレはシビアだね;現実的だわ。ちゃっかりしてる。
イノーゼもやりたいようだ。
「・・・ちっ、じゃあ俺もやるよ。
仲間はずれは寂しいし」
リックもみんなのやる気に引きずられたのかしぶしぶやる事に決めた。
「じゃあ、順番にポーション作っていってね。
まずはリック」
「俺が最初かよ;」
リックはがっくりしながら錬金壺に向かう。
水とマジカルウィードを入れて魔力を込めるが最初の段階でつまずいた。
壺の中が真っ黒のどろどろのヘドロになってる。
「なんだこれ!!!」
「ああ、失敗だわ。変質に失敗するとヘドロになるから」
またの名を産業廃棄物になる。
これは魔力の込めすぎだね。
「魔力の込めすぎよ。少しでも込める量のミスをすると
品質が落ちたり最悪ヘドロになるわ」
「ちくしょう・・・;」
「錬金術をよく観察して感覚を覚えなさい。
次、ノッレ」
へこたれてるリックを余所に次はノッレを見てみる。
ノッレは錬金壺に届かないのか見た目5歳児なので踏み台を使う。
手順通りにポーションを仕上げていく。
魔力込めに四苦八苦しながらポーションが完成した。
「こんなに集中したの生まれて初めてよ」
ノッレは汗だくになりながらビンに詰めたポーションを見せた。
輝きは鈍いもののポーションにはなってる。
「低品質だけどまあ初めてにしてはいいんじゃない?
普通の市販されてるポーションの半分の回復量かしら?」
初めてにしては上出来って感じね。
ノッレは錬金術センスはあるほうかしら。
「半分か・・・でもやったわ」
ノッレは初めて作ったポーションを見て嬉しそうな顔をした。
「じゃあ、次、キラ」
「はい!!」
キラは瞳を燃やしながら張り切って錬金壺に向かった。
キラは錬金術師のセンスがあるのか魔力込めもスムーズに行っている。
かき混ぜる棒もさまになっている。
「できました!!」
瓶に詰めたポーションを見せるキラの顔は輝いていた。
魔力反応もいい。市販のポーションとそん色はない。
「これは初めてにしては立派なポーションができたじゃない」
「これはすごいな。お嬢様並みの錬金術センスだ」
ウィキも感心してできたポーションを見ている。
「祖父が酪農農家なんでヨーグルト作ってるんです。
発酵魔法を教えてもらったのでヨーグルトの精霊の
魔力込めを見たのを参考にしてやって見ました」
キラの祖父は農家だったらしい。
なるほどある程度、農業魔道師としてのセンスもあるわけだね。
それを錬金術のセンスにも応用できるとはやるわね。
私は感心した。
「すげえなキラ!!」
「頭が良いからお医者さんは錬金術もすごいってわけね」
「キラおにいちゃんすごい!!」
「いえいえ先生方に比べてまだまだですよ」
リックたちも感心している。
キラはみんなの賛辞も謙遜して照れていた。
「じゃあ、最後にイノーゼ」
「がんばる」
イノーゼは錬金壺に向かった。届かないのか踏み台を使っている。
よじ登る姿がかわいい。
手順通りにポーションを作る。
魔力を込めながら棒で壺の中身をかき混ぜる姿が
TVの子供料理番組のタレントみたいだ。
「できた」
「こ、これは!!」
できたイノーゼのポーションが異様に緑に光り輝いている。
高品質。超高品質ですよ!!このポーション!!
「魔力反応がすごいです!!これはハイポーション並みの回復ができますよ!!
すごいですイノーゼちゃん!!」
「わーい」
キラがもの凄く驚いてイノーゼを高い高いしている。イノーゼは楽しそうだ。
「ここまで高品質なポーションができるとは;;;
イノーゼちゃん天才だな」
「イノーゼに負けた」
ウィキは感心してできたポーションを見ている。
リックは突っ伏してショックを受けていた。
「イノーゼってすごいのね。
この子を捨てた貴族に見せつけて奴を殴ってやりたいわ」
ノッレはイノーゼを捨てた貴族に見返してやりたいと
握りこぶしを握ってぶつぶつ呟いている。
「ホント、その貴族はもったいない事しただろうね。
まあその貴族は置いといて全員の初めての錬金術が終わったわけだけど。
リックは要練習。スパルタでビシビシ厳しくいくから覚悟するように。
ノッレはすこしコツをおぼえれば普通のができそうだし。
キラとイノーゼに関しては問題なしね。
どんどんポーションを作成して高品質だけじゃなく
段階ごとの品質のポーションができるようにしましょう」
段階ごとの品質で値段を変えれば売れ行きのバリエーションも増えそうだしね。
ってこのように私は話を纏めてシメた。
「要練習かあ・・・;厳しくビシビシってまさかムチ?;;;;
ガクガクブルブル;;;;」
「俺も教えるから耐えるんだ友よ」
「オイ耐えろってお前;ウィキいいいいいい!!助けてくれよ!!(涙)」
「俺はお嬢様のドSは止められん。むしろ被害者だ」
「この薄情者おおお!!!」
「練習してイノーゼに追いつかないとね、がんばろう」
「おねえちゃんがんばって」
「段階ごとの品質のポーションですか。やる気がでてきました!!」
リックはこれから受けるスパルタに怯え泣き、ウィキはそれを慰め、
イノーゼに追いつこうとがんばろうと
決意するノッレににこにこしてるイノーゼ。
目標に燃えているキラ。
それぞれみんな三者三様な反応をしているわね。
やる気が出てきた所で特訓いくわよ。
こうしてしばらくは錬金術の授業が続く事になった。
キラとイノーゼとノッレはすぐ軽い錬金術の薬品作りはマスターしたが
リックは才能が無いのか初級錬金術をマスターするのに3カ月掛かったという。
「そこ!!魔力の込め方が甘い!!!想像力を働かせなさい!!!」
特訓中、私はムチをリックにびしばしさせて、
たまに蝋燭をリックの手元に垂らした。
「イタっ!!熱っ!!いやあああああああ!!!!!!!」
「・・・骨は拾ってやるからな(涙)」
「ウィキの薄情者おおおお!!!!!」
「余所見しない!!!」
「ひいいいい!!!!!」
私は余所見したリックにムチを振るった。
錬金部屋からリックの叫び声が別邸中に響いたという。
ウィキは涙を流しながらリックに同情したという。
失礼な!!ムチは音だけ鳴る痛みを抑えた特製のムチだし
蝋燭もプレイ専用の特製品なのに。
死にはしないわよ。なんで良さが理解できないのかしら?不思議だわ。
つづく
プレイしながら錬金術を教えてもらうリックが哀れ(笑)
スパルタだから体にむりやり覚え込ませましたw