第90話:バンドのトリックスターの初練習
<リック視点>
クリスマスっていうお祭りをエンジェルム王国でする事になったぜ!!
親父も面白そうだって言って全面的に協力してくれるみたいだ。
それで、バンドっていう楽団をユーエとライシンとタクミとヒデトで
組む事になった。
今日はアークレイ伯爵家別邸でバンドの初練習だ!!
「バンド名は何にするの?」
「バンドって楽団の名前じゃないのか?」
バンドってそのままバンドだろ?
俺は不思議に思ってユーエを見た。
「バンドっていうのは楽団って意味だから
名前じゃないわ」
「ふ~ん、そうなのか」
バンドって楽団って意味なのか。
ユーエの前世の言葉って複雑だよな。
「どんな名前にするんだ?」
「どうせならカッコいい名前が良いよな!!」
「なんか当てがあるのか?」
ライシンとタクミとヒデトはどんな名前にするのか
ユーエに聞いてきた。
タクミの言う通りカッコいい名前がいいよな!!
「そうね~。
・・・『トリックスター』っていうのはどうかしら?」
「ん?何で『スター』なんだ?」
ユーエは『トリックスター』という名前を提案した。
なんで星なんだろう?
「そこにあるクリスマスツリーの試作品の
てっぺんの星を見て思いついたんだけど」
「それで『スター』なんだな」
ユーエの指差した音楽室の隅に飾られている
クリスマスツリーの上を見た。
たしかにクリスマスに飾る木の上には星があるよな。
「それにサプライズでバンドやるんだから
いたずら感覚で『トリック』を付けたの」
「それいいよな!!」
「『いたずら星』か南蛮風だとカッコよく聞こえるな」
「クリスマスらしくていいんじゃないか?」
ユーエの考えたバンド名に
タクミとライシンとヒデトも賛成した。
「じゃあ、バンド名は『トリックスター』に決まりね」
「バンド名も決まった所で練習始めるか!」
バンド名は『トリックスター』に決まった。
そしてタクミはみんなに楽器をそれぞれ配って
練習を始めた。
それにみんなになんか複雑な記号が書かれた
紙も配った。
「なぁ、タクミ。この紙はなんだ?」
「これはスコア、楽譜だな。
俺とユーエで演奏する曲を15曲ほど思い出して
スコアを再現した。
日本で流行ってた曲ばっかりだけどな。
ギターとベースはこのスコアに書かれている通りに
コードを抑えて演奏するんだ。
こんな風に」
15曲もやるのかよ;大変そうだな;
そしてタクミが軽くギターを弾いて見せた。
すげえ!!指があんなに複雑に動いてる!!
「難しそうだな;;;;」
「ギターは5弦あるけど、ベースは4弦だから
弾きやすいと思うけどな。
後でコードの押さえ方の種類を教えるから」
タクミがベースは簡単だって言うけど;
指が動くか不安だぜ。
「拓海、『どらむ』の楽譜の読み方がよく分からないのだが?」
「雷信様、これはですね・・・」
タクミはライシンにドラムの叩き方を教えていった。
左右にある金属の平たい2つのクラッシュシンバルや
手前の左にある太鼓のスネアドラムや
右にあるフロアタムや
スネアとタムの奥にある2つのトムや
ヘッドとリム(スネアの太鼓の部分とふち)の部分を
同時に叩くリムショットや
左にある小さなシンバルを向き合うように重ね合わせ、
これを水平にセットしてペダルの足で開閉したり
スティックで叩くシンバルのハイハットや
足でペダルを踏んで下の大きな太鼓を叩くバスドラムなど
タクミは次々と叩き方を説明していった。
「なんか、かなり複雑なのだな」
「ドラムはかなりやる事が多いですからね;;;
曲のやる分だけ覚えてくださればいいです」
タクミの説明にライシンはむむむと難しい表情をした。
うわ~俺のベースよりかなりドラムは難しそうだな。
ライシン上手く叩けるようになるかな?
「ユーエ、このスコアの中になんか聞いた事のない曲が入っているけど」
「ああ、これは私と拓海が作曲したクリスマス用の曲よ」
ヒデトがスコアの中に聞いたことない曲が入っているのを見つけた。
どうやらユーエとタクミが曲を作ったらしい。
「ちょっと弾いてみせようか?
拓海!」
「よし来た!」
ユーエとタクミがギターとキーボードで
クリスマス用の曲を一通り弾いて見せた。
拓海のギターとユーエのキーボードと歌声が響き渡る。
なんか、かわいらしい冬の曲って感じで
キラキラしている感じがした。
清らかな夜にサンタクロースがやってくる
そんな雰囲気の曲だった。
「すごいかわいらしい曲だな」
「綺麗で心が洗われるな」
「なんか演奏したくなった!!」
ヒデトとライシンと俺はユーエとタクミが弾いた曲に
心を奪われていた。
「作曲なんて久しぶりにやったから
どうかと思ったけど気に入ってもらえてよかったぜ」
「ついでに私が作詞したけど結構、馴染んだみたいで良かったわ」
俺らに褒められてタクミとユーエは照れていた。
2人とも改めて思うけど天才だよな;
いろんな事ができるなんてチキュウのニホンって国は
そんな奴らばっかりなんだろうか?
「なんかこの曲を聞いてやる気が出てきたな」
「そうだな、すぐ『どらむ』を覚えて
2人の演奏に追いついて見せよう!!」
ヒデトとライシンは2人の新しいクリスマスの曲に
刺激されたのか練習にやる気を見せてた。
「俺もがんばる!!!
よしっ!!ベースのコードを教えてくれ!!タクミ!!」
「よし、じゃあ始めるか!!」
俺もみんなに負けてられないな!!
タクミにさっそくベースを教えてもらって
練習に専念する事にした。
こうして、タクミやユーエに教えてもらいつつ
1週間は個人で曲を弾くのに慣れる事を目標にがんばった。
指にマメができたけど・・・なんとかある程度はコードを覚えた!!
よしっ!!みんなと合わせる程度には弾けるようになったぜ!!
<ウィキ視点>
お嬢様たちのバンドの様子が気になったので
アークレイ伯爵家別邸の音楽室まで見に行く事にした。
「お嬢様たちはどうしてるんだろうな?」
「気になる」
「そうよね、あれから1週間以上経つけど
音楽室に籠りっぱなしだし」
「そんなに根を詰めて大丈夫なのでしょうか?」
「心配にゃ;」
俺を含めイノーゼとノッレとキラと
ハイにゃんもお嬢様たちが気になるのか心配そうだった。
音楽室の前に行くとニッキーとマークスとロザンナがいた。
「音楽室って防音だから音が聞こえないもんな。
どうなってるんだろ?」
「どんな曲、やってる?」
「そうよね、気になるわ」
ニッキーとマークスとロザンナも音が聞こえないのが
気になるのか音楽室の前をうろうろしていた。
「ちょっと覗いてみようぜ!!」
「ちょっ!!ニッキー!!」
「邪魔しちゃダメ!!」
あまりに気になったニッキーは音楽室のドアを少し開けて覗こうとした。
それにぎょっとするロザンナとマークスだった。
ドアの隙間からはバンドの楽器の音が流れてきた。
なんか、合わせてる最中のようだ。
「何やってるのよ・・・;」
「うわっ!!ユーエ!!」
いきなり音楽室のドアが全開きになったので
ニッキーは驚いて尻もちをついた。
それをお嬢様は見て呆れていた。
「はぁ・・・・。
そんな所に居ないで入ったら?」
「お、お邪魔します・・・」
「ニッキー、カッコ悪い;」
「思いっきり不審者よね;」
びくびくするニッキーはお嬢様に言われて音楽室に入った。
それに呆れつつもロザンナとマークスも続けて入った。
ついでに俺たちも続いて入る。
「お、ウィキたち来たのか?」
「久しぶりだな」
「かれこれ1週間ぐらいぶりだよな」
「そうだよな、久々にみんなの顔見たぜ」
拓海と雷信とヒデトとリックを久しぶりに見た。
みんなそれぞれ楽器を持っている。
雷信は着物にドラムはちょっと合わないよな;
「どんな感じなんだ?」
「やっと、みんなで合わせるようになったところよ」
お嬢様たちはやっとみんなで演奏し始めた所だと言った。
「みんなの演奏見たい」
「そうよね、どれぐらいできるようになったか見たいわ」
「どんな曲なのかも気になるし」
イノーゼがお嬢様たちのバンドの演奏を見たいと言うと、
ノッレとロザンナも興味を示して見たいと言った。
「気になる!!気になる!!」
「僕も!!」
「そうですねユーエ先生方の音楽はどんなものなのでしょうか?」
ニッキーとマークスもテンションをあげて演奏を聞きたいと言った。
キラも興味津々だった。
「じゃあ、一通り合わせてみましょうか」
「じゃあ、雷信様、カウント3つでお願いします」
「分かった」
お嬢様がバンドの演奏を合わせてみようと言うと
拓海はドラムのカウントを雷信にするよう言った。
ドラムのカウントが始まると演奏が始まった。
「なんかラ●クとグ●イとT●Rの曲が中心みたいだな」
「ウィキ先生はこの曲を知ってるのですか?」
「まぁな、拓海とお嬢様のいた国で流行ってた曲だ」
キラにバンドの演奏の曲を知ってるのか聞かれて俺はうなずいた。
まぁ、封印されている間、日本のJ-POPやROCKは
一通り聞いているからな。
「カッコいい」
「そうよね、ヒデトの歌声がカッコいいわw」
「惚れぼれしちゃうwww」
イノーゼとノッレとロザンナはヒデトのイケメンな歌声に聞き惚れていた。
「悔しいけどカッコいいよな;」
「同意」
「これは斬新な音楽ですね」
「なんか音がすごい刺激的にゃw」
ニッキーは目をハートマークにしているロザンナを見て
ちょっと不機嫌になったがヒデトの歌のカッコよさは認めているようだ。
マークスもカッコいいのを納得して聞いていた。
キラはロックな曲を聞くのが斬新に感じているようだ。
ハイにゃんはバンドの大音量に刺激を感じているようだった。
一通り演奏が終わると、俺たちは拍手をした。
「1週間でここまで演奏できるなんてすごいな」
「カッコ良かったw」
「そうよねwクリスマスにみんなの前で演奏しても大丈夫そうね」
「これは盛り上がるわw」
「すごい好きにゃwww
演奏を真ん前で聞くと新しいプレイができそうにゃw」
俺を筆頭にイノーゼとノッレとロザンナは
演奏を褒めた。
ハイにゃんは大音量が気に入ったのか真ん前で聞いて
プレイに使いたいらしい;;;;
「確かにカッコよかったけど;
ある曲でなんか演奏が遅れている感じがしたな;」
「低い音、なんか変だった」
「そういえば、そうでしたね」
ニッキーは演奏に不備を見つけたのか指摘した。
マークスもそれを感じていたらしくうなずいた。
キラも思い出したようにそう言った。
「・・・ベースね;」
「うううう・・・このラ●クの曲だけは
かなり難しいぞ;;;;」
お嬢様を始め、みんながリックを見た。
どうやらリックのベースの音がみんなとついて行けてないらしい。
「ラ●クの曲のベースは日本でも1番難しいコードだからなぁ;
別名『歌うベース』って呼ばれててかなり難易度が高いんだ;」
「げ・・・;そうなのか;」
拓海が相当難しい曲だと言うとリックは苦い顔をした。
「リックだけは猛練習ね」
「うわ・・・;;;;;
俺、弾けるようになるかな;;;;」
「無理にでも弾けるようにさせるわ!!
なんだったら調教してもいいわよ!!」
「うわああああ!!!またスパルタかよ!!!」
お嬢様がムチを持って「猛練習ね」と言うと
リックは難易度の高さにちょっと気後れしていた。
クリスマスまで約3週間、リックは弾けるようになるのだろうか?
落ち込んでいるリックの目の前でムチを振るうお嬢様;
リック、後で差し入れするからお嬢様の調教に耐えろ;;;
俺はリックに合掌した。
つづく
リックはユーエリアの調教に耐えてベースを弾けるようになるのでしょうか?
なんか不安だわ;;;;
次回に続きます;