1話 「疑問」
「…あお。」
高い位置にある窓を見ようと上を向くと、鎖同士が擦れて音がなる。極力音を立てたくないようで、諦めて元の体制に戻った。
そのまま眠るように目を閉じたが、暫くすると勢いよく扉を開ける音と同時に、大きく音を立てた足音が聞こえてくる。
「…」
少女は目を開けたが、その瞳はうつろで何も写さない。
ーー今日も、はじまる。
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ーー四季の大陸、夏の地区の外れにある村「アズリア」 外れという位置や周辺の村と比べると少し小さいことから貧しい村と思われやすいが、気候に恵まれているので農作物や畜産物を自給できる。
「ようこそいらっしゃいました、アルドヴァ様。」
アズリアの村長が話しかけるのは、夏の地区を代表する都市、夏の王国とも呼ばれる「エストア国」の王、『アルドヴァ・フィルスティ』。
彼は今、アズリアの視察に来ている。
「手厚い歓迎、感謝する。さっそくだか、予は村を見て回りたい。よいか?」
「かまいません。私もお供しましょう。疑問がございましたら、お申し付けください。」
形式のような挨拶をして、歩き出す。
村長の話にアルドヴァが興味を持ち、アルドヴァの従者がメモを取る。という動きを数回繰り返したとき、王が何かに気づいた。
「王様、どうかされましたか?」
村長が声をかけるが、アルドヴァはある建物を見たまま動かない。従者が何度か声をかける
「アルドヴァ様、どうかされましたか?アルドヴァ様?」
「……あ、あぁ。すまない。少し質問なんだか…」
「はい、なんでございましょうか」
するとアルドヴァは、ある建物を指差し、「あれはなんだ」と問いかける。