第79話:ラオニール城の宴
<ユーエリア視点>
模擬戦も終わったので私たちは皇帝のもてなしで
宴に参加することになった。
どうやら王族やお城の騎士たちも宴に参加するらしい。
宴はラオニール城内の大広間で行われ、
レオンバロン皇国ではテーブルやイスはなくて
鮮やかな色の敷物の上に座り、
そこで食べ物を食べたりするらしい。
食べ物はカプサと呼ばれる黄色に色づいた麦飯をお皿に敷き詰め、
その上に羊の肉と川魚を豪快に載せた料理や
フムスという料理は豆にニンニク、レモン汁、
ゴマペースト、オリーブオイル、塩を加えてペースト状にしたもので
ナン(小麦粉を練ったパンみたいなもの)につけて食べるらしい。
串に刺さった巨大なタンドリーチキンに似た食べ物や
シュワルマと呼ばれる棒にくっつけた肉塊の表面を焼き、
長いナイフで削ぎ取った物を薄い生地のクレープで包んだものや
ファラフェルという何かの穀類を丸い形にして揚げたものや
コロッケに似ていてナンに巻いてサンドイッチにして食べるそうだ。
スパイスをブレンドして野菜や肉で煮込んだ
カルーと呼ばれる料理などが並んでいた。
(ちなみにカルーはそのまま地球のカレーと同じだった)
「ははははは!!エンジェルム王国の外交団が来た祝いの宴だ!!
どんどん食べてくれ!!」
ライオネル皇帝がそう言うと一斉にみんな料理を食べ始めた。
「結構、ボリュームのある料理が多いわねw」
「まさか、カレーを食べられるとは思わなかったな。
ここではカルーって名前だけど」
私たちは目の前の料理を見て特色のある料理だと思った。
拓海はカルーを見て、カレーを思い出しながら豪快に食べてた。
「このカプサという麦飯はうまいなw」
「ホントだ!この羊の肉と魚のジューシーさがたまらないぜw」
「今度、ご飯で試すのもいいかもな」
「うまうまにゃw」
雷信とリックとウィキとハイにゃんはカプサを食べてるようだ。
ウィキが言うようにお米のご飯で作ってみるのもいいかもしれない。
「このパンひらべったい」
「ナンっていうんですって。このファラフェルのコロッケもおいしいわ」
イノーゼとノッレは初めて見るナンをファラフェルに包みながら食べてた。
時折、フムスに付けて食べてる。
「このチキンもおいしいですw」
「かなり焼き込まれていて肉汁が出てるな」
キラとヒデトはタンドリーチキンを食べている。
時々、串に刺さったシュワルマを削いで食べてるみたいだ。
確かに肉汁がジューシーである。
「タクミ、そのカルーっておいしいのか?」
「ニッキーも食べるか?」
「よしっ!!食べる!!」
タクミがカルーを食べてるのを見てニッキーも食べてみようと
それを口に入れた。
「どれどれ?うっ!!!
辛ーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!」
「ニッキー、口、火吹いてる」
「ちょっ;;だれかお水持ってきて!!」
「辛そうでうらやましいにゃw」
どうやらニッキーにはカルーは辛かったらしい;;;
それを見てマークスとロザンナは慌てた。
ロザンナは水を持ってくるよう言うが誰も持ってこない。
ハイにゃんはニッキーが辛さで苦しんでるのを
うらやましそうに見つめてた。
「あ、すまない;;;今、国は水不足で日々の水にも困っておるのだった」
「・・・!!!じゃあ、俺、ずっと辛いまま?;;;;;;」
どうやら水はないらしい。皇帝の言葉にニッキーは真っ青な顔をした。
「仕方ないわね・・・・;;;;;
『水の大精霊召喚!!いでよ!!ウンディーネ!!』」
「呼びましたか?」
私は水の大精霊のウンディーネを召喚した。
そして収納魔法の空間の中から巨大な樽を床に置いた。
レオンバロン皇国の人たちは突然現れたウンディーネに目を丸くした。
「ウンディーネ、綺麗な水をこの樽の中にいっぱい入れて」
「分かりました」
私はウンディーネに命じて樽の中に水をいっぱい入れた。
その樽の水をコップですくって入れてニッキーに差し出した。
「はい、水」
「水!!!水!!!」
ニッキーは慌ててコップの水をごくごく飲んだ。
勢いありすぎて時々、水がこぼれてるし;
そんなに辛かったのかしら?
「あ~辛かった;;;;
ユーエ、ありがとな;;;
こんな時、ユーエが大精霊と契約していてよかったと思うぜ」
「ユーエリア殿は水の大精霊と契約しているのか?」
ニッキーは改めて私の力に感謝しているようだった。
すると皇帝は私が水の大精霊と契約してるのにかなり驚いていた。
「はい。偶然、ウンディーネと出会いまして、その時に」
「おお!!さすが水の国エンジェルムだな!!
ユーエリア殿、後で大量に水を出してくれないか?
これで水不足もマシになるはずだ!!」
「いいですよ」
私は皇帝に水の供給を頼まれて了承した。
水道設置には時間が掛かるし、それまでに時間稼ぎで水を出しておこう。
こうして宴は進むと私はある事を思いついた。
「ねぇ、みんな、かき氷食べてみない?」
「お、いいねw」
「暑いもんな!!ちょうどいい!!」
「わ~いにゃw氷にゃwww」
私の提案にウィキとリックとハイにゃんは顔を輝かせた。
「できるのか?かき氷なんて久しぶりだからうれしいけど」
「できるわw魔法チートをなめないでよね」
拓海に聞かれて私は大量のシロップを取り出した。
いちご、レモン、メロン、ブルーハワイ、いろいろある。
私は氷置き場に敷物を大きく広げ敷いた。
「ウンディーネ、綺麗な水を空中に浮かせてくれない?」
「はい」
私はウンディーネに命じて大きな水の塊を空中に浮かせた。
四角く水が空中に浮いている。
「『ダイヤモンドダスト』」
私はその水を凍らせた。氷は敷物に上に乗せられて巨大な姿を見せていた。
「はい完成!!」
「「「「「「おおおおおおおおお!!!!」」」」」
できあがった氷を見て周りの人たちは歓声をあげた。
「おおおおお!!!!すごいぞ!!ユーエリア殿!!」
「まさか、私とお母様以外で氷の魔法が使えるなんて」
「私と同じ・・・」
「・・・まさか、レイナとリンカ以外に氷の魔法が使える人がいたのね」
皇帝とリンカと王妃レイナと側室フレアは氷を見てびっくりしている。
どうやら王妃様とリンカも氷の魔法の使い手らしい。
そういえば最初会った時、リンカも氷の魔法を使ってたわね。
「レイナ様も氷の魔法が使えるのですか?」
「はい・・・」
私が聞くとレイナは手に氷の塊を出した。
魔力の波動からレイナはかなりの使い手に感じる。
「じゃあ、手伝ってくださいますか?
かき氷をみんなで食べましょう」
「はい・・・」
私は王妃様に手伝ってもらい氷の塊を次々出した。
そして風の魔法でブロック上に切り分けると、
かき氷器を取り出してかき氷を作った。
ウィキたちもかき氷を作るのを手伝っている。
全員に行き渡ると私たちもかき氷を食べ始めた。
私とノッレとイノーゼとレイナとリンカはいちご。
ウィキとリックとニッキーと拓海と雷信と皇帝はメロン。
キラとヒデトとフレアはレモン。
マークスとロザンナはブルーハワイのかき氷を食べた。
「この、キーンと来る感じがたまらないわねw」
「頭が痛いのがいいにゃw」
「夏の風物詩だよな」
「暑い時にかき氷を食べる!!これぞ!!夏!!」
私とハイにゃんとウィキとリックはかき氷から夏を感じていた。
ハイにゃんはかき氷を食べて
きーんとする頭の痛さにに悶えて喜んでいた。
「いちごのかき氷、おいしい」
「やっぱかき氷はいちごよねw」
「エンジェルム王国にはこんな食べ物があるのね」
「おいしい・・・」
イノーゼとノッレとリンカとフレアはかき氷を満喫してるみたいだ。
リンカとレイナはかき氷に感心してるみたいだ。
「ふむ!!氷がこんなに美味しい物とはな!!」
「きーんとくるわね」
「かき氷はやっぱメロンだよなw」
「優絵と拓海のいた日ノ本ではこんな物が作られていたのか」
皇帝とフレアはしゃりしゃりと豪快にかき氷を頬張っていた。
拓海はかき氷はメロン派らしい。
雷信はかき氷は初めてみたいでかき氷器を見て感心していた。
「ニッキー、かき氷分けてあげるわ」
「この『ぶるーはわい』うまっ!!!」
ロザンナはニッキーに自分のかき氷を食べさせてるみたいだ。
あ~んっとしてて、まんざらでもないのかニッキーはおいしく食べている。
「こっちの『レモン』のかき氷もおいしいですよw」
「後で、他のシロップも試してみるか」
「もぐもぐ、しゃりしゃり」
キラとヒデトもかき氷を食べて楽しそうだ。
ヒデトは他のシロップも試すらしい。
マークスは口いっぱいにかき氷を頬張って黙って食べてた。
こうして、かき氷は大盛況に終わって宴は終わりを迎えた。
「今日は我が城に泊まっていってくれ!!」
「でも、宿取ってしまいましたし;;」
「その宿の代金は俺が立て替えとく。
心配しないでくれ」
私は宿屋のお金が無駄になるのを心配してると
どうやら皇帝は宿の代金を立て替えておいてくれるらしい。
「では、お言葉に甘えます」
「はははは!!では、客室でゆっくりしておいてくれ!!」
私たちは皇帝の言葉に甘えてお城に泊まらせてもらうことにした。
各自客室に向かい、ゆっくりする。
宿屋の荷物は後でお城の人が取りに行ってくれるらしい。
「ここもゴージャスね」
客室は個人個人、個室になっていて中は豪華そのものだった。
宿屋以上のゴージャスな天蓋付きベッドに
アラビアのお姫様が使ってそうな立派な装飾の家具が並んでいた。
私はそこでゆっくりするとお風呂を入りにお城の大浴場へ向かった。
「お嬢様も風呂場に行くのか?」
「ユーエたんもお風呂にゃか?」
「僕たちもちょうど行く所なんです」
「一緒に行こうぜ」
ウィキとハイにゃんとキラとヒデトも
一緒のタイミングでお風呂場へ向かうのか
途中の廊下で出くわした。
なので、一緒にお風呂場へ行く。
すると、途中でリンカに出くわした。
「あら?まだ、かき氷食べ足りなかったの?」
リンカはいちごのかき氷の入った器を持っていた。
「ううん。弟に食べさせようと思って」
「弟さんがいるの?」
どうやら他に王族がいたらしい。
リンカには弟がいるそうだ。
「病気で寝込んでるの;;;
日射病なのか熱が引かなくて・・・」
リンカはそう言って暗い顔をした。
リンカの弟さんは病気で寝込んでるらしい、
だから、かき氷を持って行ってるのね。
「日射病ですか?熱が引かないとは気になりますね。
ここ数日続いているのですか?」
「一ヶ月は寝込んでるわ」
「おかしいですね;日射病は少し休めば数日で回復するものなのですが」
キラはリンカの弟の病状が気になるのかふむと考えこんだ。
「僕は医者なんです。
その弟さんを診せてもらえませんか?」
「分かったわ。こっちへついて来て」
キラの申し出にリンカはリンカの弟の部屋へ案内してくれるようだ。
私たちも気になるのでリンカについていくことにした。
なにか、特殊な病気でもかかっているのかしら?
私は気になりつつもリンカの弟の部屋へ向かった。
つづく
個人的にはカルー(カレー)に悶えるニッキーが笑えますw
もてなしもユーエリアたちは満足したようですw
次回は病気のリンカの弟についてですw