第80話:ビオラの灼熱病とゴッホレット火山
<リンカ視点>
医者だと言うキラさんを連れて、
ユーエリアたちと一緒に弟のビオラの部屋に入った。
ビオラは部屋のベッドで横になりながら本を読んでいた。
だけど、元気が無くてキツネのしっぽが垂れていた。
ビオラは私と母親が違い、お父様と側室のフレア様の子供だ。
半分しか血がつながってないとはいえ、私はビオラを大切に思っていた。
「お姉ちゃん」
「ビオラ、かき氷持って来たわ」
私はビオラにかき氷の入った器を渡した。
ビオラはまだ熱があるのか顔を真っ赤にしていた。
「ありがと」
そう言ってビオラはかき氷を食べ始めた。
しかし、ビオラの体温で氷がすぐ解け始めた。
「・・・溶けちゃった」
「あとでもう一個持ってくるから;」
「これは・・・」
かき氷が溶けてしゅんとしているビオラを私は撫でた。
すると、キラさんは何かはっとした表情をしていた。
「これは灼熱病です。
ビオラくんは体内の火の魔力を
コントロールできずにいます。
なので、体温でさっきのかき氷が溶けたのです」
「えっ!!僕は日射病じゃなかったの?;」
「そんな病気だったなんて」
キラさんの説明でビオラと私は驚いた。
ビオラがそんな病気にかかってたなんて。
「ど、どうしたら治るの?」
「病気の治療には打ち消し火の薬草を
煎じて飲ませる必要があります。
早めに飲ませないと身体が焼けただれる可能性があります;;」
「そんな!!!!!」
ビオラが恐る恐るキラさんに聞くと。
治療には打ち消し火の薬草を飲ませないといけないそうだ。
そうしないと身体が焼けただれるだなんて!!!
私はそれを想像して顔を真っ青にした。
「キラ、その打ち消し火の薬草はどこに生えてるの?」
「確か、ゴッホレット火山に生えているはずです」
ユーエリアがキラさんに打ち消し火の薬草の生えている場所を聞くと、
ゴッホレット火山にあるらしい。
「その火山、私の国にあるわ!!」
ゴッホレット火山はレオンバロン皇国の真ん中にある火山のはず。
私はすぐその場所に行かないと!!
「じゃあ、その薬草を取りに行きましょう。
私たちが取って来るわ」
「ビオラたんを助けるにゃ~」
「決まりだな、行って薬草を早く取ってこようぜ」
「僕も行きます」
「みんなで行った方がいいな」
どうやらユーエリアたちが薬草を取って来てくれるらしい。
でも、私は待ってるだなんてできないわ!!
「私も行くわ!!!」
「そうですね、打ち消し火の薬草を手に入れるには
ボーボー草を打ち消し火の薬草に変化させないといけませんからね。
水の大精霊並みの大きな魔力と少しの氷の魔力が必要ですから、
リンカ王女様に手伝ってもらいましょう。
氷の魔法も使えるみたいですし」
私が行くと言うとキラさんも同意してくれた。
薬草を手に入れるには私の氷の魔力も必要らしい。
「決まりね。明日、そのゴッホレット火山に行きましょう」
「ビオラ、待っててね。すぐ薬草を取ってくるから」
「うん、待ってる」
こうして私たちはゴッホレット火山に行く事になった。
ビオラは頷いて待っててくれるみたいだ。
待っててね。すぐ薬草を取って元気にしてみせるから!!
<ユーエリア視点>
翌日、私たちはレオンバロン皇国の中心にある
ゴッホレット火山に向かった。
火山は活火山なのか熱気がものすごく伝わってくる。
私たちは風魔法で飛んで上空からその火山を見つめていた。
「うわっ!!噴煙が山頂から出てるわね」
「上空から山頂に降りるのは危険だな。
火山の中腹に降りよう」
私は噴き上がってる火山の煙に顔をしかめた。
ウィキのアドバイスで私たちは火山の中腹に降り立った。
「にゃんか、岩がごろごろしてるにゃ;」
「岩山の火山かよ;」
「なんか地面が熱いよ」
「地熱があるみたいね」
ハイにゃんとリックは火山の岩山をしげしげと見ていた。
どうやら地熱があるみたいでイノーゼとノッレは
地面の温かさを感じていた。
「なんかマグマが固まって火山は大きくなったそうよ」
「ほう、そうなのか」
「富士山と同じなんだな」
リンカの説明に雷信と拓海は感心していた。
どうやら地球の富士山と同じ仕組みで火山は大きくなったらしい。
拓海はその事を思い出して山頂を見つめた。
「で、その薬草ってのはどこにあるんだ?」
「岩ばかりで雑草さえ生えてないわ;;;」
「草、ない」
ニッキーは薬草を探してきょろきょろしたが
岩だらけで草一つ生えてない。
ロザンナとマークスは雑草すら生えてない地面を見てため息をついた。
「たしか、打ち消し火の薬草の元になる、
ボーボー草は山頂付近に生えているはずと
医学書で読みました」
「山頂か・・・」
キラは薬草の場所を言うと、
ヒデトは山頂を見つめて顔をしかめた。
「さっき上から見たけど山頂は
マグマが溜まってるらしいから危険だわ;;
でも、行くしかないわね」
「いざとなったら俺らの魔法で結界を張って防御するしかないな」
「がんばる」
山頂はマグマが溜まっているのを上空からさっき見た。
しかし、行くしか薬草を取る手段はない。
ウィキとイノーゼがいざとなれば無属性魔法の結界で
防御してくれるらしいけど、油断はできないわね。
「じゃあ、行きましょう。
細心の注意を払って進むわよ」
私たちは周りを警戒しながら
火山を登る事にした。
火山の岩山はゴツゴツしているのか
登ると体力を消耗した。
「結構、キツいな;;;」
「この岩山、足にくるわね;」
「足が熱い」
リックとノッレとイノーゼは
地熱が足から伝わってくるのか
暑さに四苦八苦してた。
「ぬ、敵か?」
「岩のモンスターか!!」
岩に擬態していたのか
岩のゴーレムが襲いかかってきた。
それを雷信と拓海が切り捨てる。
「どんどん来るわ!!!」
「げっ、この辺り全部ゴーレムかよ!!」
「ゴーレム、いっぱい」
岩のゴーレムは100体以上いた。
ドンドン押し寄せるゴーレムに
ロザンナとニッキーとマークスは嫌な顔をした。
「多すぎる!!!逃げろ!!」
「走るわよ!!」
あまりに敵が多すぎるため私たちは
走って逃げて火山を登って行った。
ウィキと私は先頭を走って逃げた。
すると、途中で岩でできた古代の
ストーンサークルのようなものが見えた。
私たちはそこを突っ切ろうとしたその時・・・。
シュン!!
ストーンサークルの中に入った私たちは
どっかへ飛ばされたみたいだ。
「・・・ここはどこ?」
「そうか・・・!!
この火山は火の大精霊の領域だったんだった」
「暑いにゃ・・・・;」
私たちは見慣れぬ古代の遺跡の中に飛ばされた。
遺跡のいたるところにマグマが流れている。
ウィキの言葉からここは火の大精霊の領域らしい。
ハイにゃんはマグマの熱気から元気を失ってた。
水猫だから居心地が悪いのだろう。
「ここの建築様式、2000年前のもの」
「って事は古代の創世記時代の物って事かよ;」
「間違いない、ここは火の大精霊の遺跡だ。
火山の内部だなここは」
マークスは遺跡の建築様式から創世記の物だと推測した。
それを聞いたリックは驚いて、周りを見渡した。
所々、前にシンフォニア教国の地下古代遺跡と似ている。
ウィキはここが火の大精霊の遺跡だと確信した。
火山の中に私たちはいるらしい。
「なあ、ユーエ。『サーモコントロール』の
魔法が効いてないんだけど;」
「そういえばそうね;
マグマが近すぎて魔法の効果が薄れてるんだわ;
さすがにマグマがこんなに近くにあると魔法は効かないわ」
「・・・また暑さに苦しむのか;」
ニッキーは私から気温調整の魔法の効果が
無くなった事を知ると肩を落とした。
「ここは山頂と繋がっているのでしょうか?」
「たしか、この遺跡にもボーボー草はあったはずだぜ;
ただし、火の大精霊のいる場所だけどな」
「げ、その大精霊と会わなくちゃいけないのかよ」
キラは遺跡を見て山頂に繋がっているか聞いた。
ウィキによるとここにもボーボー草はあるらしい。
ヒデトは大精霊と会う可能性に戦慄していた。
「気の良い大精霊だといいのだがな;」
「でも、火だぜ;熱血系とか短気な性格だったら
イヤだな・・・;」
「その通り、火の大精霊は暑苦しい奴だ;;;」
「・・・うへ;;;;」
雷信は火の大精霊がどんな奴か案じていた。
拓海は火の大精霊の性格を想像した。
ウィキによるとどうやらその大精霊は暑苦しい性格のようである。
それを聞いた拓海は嫌そうな顔をした。
どっかの暑苦しい元テニス選手を想像したのだろう;;;
「ともかく進むわよ;;;
遺跡に薬草があるなら好都合だわ。
大精霊に頼んで分けてもらいましょ」
私たちは薬草を求めて
その火の大精霊のいる場所に向かう事にした。
遺跡の内部を進むと移動する動く台があった。
「ここに乗らないと進めないみたいね」
「下にマグマが流れてるぜ;;;」
「落ちたら死んじゃうわね」
私たちはその動く台の上に乗って
マグマの上を進んだ。
下のマグマを見て熱いのか
ニッキーとロザンナは怖がってた。
その動く台の上に乗りながら所々、進んでいくと
所々に燭台を見つけた。
それに火をつけないと先に進めないらしく、
門の前で台は行ったり来たりしていた。
「『フレイムショット』」
私は火の魔法で燭台に火を付けると門が開いた。
この調子で同じような仕掛けが10か所ほどあったが
順調に先に進んでいった。
動く台のゾーンが終わると
両脇にマグマが流れる一本道があった。
そこを進んでいくとどうやらマグマが湧きあがって
くるのか背後からマグマが押し寄せてきた!!
「逃げるわ!!みんな走って!!!」
「うわっ!!熱っ!!」
「マグマ怖いにゃ!!!」
私はみんなに逃げるよう促した。
ウィキはマグマの熱気を浴び熱がっていた。
ハイにゃんもさすがに襲ってくるマグマに恐怖していた。
「死ぬ気で走るぞ!!」
「のみこまれるのイヤ;;」
「ここで死ぬなんてごめんだわ!!」
リックとイノーゼとノッレも
死ぬ気で走って逃げた。焼け死ぬのなんて嫌よね。
「あそこが坂になっているぞ!!」
「みんな!!駆け登れ!!」
雷信が坂になっている所を見つけて叫んだ。
拓海の叫びでみんなそこの坂を駆け登った。
「た、助かったわ・・・;」
「死ぬかと思いました」
「俺、初めて遺跡を嫌だと思った」
坂を駆け登りマグマは上がって来れないのか助かった。
リンカとキラとヒデトは息を切らせて助かった事に安堵してた。
ヒデトは遺跡が嫌いになったらしい。
「なぁ、あの上。なんか赤い水晶がたくさん生えてるぜ」
「綺麗・・・」
「まるで、宝石」
「ホント、色違いだけどウンディーネの聖域みたいだわ」
ニッキーの指摘で上を見上げると螺旋階段の上に
赤い水晶、たぶん火の魔道石がたくさん生えていた。
ロザンナとマークスはそれに見とれていた。
まるで水の大精霊のウンディーネの聖域に似ている。
「そこに薬草があるのですか?」
「たぶん、あるぞ」
「じゃあ、行きましょう。
さっさと薬草を取って暑苦しい遺跡から出るわよ」
キラはウィキに薬草があるか聞くとウィキはあると答えた。
そうと決まれば、さっさと上に登って薬草を取ってきましょう。
熱いの嫌だしさっさと取って出るわよ!!
私たちは螺旋階段を上って上へ行く事にした。
つづく
ビオラの病気に効く薬草を取りに
ゴッホレット火山に行きましたw
どうやら火山内部は遺跡みたいだし;
次回に続きますw