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FS.桃山-戦国時代で俺は天下統一を目指します-  作者: 束間由一
第一章:いざ電脳戦国の世へ
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入城

 山賊に襲われて絶体絶命だった康一たちを救ったのは、康一が作り出したNPCキャラクター、本堂叶多(カナタ)だった。彼女に出会う事で、ここがオンラインゲーム<桃山リバイバル>の世界であるということが確信に近づく。



 「ふうむ。まことに信じがたい話だな……」


 「そうだろうな。他の世界から来たっていきなり言われても、普通は困るよな」

 

 「まったくだ。お主ら、初めて会ったのが私で良かったな」


 「まったくだぜ」


 カナタと一緒に俺達は柔らかい土の街道を歩く。

 コンクリートの硬い道路なんかあるわけがなさそうだ。プログラムで作られた人の道は柔らかく、時々ゴツゴツする。しかし、俺達がいたところのすぐ近くにこの道が通っているとは思わなかった。森の深みというものは人迷わせるものだと改めて思い知らされた。町内会で山登りに行った時もはぐれて迷子になった時の事も思い出した……あのときは怖かったなぁ。もっとも、さっきみたいに山賊に襲われる方が怖いのは確かだが。


 「……とにかく、この件をわたしだけで治めるのは問題がありそうだ、それに行くあてもないようだし、とにかくまずは我が城に来るがよい」


 「ありがとう、カナタ。流石は、俺の愛娘だぜ!」


 「はあ……お主は、また何を訳のわからぬことを言っておるのだ? 拙者は、お前の事など今の今まで見たことも聞いたこともないぞ?」


 「そんなこと言うなよ~生みの親に向かって」


 「何を言うかっ!? 拙者の父は益臣(ますおみ)の他にはおらぬ!」


 「ちぇー、ツンツンしてるなぁ。でも、本当は優しい子だって俺はわかってるんだけどな」


 「かーっ! さっきから人の事を好き勝手に扱いおって! それで、お主達の名はなんと言うのだ?」


 「俺は、康一。徳川康一(とくがわこういち)だ。んで、こっちで腕組みしてるのが……イテッ!」


 思い切り、耳を引っ張られた。

 毎度の事だが、この変人カチューシャ女は俺の扱い方がぞんざいすぎる。


 「斉藤ロシです。この男はバカ者ですので、またいらぬ事を言ったら、シバいちゃってください」


 「そうだな。康一とやら、今後そのような言動を続けるとこちらもお前のほっぺを思いっきり引っ張らせてもらうからな」


 「別にいいぜ? お前とはどうしても、他人な気がしないからな……ムギギ!?」


 「冗談で言っているとでも思ったか? 悪いが、私はやると言ったらこの通り遂行する(たち)でな」


 「いひゃいいひゃい!」


 「まったく、これからお館様に会ってもらおうと思っているのに、困った奴だ」


 「おやはたはま?」


 「ああ、知らぬのか。わが総美(そうみ)の国を治める武内(たけうち)勝柾(かつまさ)様の事も。あの方は実に寛大なお方だ。お主らの話も、きっと聞いてくれるだろう」


 「ふーふ。あほ、とりはへふ、そほそほ引っはるのやへてふれなひか? こほはははほ、顔の皮が伸びてしはふふ~」


 「ああ、すまない。……とにかく、拙者は良いがお館様や他の方々の前ではくれぐれもそそうのないように振る舞えよ。皆良い方ばかりだが、礼儀と言うものは大事だ」


 「わかったよ。ところで、俺のほっぺ赤くなってないか?」


 「ああ、桜餅のように真っ赤だな。」


 カナタやロシとそうやって和やかに語り合いながら暫く道を歩いていると、目の前の山の麓に城が経っているのが見えた。


 「あれは……」


 「ふふ、立派な城だろう? あれこそが私が仕える<白播城(しらばりじょう)>だ!」


 カナタは嬉しそうに言う。自慢げなその顔は随分子供っぽい。

 流石は俺のオリジナルキャラクター、実にかわいらしい。変態女のロシとは大違いである。まあアイツの真逆をイメージして作ったのだから当然のことなのだが。

 

 城の経つ山の道は、うねっていて長く、中々に傾斜があったため結構時間がかかった。城マニアじゃない俺が言うのも何だが、中々に攻めにくそうな城だと思う。体力には割と自信がある俺でも、城門に着いた時には、ハーっと大きく息を出した。


 城門には藁か何かでできた傘をかぶった門番が2人、槍を持って立っている。彼らは、カナタをみると近寄ってきた。



 「姫様、おかえりなさいませ!」


 「ああ、三郎に重八。お勤めご苦労だな」


 「有難きお言葉。……ところで、そこのお二人は?」


 「ああ、この者たちは私の<知り合い>だ。父上に会わせたいのだが、今は城内におられるだろうか?」


 「はい。カナタ様のお帰りを首を長くしてお待ちでしたよ。」


 「わかった……では、康一にロシ、中に入ろうぞ。」



 木製の大きな扉は、ギィィという音を立てて開いた。

 目の前では、美しい白塗りの壁と灰色の瓦と石垣を持つ城が、力強く俺達を出迎えた。





 


   


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