第92話:リハーサル突入とカミーユの父の頑固さ
<リック視点>
俺は3日経って練習の成果をみんなに見せるため
音楽室でみんなと合わせる事にした。
「本当に大丈夫なのね?」
「おう!!やってみせるぜ!!」
ユーエに念を押されて俺はベースの弦に手を手を掛けた。
ベースの低い音が音楽室に響き渡る。
そして、俺は素早くコードを押さえまくった。
無事にベースソロを弾き終ると
ライシンのドラム音が加わり『ST●Y AWAY』が始まった。
ノリにノった俺らの演奏は無事に終える事が出来た。
「すごいじゃない!!本当に3日で完成させるなんてw」
「リック見直したぜ!」
「かなり努力したのだろうな指にマメがつぶれた跡があるな」
「これで全部クリスマスにやる曲は完璧だぜ!!」
「リックすごいわ!!」
みんなから褒められて俺は照れた。
寝ずにかなりがんばったもんなぁw
努力が報われてよかったぜw
「愛の力なのかしら?」
「そ、そんなんじゃねぇって言ってるだろ!!//////」
「そ、そうです!!リックとは友達になったばかりですし////」
ユーエが俺とカミーユを見てからかった;
それにカミーユが言ってる通り友達になったばかりなのに;
「でも、気になるんだろ?」
「リックにそこまで努力させるとはなぁ」
「影響があった事は間違いないだろう」
タクミとヒデトとライシンもニヤリとしながら
俺を見てそう言った。
確かに影響があった事は否定できないけどな;
「お、俺たち行く所があるんだった!!」
「そ、そうね!!」
俺とカミーユは居たたまれなくなってその場を立ち上がった。
「何?デートでもするの?」
「「「ほほう・・・・(ニヤリ)」」」
く、ユーエたち、まだ、からかってやがる;
「ちげーよ!!!!!!
カミーユの親にライヴに来てもらいに説得しにいくんだ!!」
「両親にあいさつしにいくの?」
「「って違う!!!」」
俺は慌ててカミーユ両親の説得に行く事を言った。
ユーエ!!両親にあいさつって何を想像してるんだよ!!!
俺とカミーユは声をそろえて突っ込んだ。
「ふふふふ・・・そういう事にしとくわw」
「カミーユの親に気に入られるといいな」
「最初の印象が大事だぞ」
「行ってこい。ライヴに来てくれるといいよな」
完璧にみんなに誤解されてるな;;;;;
俺は面倒になって適当に手を振り返した後、
カミーユと一緒に王都の2番街に向かった。
「カミーユの家はどこにあるんだ?」
「大通りの真ん中の宿屋が私の家よ」
カミーユの家は宿屋らしい。
俺はカミーユについて行くと
その宿屋は結構大きく人通りも多かった。
赤いレンガ造りで味のある感じの建物だった。
『赤い鳥の宿屋』と看板に赤い鳥の絵とともに書いてある。
俺たちは宿屋の中に入るとそこには濃い茶色の髭もじゃの男がいた。
「カミーユ帰ったのか」
「う、うん。ただいまお父さん」
どうやら髭もじゃの男がカミーユの親父らしい。
ぜんぜん、似てないぞ;;;;;
「ん?なんだ、そこの男は?」
「この子はリックっていうの。最近、友達になったの」
「よろしく;」
カミーユの親父が俺を見つけるとじっと見つめてきた。
カミーユに紹介されて俺は一応、あいさつした。
「ふむ、少年、良い筋肉してるな。
顔立ちもなかなかだし、宿屋の婿の候補としてはいい方か・・・」
「お、お父さん!!!////////」
どうやら親父さんは俺をカミーユの婿候補として勘違いしてるようだ;
カミーユは真っ赤な顔してるし;
「お、俺はカミーユの友達で;」
「なんだ、まだ恋人として進んでないのか?
カミーユはいい娘だぞ。さっさと告白せんか!」
親父さんは俺の背中をバシバシ叩いて豪快に笑った。
完璧に誤解されてるな;
「わ、私!!お父さんにお願いがあって来たの!!」
「なんだ?この少年に告白の橋渡しをしてほしいのか?」
「違うわ!!私とリックが今度、演奏会をするの!!
12月25日にエリザベス王立公園での演奏会に
お父さんも来てほしいの!!」
「なんだと?」
カミーユが思い切って親父さんにライヴの事を言った。
すると親父さんは眉を寄せて怪訝な顔をした。
「まだ、吟遊詩人なんて目指してるのか?
もしかして、そこの小僧もそうなのか?」
「そうよ!!リックはもういっぱしの吟遊詩人だわ!!」
カミーユの言葉に親父さんは渋い顔をして俺を見つめた。
なんか、ものすごく嫌そうな顔をしてるな;
「まぁ、バイトみたいなものだけど一応そうだぜ」
「ダメだ!!ダメだ!!ダメだ!!
カミーユは俺の宿屋を継ぐんだ!!!
そんな、吟遊詩人みたいな不安定な職業、俺は許さん!!
カミーユは渡さんぞ!!!」
カミーユの親父さんはカミーユに宿屋を継いでほしいみたいだな;;;
それに吟遊自身に対して偏見持ってそうだよな;;;
「お父さん、まだそんな事言ってるの?!
この宿屋が大事なのは分かるけど、
私の夢にまで口を出さないでよ!!」
「うるさい!!!!
この宿屋は亡きイレーヌと俺が大切にしてきた宿屋なんだ!!
潰させはしないぞ!!!」
「お母さんがまだ忘れられないのね!!
お母さんが生きてたなら
私の夢を応援してくれたはずだわ!!」
どうやら親父さんはカミーユのお袋さんとの思い出が詰まった
宿屋を潰したくないらしい。
カミーユのお袋さんは亡くなってたのか。
「親父さん」
「俺はお前に親父と呼ばれる筋合いはない!!!
ガンツだ!!」
俺が「親父」と呼ぶのをガンツさんは良しとしないようだ;
「じゃあ、ガンツさん。
今は夢はさて置いてライヴ、演奏会には来てほしいんです」
「なんで、俺がそんな演奏会などに・・・」
「カミーユの晴れ舞台を見たくないんですか?」
俺もガンツさんにライヴに来てもらうよう呼び掛けた。
俺の「カミーユの晴れ舞台」という言葉に
ガンツさんは眉を動かしちょっと揺らめいた。
「お父さん!!私、初めて演奏会するの。
夢が叶うのよ。
一番大切なお父さんだから見に来てほしいの」
「・・・」
カミーユの言葉にガンツさんは黙ったままだ。
「・・・俺は行かないかならな」
「お父さん!!!!」
「そんな演奏会なんぞちっぽけなものだろう!!
宿屋でお客さんの世話をした方がよっぽどマシだ!!!
出て行ってくれ!!!!!!」
ガンツさんは頑固で行かないの一点張りで俺たちを力ずくで追い出した。
うおっ!!筋肉質なのか腕づくで宿屋から出された;;;
「お父さんの分からずや!!!!!!」
「はぁ・・・。どうすっかな;;;」
カミーユはガンツさんの頑固さに怒りの声をあげた。
俺はため息をついて宿屋を見つめた。
まぁ、これで諦めたわけじゃなくて
何度も宿屋にガンツさんを説得しに行った訳だけど
行くとは一言も行ってくれなかった。
「はぁ・・・」
「カミーユのお父さんはうんと言ってくれないわけね」
ライヴまであと4日。
俺たちはエリザベス王立公園の野外の特設会場でリハーサルに突入していた。
もうすでに特設ステージは組み上がっていて、
ロザンナがデザインした衣装もできあがっている。
ダンサーとしてブルームテンペストサーカス団も参加するそうだ。
俺たちはそこで音合わせをしていた(結界で音漏れしないようしてある)。
ため息をつく俺にユーエは困った顔をしながら俺と一緒に悩んでくれてた。
「お父さん頑固ですから;;;」
「それにしても、宿屋の相続問題か・・・」
「カミーユの父上殿は
亡きカミーユの母上が忘れられないのだろうな」
「それでカミーユの将来について反対しているってわけか」
カミーユもため息をついていた。
タクミとライシンとヒデトも
カミーユとガンツさんの問題に苦い顔をしてた。
「こうなったら権力ね・・・」
「「「「「権力?」」」」」
ユーエの一言にみんな疑問に思った。
「こうなったらリックの父親になんとかしてもらいましょう」
「そうか、親父なら勅命が使えるな!!」
「ふむ、リックの父上はえんじぇるむ王国の国王であったな」
「無理やりにでも連れだそうって事か!!」
「まぁ、国王の命令なら断れないだろうな」
「え?え?どういう事????」
ユーエの提案に俺たちはいいアイデアだと顔を明るくさせた。
カミーユは分かっていないのかドギマギさせてた。
「あら?知らなかったの?
リックはセドリック・サムエル・エンジェルム。
この国の第2王子なのよ」
「ええええええええええええ!!!!!!!!!!!
お、王子様ですか?!!!!!!!!」
ユーエが俺の正体をバラすと
カミーユは卒倒して倒れた。
「ちょっ!!!カミーユ!!!!」
「ショックで倒れたぞ!!」
「そんなにショックだったのかしら?」
「・・・今まで知らなかったのが驚きなのだが;」
「まぁ、リックは見た目は王子様には見えないからな;」
倒れたカミーユを介抱しつつ
みんなは今まで知らなかった事に呆れてたようだった。
とりあえず野外の医療テントにカミーユを運んだ。
「い、今までご無礼をしてしまい申し訳ありませんでした!!!」
「いや、ホント今更だから・・・・;」
カミーユはテントで気が付くと俺に土下座する勢いで謝られた。
本当に今更だから;;;;;
「お、王子様;;;;」
「いや、リックでいいよ;」
「そんな失礼な!!呼び捨てなどできません!!」
カミーユに王子扱いされてもなぁ・・・・;
恐縮するカミーユに俺はどうしようと思った。
「カミーユ。リックはリックよ。
それ以上でもそれ以下でもないわ」
「そうだぜ、俺たちの仲間だって事は変わらないんだし」
「そうそう、俺も雷森羅国の
征夷大将軍の息子だしな」
「音楽の前には身分なんて関係ないんじゃないか?」
ユーエとタクミとライシンとヒデトに言われて
カミーユは落ちついたのか俺をゆっくり見つめた。
「リック、ごめんね取り乱したりして;」
「いいんだ。それより身体は大丈夫か?」
「うん、平気」
俺がカミーユにスポーツドリンクを渡すと
落ちついたようで微笑んでくれた。
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「それよりも、国王様に私のお父さんの事頼んで大丈夫かな?」
「まぁ、親父ならおもしろがってやってくれるだろうな。
うちの親父は夢を追う奴が大好きだからなw」
カミーユは国王であるうちの親父に頼んで大丈夫なのか不安がってたけど
うちの親父ならガンツさんをなんとかしてくれるんじゃないかと思う。
なんとしてでもライヴに来てもらえるようにしないとなw
俺はそう思ってニカっと笑った。
つづく
さて、カミーユの父親はライヴに来てくれるのでしょうか?
国王も動くみたいだし、なんか大ごとになってるな;
次回に続きますw