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奇怪な道具



 最近始まった事ではないが、夜恵という娘が来て以来、光秀様の様子がおかしい。可笑しいというよりは恐ろしいのかも知れない。

「兄ぃ、光秀公の射撃楽しみですね」

「ああ」

 いつも通りの会話をしているはずなのにも関わらず、光秀様の視線がいたい。

(の、呪い殺される?)

 殺気を隠そうともしないその様子は一体何があったのだろう?

「カメラで撮影してもいいかな? データサンプルになりそう」

 私が恐怖に怯えているのにも気付かないのか、夜恵はまた奇妙な事を嬉しそうに言っている。

「かめら? でぇた? それはどのようなものなのだ?」

「兄ぃは質問が多いなぁ。光秀公みたい。カメラはこれ、データって言うのは資料のこと。わかった?」

 そう言って見せられたのは夜恵の手の中にすっぽりと納まるくらいの箱であった。

「この箱を何に使うのだ?」

「光秀公の様子を撮影して記録するの。ひょっとしたら銃の改良にも役立つかもしれないし…」

 言っていることはさっぱり解らんが、改良に役立つならいいだろう。

「本当に不思議な道具ばかりを持っているな」

「そう?」

 感心していると、何ともないような様子で、光秀様の方に『かめら』という箱を向ける。


 銃声の後、弾丸は見事に的の中心を貫いた。


「す、凄い…」

「お見事です」

 我々の声に気付いたのか、兵の一人に鉄砲を渡し、こちらに近付いてきた。

「確かに二十五間だ」

 夜恵に笑いかけながら言う光秀様の表情はいつも以上に優しげに見える。

「まさか本当にやってしまうとは…あの重い銃を持ったときは記録は間違いだと思ったのに…」

「信じていなかったのか?」

「はい。でも、これで光秀公の素晴らしい腕は証明されました。たしかにここに記録しました」

 そう言って先程の小さな箱を光秀様の前に差し出す。

「この箱は?」

「カメラです。見ますか?」

 そう言ってさらに板のようなものを取り出した。

「この板はなんだ?」

「兄ぃうるさい。モニターだよ。今日何回目の質問?」

「お前が妙な道具を出した数だけだ」

 本当に失礼な娘だと思う。それでも憎めない何かを持っているから不思議だ。

「もにたぁとは何だ?」

「録画の状態を確認する装置の事です。百聞は一見にしかず。実際に使ってみてください」

 そう言ってかめらをもにたぁに向けると光秀様が映った。

「こ、これは…」

「先程の記録です」


『す、凄い…』

『お見事です』


 声まで聞こえてくる。自分の声を聞くというのは奇妙なものだ。

「これは面白いな。他にも使えぬのか?」

「そうですね、ためしに弓隊の訓練の様子でも見ますか? 丁度撮影中の監視カメラが…」

 夜恵が言い終わる前に映像が変わった。

「な…これは、今の様子か?」

「はい」

「これはどういうことだ?」

 そこには兵が訓練を怠っている様子が……。

「あ~、サボりですね」

「な、何たるていたらく!」

「秀光、一喝入れてきなさい」

「言われなくても参ります」

 すぐさま兵に渇を入れに向った。



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