第84話:灼炎の塔内部
<ユーエリア視点>
灼炎の塔の中に入ると、
そこは火の魔導石で全体が作られていた。
優美な細身の円柱による回廊がいくつも重なっていて、
螺旋階段で上へ登れるようだ。
内装は赤く光り輝き装飾が美しく、
上へ行く螺旋階段も火の魔導石で輝いていた。
ゴッホレット火山の火の大精霊の遺跡の螺旋階段の造りとほぼ同じだった。
塔自体は重心をできるだけ内側に落とすよう工夫されているようで
それで建物自体が倒れないよう保っているみたいだ。
「どこにフレアとビオラはいるのだろうか?」
「皇帝、上からとてつもなく強い火の魔力を感じます。
たぶん、そこに2人はいるのでしょう」
「これは最上階だな」
フレアとビオラがどこにいるのか皇帝は階段の上を見上げて言った。
私とウィキは最上階の方角からとてつもなく強い火の魔力を感じ取っていた。
たぶん、最上階にフレアとビオラはいるんだろうね。
「水の魔力も感じますね。
おそらく塔のてっぺんで国中の水を魔法で集めているのでしょう」
ウンディーネは国中の水に含まれている
マナ(魔力の素)を感じ取ってるようで、
塔のてっぺんからそれらが伝わってくるようだ。
「早く登りましょ!!ビオラを助けないと!!」
「それにフレアも止める・・・」
リンカとレイナは2人が心配なのか一刻も早く最上階へ行くよう促した。
「よし、行くぞ!!!」
皇帝も気持ちも同じなのか駆け足で螺旋階段を登りだした。
螺旋階段を登ると火山の時と同じように
魔力や気力が吸い取られている感じがした。
「・・・うわっ;火山の時と同じように疲労感が;」
「そうね、かなりキツいわ;」
「・・・つかれる」
「ハイにゃんも疲れたにゃ;」
リックとノッレとイノーゼはまた疲労し始めたのか苦しそうだった。
ハイにゃんもまだ5階なのにかなり疲れた表情をしている。
「これが後、25階も続くなんて辛いですね。
最上階に着いた時に倒れそうです」
「おそらく、その側室と戦うことになるだろうから。
戦う前にバテたらヤバいよな;;;」
螺旋階段のキツさに最上階にたどり着いた時に
バテるのではないかとキラとヒデトは不安を覚えていた。
「これじゃあ、戦う前にグロッキーになるぜ;;;」
「すぐ、倒されそう」
「・・・これじゃ、水を取り返す前に倒されてしまうわ」
ニッキーとマークスとロザンナもヤバさを感じ取ってるのか
疲労感に危機感を持ってた。
「お嬢様、どうにかならないのか?」
「そうね;結界でも張るしかないわね。
『ガードフィールド』なら外からの魔力をシャットダウンできるから
少しは和らぐだろうし」
ウィキもキツいのか私にどうにかならないかと相談してきた。
私は『ガードフィールド』でみんなを覆うと少しは疲労感は和らいだ。
「少し身体が和らいだな」
「けど、まだ吸い取られてる感じがする;」
雷信と拓海も疲労していたが結界の魔法で少しは楽になったようだ。
けれど、まだ螺旋階段に魔力や気力を吸い取られている感じが残ってるようだ。
「さすが、火の大精霊様の塔だけあって
侵入者に対する罠も厳重だな・・・;」
「・・・火山の時といい階段が嫌いになったわ;」
「つらい・・・;」
皇帝は改めて塔の螺旋階段の防衛の罠に感心していた。
リンカは階段が嫌いになったようだ;
レイナはまだ辛いのか足取りが重たくなってた。
「シンニュシャ!!シンニュウシャ!!ハッケン!!」
「な、なんだあれは!!」
「ロボットみたいだな」
リックが目の前に現れた敵を見て声を上げた。
拓海は赤い光沢のロボットが複数現れた事に驚いていた。
どうやらロボットのカタコトの言葉から警備用のロボットっぽい。
「カラクリの人形か!!」
「たぶん、古代の物」
雷信は刀を抜いて警戒していた。
マークスはロボットを見て古代の時代に作られたものと推測していた。
「シンニュウシャ!!ハイジョ!!ハイジョ!!」
「「「「「ハイジョ!!ハイジョ!!!」」」」
「来るぞ!!」
赤いロボット達は私たちを侵入者とみなしたのか襲いかかってきた。
ウィキが戦闘態勢に入るよう声をかけて私たちはロボットたちに応戦した。
「シンニュウシャ!!ハイジョ!!」
「うるさい!!!俺らは行かなきゃならないんだよ!!」
「そうよ!!どいて!!」
「邪魔・・・」
皇帝一家全員でロボットたちを殴ったり
切り飛ばしたり氷で凍らせながら退けていった。
さすがにレオンバロン皇国のトップの実力のある王家の人達だから強いわね。
「俺らも負けてられないぜ!!!『散雨飛沫』!!」
「そうね!!『ブロックバレット』!!」
「負けない!『レインアロー』!!」
リックとノッレとイノーゼも皇帝たちに刺激されたのか
剣や魔法でロボットたちを攻撃して次々と撃破している。
「このまま突破するぜ!!!」
「機械、邪魔!!」
「どきなさい!!このポンコツ!!」
ニッキーとマークスとロザンナも勢いに乗って
剣でロボットたちを切り捨てて先へ進んだ。
「ちまちまやってたらキリがないぜ!!!
『ブラッドソードレイン』!!」
ヒデトが血で作りだした剣を複数く中で落下させて
ロボットたちを串刺しにした。
「やるわね!!
じゃあ、私も『ツナミウェーブ』!!!」
私は水魔法で津波を発生させて前方に押し出した。
すると次々とロボットたちは津波に飲み込まれていった。
「さすがお嬢様だな!!
この隙に一気に駆け上がるぞ!!!」
「階段の疲労は僕のポーションやマジックポーションで
治します!!気にせずあがってください!!」
ウィキは私の魔法を見てこの隙に階段を駆け上がるよう言った。
キラも薬類で援護してくれるらしい。
私たちは一気に螺旋階段を駆け上がった。
「なんか開けた所に出たわね」
「窓からはすごい眺めにゃw」
「あれ、エレベーターじゃないか?」
なんか広い開けた部屋に出た。
かなり登ったから最上階に近いのだろうけど。
ハイにゃんは窓から遠くの景色を見ていた。
すると、拓海が指差す方向にエレベーターらしき物があった。
「拓海、『えれべーたー』とは何だ?」
「簡単に言うと昇降機です。小さい箱の部屋に入って
それ自体が吊り上げられて上へ行く仕組みです」
「ほう、カラクリの部屋か。そんなものがあるんだな」
雷信はエレベーターを知らないのか拓海に聞いていた。
エレベーターの仕組みを説明されると雷信は珍しいのか感心していた。
「上へ行くには乗ったほうがいいな。
って起動してないな;」
ウィキはエレベーターを見ると電気が通ってないのか
ぴくりともエレベーターは動かない。
横のボタンを押しても反応がなかった。
「どうやったら動くんだ?」
「ん?ここにマニュアルの本があるわね」
皇帝も動かないエレベーターに困ってた。
すると、私は近くにある本棚に
エレベーターのマニュアル本があるのを見つけた。
ぱらぱらとめくって読むとどうやらエレベーターを動かすには
充電器ならぬ充魔器に魔力を充填させる必要があるらしい。
「充魔器ってこれか?」
ニッキーが充魔器を見つけた。なにやら大きなU字型の鍵の形をしている。
これをエレベーターの穴に差し込むと魔力を充填できる仕組みらしい。
「マニュアルによると特定の魔力でないと充填されないのだそうよ。
ロボットに使われている魔力を込める必要があるって」
「じゃあ、下に戻る必要があるわね」
「早く充填してあがる・・・」
私がそう説明するとリンカとレイナは下の階段へ向かった。
私たちも充魔器を持って下に戻った。
戻るとロボットがまた発生したのかうようよたむろっていた。
「どうやって充填するんだ?」
「倒してすぐロボットの残骸に充魔器を触れさせるといいらしいわ」
ウィキにどうやって充填するのか聞かれ
マニュアルに書いてあった事を説明した。
「じゃあ、さっさと倒そうぜ!!」
「手分けしてロボットを倒しましょ!!」
「すばやく集める」
リックとノッレとイノーゼは武器を持ってロボットを手分けして倒し始めた。
他のみんなもロボットを倒した。
そしてロボットの残骸をひとまとめにして山積みにした。
「充填するわね」
私は充魔器をロボットの残骸の山に触れさせると。
充魔器のメーターがすぐフルになった。
これで充填完了したみたいだ。
私たちはすぐにエレベーターのある部屋に戻って
充魔器をエレベーターの穴に差し込んだ。
するとぶううううんん!!と稼働して低い音が響き渡った。
エレベーターが動くようになったようだ。
「早く乗り込むぞ!!」
「一刻も早くビオラを助けないと」
「フレアを止める・・・」
皇帝一家がいち早くエレベーターに乗り込むと
私たちも続いてそれに乗り込む。
大人数でも入れる広い作りのエレベーターで良かったと思う。
それでエレベーターは動き始めた。
どうやらこのエレベーターは最上階の屋上につながっているらしい。
チンっと音が鳴ってエレベーターから降りると最上階の屋上についた。
「フレア!!!!!」
「ビオラがなんか水の中にいるわ!!」
「フレアの横に誰か知らない人がいる・・・」
「あれは魔族か?」
屋上ではビオラが空中に浮かんだ国中から集めた水の中にいた。
皇帝とリンカはそれを見て顔を曇らせた。
フレアはその目の前にいて今も水を集めているようだった。
なんか特殊な魔道具のロッドを使って集めているようだ。
見たところ複雑な魔法陣の羅列がロッドに刻まれてる。
フレアの隣に誰か知らない男がいるのをレイナは発見した。
どうやら黒髪に赤い目に大きな角で魔族のようだ。
ウィキは顔をしかめて男を見た。
「おや・・・誰か来たようだな」
「ライオネル様、それにリンカとレイナ・・・来たのね。
それに外交団も一緒か」
フレアと謎の男は私達に気づいてこちらを見た。
辺りに緊張が走った。
なんでフレアは魔族と一緒にいるのかしら?
私は疑問に思いつつも拳を握りしめて警戒していた。
つづく
どうやら黒幕は魔族っぽいです;;;;
なにが目的なのでしょうか?
次回に続きますw