第94話:過去と夢と今
<ガンツ視点>
俺はなぜか王様の勅命でクリスマスとかいう祭りを楽しんでいた。
王様達一家は気さくな方で俺は少しづつだけど打ち解けていた。
俺たちはたくさん屋台を回って今はクレープを食べている。
「お、このクレープは上手いなw」
「王様、クレープの中にいちごのケーキが入ってるみたいです」
「おお!!クリスマスらしいな。
クリスマスではイチゴのケーキを食べるのがお約束なのだ」
「そうなのですか」
王様によるといちごのケーキはクリスマスの定番らしい。
クリスマスでは家でケーキを食べるのがお約束なんだそうだ。
「父上、今度はリンゴ飴食べましょう!!」
「そうですねwしゃくしゃくした噛みごたえがいいって噂ですよ」
「あなた、クリスマス特典でクリーム付きだそうですw」
王子様や婚約者様や王妃様は新しい屋台を見つけたみたいだ。
どうやら林檎がまるまるアメになってるらしい。
クリーム付きとは豪華だな。
「よし、次はそこへ行こう!!案内してくれ!!」
王様はあんだけ食べたのにさらに食べるらしい。
胃袋が底なしだよな;
王妃様たちに連れられてリンゴ飴の屋台に向かった。
「陛下もリンゴ飴を食べに来ていたのですか」
「アークレイ伯爵もいたのか。
婦人とアルフォンス殿やイノーゼ殿も一緒か」
リンゴ飴の屋台には金髪の身なりの良さそうな貴族の男と
赤い髪の貴婦人と貴族の男にそっくりな少年と
白い髪の女の子がいた。
王様の言葉から貴族の伯爵様の一家らしい。
「ホントは娘のユーエリアも一緒に来たかったのですが;」
「ユーエリア殿はライヴのリハーサルに忙しいからな;
明日が本番らしいし」
王様と伯爵様の会話から伯爵様の娘がライヴに参加するらしい。
そういえば、王様の息子のリックの小僧もライヴに参加するのだったな;
気がついたけどすごい豪華なのでは;;;;;;
「こんな所ではなんですし、そこのベンチに座りましょう」
「そうだな、立っているのも疲れた」
伯爵様に言われて王様たちは近くのベンチに座った。
しゃくしゃくとリンゴ飴を頬張っている。
「そこの方はカミーユ殿の父上ですかな?」
「は、はい」
伯爵様に話しかけられた。美しい伯爵様に見つめられ俺は緊張した。
「ユーエリアから話は聞いているよ。
娘さんの夢を反対しているとか・・・」
「は、はい」
どうやら伯爵様はリックの小僧経由で伯爵様の娘さんから
話を聞いているようだ。
「俺・・・じゃなくて私は長年宿屋を経営していました。
今の宿屋は亡き妻と作り上げたもので;
思い出が詰まった宿屋を手放したくなくて。
娘と角突き合わせてる状態で・・・」
「ふむ、亡くなった奥さんのことが忘れられないのですね」
・・・忘れられない。伯爵様の言葉に俺はそうだと心のなかで納得した。
今でもイレーヌ面影を求めてることを自覚した。
「そうです。今でも妻の面影を追いかけています」
「私も昔はそうでした・・・」
「伯爵様は今でも奥さんはいらっしゃるのでは?」
赤髪の綺麗なご婦人が側にいるではないですか。
俺は伯爵を怪訝に見つめた。
「今の妻は後妻なのです。
前妻は12年前に亡くなっています」
「・・・そうだったのですか」
伯爵様は複雑そうな表情をしていた。
見るに伯爵様もいろいろ思うところがあるのだろうと分かった。
「私も昔の妻を思うあまり
今の妻と娘につらい思いをさせてしまった時期があったのです
今の妻を邪険に扱い、前妻に似た娘を遠ざけてしまっていました」
「・・・そんな時期が;」
伯爵様もつらい思いをしていたのが表情で分かった。
「しかし、昔にしがみついていては
今の家族に迷惑がかかると気づいたのです。
大切なのは昔ではなく今です。
昔にこだわっていては今の大切なものまで失ってしまう。
そう、娘や妻に気付かされました」
「大切なのは今ですか・・・」
確かに俺は亡くなったイレーヌを思うあまり、
今いるカミーユを見ていなかった。
・・・このままギクシャクしていては
カミーユとの絆を失ってしまうかもしれない。
「貴殿はカミーユ殿が大切ですか?」
「ああ、大切な娘です」
「でしたら、きちんとカミーユ殿を見てあげてください。
まずはそこからだと思います」
伯爵様の言葉に俺は『そこから』始める事を考えることにした。
そうだな、このままでは何も進まない。
「伯爵様、ありがとうございます。
娘とちゃんと向き合ってみたいと思います」
「そうですか。よかった」
俺は伯爵様にお礼を言った。
明日のライヴとやらに俺は行くことにした。
娘の晴れ舞台を見てやろうじゃねえか!!!
「王様、俺じゃなくて私は明日のライヴで
娘を見届けようと思います」
「そうだな、それがいい。
カミーユ殿も喜ぶだろう」
王様もリンゴ飴をかじりながら俺が吹っ切れた事を
静かに喜んでいた。
こうして、俺はこれからの一歩を踏み出した。
<ウィキ視点>
12月25日。
今日はお嬢様たちのライヴの本番の日だ。
すでにエリザベス王立公園の会場前では
ライヴグッツの物販が開かれてすごい行列が並んでいる。
俺は会場の裏手で今からやって来る陛下たちを出迎えるために待っていた。
すると、国章の紋が刻まれた白い馬車がやって来た。
馬車からは陛下たち王家一家とカミーユの父親らしき男が降りてきた。
陛下は無事、カミーユの父親を連れてきたようだ。
「ユーエリア殿の従者殿、出迎えご苦労であった」
「すでに、陛下たちの席は用意してございます」
俺は陛下に頭を下げつつライヴの特等席に案内した。
特等席は物見やぐらになっていて上の方から
ステージを見れるようになっている。
下で他のお客さんにもみくちゃにならないような配慮だ。
ちなみに雷森羅国の信長は
他のお客さんと同じように見るそうだ。
(それでもAブロックの先頭で見るらしいので特別扱い)
陛下たちはイスに座るとリラックスした雰囲気をしていた。
「そういえば、従者殿、そのグッツとやらは手に入ったのか?」
「そうですわwそのライヴグッツというのにも興味ありますねw」
「リックたちがプロデュースしたんだってね」
「どんな物なのでしょうか?」
「グッツ?何だ???」
陛下たち一家は興味津々でライヴグッツについて聞いてきた。
カミーユの父親はグッツというものが何なのか分からないのか
頭にはてなマークを飛ばしてた。
もちろん、陛下たちの分は確保してありますよ。
「持ってこさせますね」
パンパン
俺は手を叩くと、メイドのアンナとクレアと執事のアドバーグさんが
グッツの全種類を目の前のテーブルに広げさせた。
グッツの種類は
サイリューム(青、赤、緑、ピンク。4種類ランダム封入。500イエン)
ポスター(1000イエン)
リストバンド(白地に金の星のマークのリストバンド。1000イエン)
ホシ缶(星形の缶詰の中にクリスマスラバーブレス。1000イエン)
トリック麺セット(うどんと焼きそばのカップ麺。1000イエン)
メッシュバッグ(サンタの顔が書いてある。2500イエン)
マフラータオル(赤と緑のクリスマス仕様。2500イエン)
チケットケース(ゴシックなサンタのソリを引く
模様が描かれてある。3000イエン)
各バンドメンバープロデュースTシャツ(3500イエン)
ユーエリアTシャツ
(天使の格好をしたユーエリアのイラストがプリントされてる)
リックTシャツ(ベースを弾いてるトナカイのイラストがプリントされてる)
拓海Tシャツ(黒地に柊の葉っぱがスタイリッシュに印刷されているTシャツ)
雷信Tシャツ(漢字で『聖』と書かれた赤と白の日本っぽいTシャツ)
ヒデトTシャツ
(サンタの衣装を着た吸血鬼がデフォルメされたイラストがプリントされてる)
パンフレット(4000イエン)
ユーエリアプロデュース:天使のイヤリング(5000イエン)
リックプロデュース:トナカイのカチューシャ(3000イエン)
拓海プロデュース:銀のピックのネックレス(7000イエン)
雷信プロデュース:シンバル型ポーチ(4000イエン)
ヒデトプロデュース:吸血鬼のツノ付きクリスマスパーカー(5000イエン)
以上になっている。
「ほお、いろいろあるのだな」
「リックやユーエリア殿たちがポスターになっていますね」
「なんかカッコつけてるな;」
「普段より輝いて見えます;」
「吟遊詩人っていうのはこんな商品まで考えるのか;」
みんな、グッツを見て手にとって驚いているようだった。
まあ、この世界の人たちはそこまでグッツを作る吟遊詩人なんていないだろう;
(ちなみにポスターはロザンナ特製のスタイリッシュなレザーの
赤と緑のクリスマス衣装になっている)
「パンフレットも凝ってるな」
「あら、こんな写真いつの間に撮ったのかしら?」
「ん?リックたちの他に誰か写ってるな」
「女の子ですねwかわいいですわw」
「カミーユ!!!!」
陛下たちがパンフレットの中をパラパラと見だした。
中にカミーユが写ってるのを気づいたようだ。
カミーユは綺麗なクリスマスのサンタミニドレス姿で可愛く写っていた。
カミーユの父親はそれを見て驚いているようだった。
「カミーユさんは急遽ライヴ出演が決まったので
パンフレットしかグッツに参加できなかったのでございます」
「・・・そうなのか」
俺が使用人モードで丁寧に説明すると
カミーユの父親は少し嬉しそうにしてた。
頑固親父と聞いてたけど娘思いなんだな。
「ガンツ殿、せっかくの記念だ。
もらっておいたほうがいい」
「ありがとうございます」
陛下にパンフレットを渡され
カミーユの父親は大事そうにそれをカバンにしまった。
「公演までには時間がございます。
それまでに腹ごしらえとして
ユーエリア商会でランチをご用意いたしました。
ゆっくりとお楽しみください」
陛下たちのテーブルにユーエリア商会特製ランチを並べた。
お約束の日本食などが並べられていく。
ちなみにこれらの料理はニッキーが全部作った。
陛下たちは箸も最近、使い始めたようで、
器用にそれを使って食べ始めた。
カミーユの父親は箸に慣れてないのでフォークで食べている。
リラックスしたムードで俺はほっとした。
このままライヴも成功するといいけどな。
つづく
ガンツはライヴを見る決心をしたようですw
それとグッツはたくさんありますねw
アーティストはこういうライヴグッツをプロデュースするものらしいですw
次回に続きますw