第89話:クリスマスに向けて
<ユーエリア視点>
夏も過ぎ今はもう晩秋になってた。
秋が過ぎれば冬がやって来る。
そう考えつつ鼻歌を歌ってた。
「あ、それラ●クの曲じゃん。
ハリ●リだっけ?」
「うん、あと1カ月したらクリスマスだし」
「クリスマスか。そういえば見た事あるな~」
私は前世の地球のL’バンド(仮名)の
クリスマスソングを歌ってた。
そういえば前世の兄に連れられてライヴ行ったな~。
拓海もさすがに某有名バンドの事は知ってるのか
懐かしそうにしてた。
ウィキも封印されてる間、
地球の様子を見ていたのでクリスマスは知っているようだ。
「優絵、『くりすます』とはなんだ?」
「そんな行事、エンジェルム王国にはなかったよな?」
「初耳だわ」
「どんな行事なの?」
「栗のお祭りにゃ?」
雷信とリックとノッレとイノーゼは
クリスマスを知らないのか聞いてきた。
ハイにゃんは栗を食べる祭りだと勘違いしているようだ。
「前世の日本の行事で
毎年12月24日と25日にやる
キリストという人の誕生祭よ」
「まぁ、キリストっていうか元々は宗教行事だけど、
日本ではただの年末の祭りになってるよな」
「日本ではそうだよな。カップルがバカ騒ぎしてたし」
私と拓海はクリスマスを大ざっぱに説明した。
ウィキもその様子を思い出したのか少し笑ってた。
たしかにバカ騒ぎするカップルが日本では多かったわね。
「キリシタンの祭りという事か?
そういえば父上に聞いたことあるな」
「大きい祭りか~おもしろそうだな」
「どんな事をする祭りなのかしら?」
「詳しく教えて」
「栗食べるにゃか?」
雷信は父親の信長からそれっぽい事を聞いているらしい。
リックとノッレとイノーゼはクリスマスに興味を持ったのか
詳しく聞いてきた。
ハイにゃんはまだ栗を食べる行事だと勘違いしてるようだ;
「まぁ、大体の家庭はその日に
ホールのケーキと大きなチキンの丸焼きなどを食べるわよね」
「わあ~!!!!ごちそうか~!!!それいいな!!!」
「ニッキー、食いしんぼう」
「ニッキーはお祭りより食欲優先よね;」
私がクリスマスの料理を説明すると
ニッキーはよだれを垂らして目を輝かせてた。
それをマークスとロザンナは呆れていた。
「それで、子供たちはプレゼントを貰うんだ」
「たしか、サンタクロースがプレゼントを配ってるんだったな」
拓海とウィキがクリスマスのプレゼントについて説明した。
「『さんたくろーす』とは一体何者なのだ?」
雷信はサンタクロースという名前がピンとこなかったらしい。
「クリスマスに赤い服を着たおじいさんの事よ
こんな感じで」
私はサンタクロースをイラストに描いて見せた。
一般的にかっぷくのよい白い髭で赤い服のサンタである。
「ほう、そんな人がいるのか」
「なんか、優しそう・・・」
雷信とイノーゼは私の描いたサンタに感心してた。
「たしか、こんな話があったわね。
ある所に貧しい女の子がいました。
ある日教会に行って毎日祈りを捧げていました。
『無事に歳を越せますように・・・』
それを心配した神父が年末の日
こっそり煙突から女の子の家に忍び込んで
暖炉に干してある靴下の中に金貨を入れたの。
それがクリスマスでプレゼントをもらう始まり」
「だから、今でもプレゼントは靴下の中に入れるんだよな」
私がクリスマスプレゼントの由来を語ると
拓海もその話を知ってたのかうなずいた。
「なんか感動的な話だな」
「女の子、お金もらえてよかった」
「神父さん優しいにゃw」
「最初はこんな感じで始まったのね」
「だからクリスマスは宗教行事なんだな」
雷信やイノーゼやハイにゃんやノッレやリックは
クリスマスプレゼントのエピソードを聞いて感心してた。
「プレゼントか~俺たちも欲しいよな!!」
「僕ら、まだ子供w」
「未成年ならプレゼントもらえそうよねw」
ニッキーとマークスとロザンナも
プレゼントが欲しいのか目を輝かせていた。
「クリスマス、ユーエリア商会で大々的にやりましょうか」
「それいいな!!うちの親父にも言って国をあげて
祭りをやるのもいいよなw」
私がユーエリア商会でクリスマスイベントをやろうと提案すると
リックは陛下に進言して国をあげてやってくれるみたいだ。
「なにか盛り上がる事をする必要がありそうね。
ブルームテンペストサーカス団のフロドたちにも
声をかけましょうか」
「そうだな、奴らなら芸も達者だし、
目立つ事やってくれそうだ。パレードさせるのもいいよな」
フロドたちならパレードをやってくれそうだし、
確かに目立ちそうね。
私とウィキはパレードをするフロドたちを想像しながら
彼らにもクリスマスイベントに参加させる事を決めた。
「他にもクリスマスでドカンと目立つ事は何があるだろうな?」
「そうね~」
リックは他にも何かクリスマスイベントで目立つ事をやりたいらしい。
私は頭を悩ませていた。
「お嬢様、今日のおやつはモンブランだ」
「お茶も持ってきました」
ヒデトが扉を開けて今日のおやつを持ってきた。
ヒデトは最近、アークレイ伯爵家別邸の使用人の仕事も兼任し始めた。
キラもときどき仕事を手伝ってくれている。
「ありがと。
ってこれよ!!!!!!」
「?お嬢様、どうしたんだ?」
「何かいいアイデアでも思いついたのか?」
「クリスマスでモンブラン食べるにゃか?」
私はヒデトを見つめていいアイデアを思いついた。
いきなり見つめられてヒデトは困惑している。
ウィキは私が何を思いついたのか興味津々で聞いてきた。
ハイにゃんはクリスマスケーキをモンブランにすると勘違いしてる;
いい加減、栗から離れればいいのに;;;;
「バンドよ!!!」
「「「「「「「バンド?????」」」」」」」」」
私のアイデアにみんな目を丸くした。
「つまり楽器の演奏よ!!
最近、商会ではギターやベースやドラムなんかを売り出したでしょ」
「あ、変な音が出るあれか」
最近商会ではエレキギターやベースやドラムを売り出した。
リックのあのエレキギターの音色を思い出したのか変な顔をしてた。
そんなに音が変なのかしら?
(ちなみにそれらの楽器は電気の代わりに魔力で動くよう改造してある。
各楽器には魔力供給の無属性の魔法陣が印刻されている。
自らの最小限の魔力で動くので吟遊詩人たちも
これらの新楽器に注目して売れ行きがいいらしい。)
「それでバンド。
つまり楽団を作ってステージで演奏するのよ!!」
「学園祭みたいなものか」
私のやりたい事を拓海は分かったらしい。
つまりバンドを作ってステージでライヴするという訳。
「で、何で俺を見つめていたんだ?」
「ヒデトならこの中で一番顔が良いし!!
ヴォーカルつまり歌わせれば盛り上がるんじゃないかと思って」
「そういえばヒデトは歌が上手かったな」
ヒデトはなんで見つめられてるのか疑問に思ったらしい。
私はヒデトにバンドのヴォーカルをやらせるのを思いついた事を述べた。
ウィキもヒデトの歌のうまさを思い出したのか感心していた。
ちなみに商会でカラオケ機を作ったので試しにヒデトに歌わせた事がある。
カラオケ機は地球にある市販のカラオケ機と仕組みは同じで、
有名な吟遊詩人の曲や地球のJ-POPやROCKなどが入ってる。
ユーエリア商会では最近、カラオケBOXを始めたわ。
ちなみに曲を知らない人のために歌入りのお手本も
カラオケ機には搭載されている。
「って人前で歌うのかよ!!ムリムリムリムリ!!!//////」
「え~?;絶対盛り上がると思ったのに」
ヒデトは顔を真っ赤にしながら顔をブンブン振りながら
嫌だと拒否した。
絶対盛り上がると思ったのに。
「わたし、ヒデトおにいちゃんのお歌聞きたい」
「そうよね、カラオケで聞いたけどあれはイケてたわ」
「イケメンなら何やっても絵になるはずだしw」
イノーゼとノッレとロザンナはヒデトの歌が気に入ったのか
ぜひクリスマスでも歌ってほしいと言った。
「そうだよな、クリスマスに盛り上がるのはこれしかない!!」
「演奏会か。それもいいよな」
「僕も見たい」
「そうだな!!俺も賛成だぜ!!」
「僕も見たいですね」
「ハイにゃんもにゃ!!」
「多数決で決まりだよな(ニヤリ)」
拓海も立ち上がってヒデトに歌わせる事を同意した。
雷信やマークスやニッキーやキラとハイにゃんも賛成らしい。
ウィキはニヤリとヒデトに笑いかけた。
多数決で賛成にもっていくつもりらしい。
「歌わないと給料を減給させるわよ?(含笑)」
「はぁ・・・。
分かったよ。歌えばいいんだろ」
含み笑いの私のとどめの一言でヒデトはバンドの
ヴォーカルをやってくれる事が決まった。
「ヴォーカルは決まったけど。
後はギターとベースとドラムね。
欲を言えばキーボードもほしいわ」
「俺がギターやろうか?
高校の文化祭でもやってたし」
「そういえば、そうだったわね」
拓海がギターをやってくれるそうだ。
そういえば高校でも1年の時、バンドの演奏をやってたわね。
「後はベースとドラムとキーボードね」
「『どらむ』というのは太鼓だったな。
祭りと言えば太鼓だしな」
「普通の太鼓より特殊だけどね;」
雷信はドラムに興味を持ってるようだ。
前に商品のドラムを見せた時にも興味を見せてたわね。
「じゃあ、俺が『どらむ』をやろう。
練習すれば何とかなるだろう」
「ドラムは雷信ね。
後はベースとキーボードね;」
ドラムは雷信がやってくれるみたいだ。
あとはベースとキーボードね。
「俺がベースやる!!」
「ってリック。ベースって難しいわよ;
ギターよりはマシだけど」
「ユーエ、雷信だってドラム初心者だろ。
俺だって目立ちたいし」
リックがベースをやると立候補した。
リックは目立つためにベースがやりたいらしい;
「はぁ・・・分かったわ。
やるからには猛練習よ!!」
「よしっ!!俺はやるぜ!!」
こうしてベースはリックに決まった。
リックは決まってうれしいのか燃えていた。
「残ったのはキーボードね。
これは私がやるわ。
ピアノの演奏は前世も今生でもやってたし」
私は前世の子供の頃はピアノ教室に通ってた。
今生でもピアノを商会で作ってときどき弾いてるし。
「じゃあ、クリスマスに向けて特訓だな!!」
「ふむ、全力を尽くそう」
「最高の演奏にしてみせるぜ!!」
リックと雷信と拓海はバンドに燃えていた。
「なんか、どうなるか不安だな」
「まぁ、なんとかなるんじゃないの?」
そんなリック達を見てヒデトは不安に思ってた。
まぁ、私はなんとかなると楽観視してた。
ふふふふ・・・特訓して調教して無理にでもやらせるわよw
私はムチを握りしめつつ今後の特訓を楽しみにしていた。
つづく
なぜだかユーエリア達は
クリスマスにバンドでライヴする事になりましたw
こんなんで上手くやれるのだろうか?
次回に続きますw