ゲープロの奴ら
パシリをやらされた康一。
文化祭の混雑を乗り越えて何とか部室に戻ってきたが……
「てめえ、インチキ勝負に勝ったからって良い気になりやがって!」
「インチキ勝負? 冗談はよしてよね! 正々堂々と将棋で勝負しただけじゃない」
「あれが正々堂々とだと!? 明らかにプロだろ! 紙相撲プロ!」
「言い訳がましい!」
バシッ!
どこからともなく取り出したハリセンで思いっきり頭をぶっ叩かれた。
髪とは言え、当たれば結構痛い。手加減の無いロシの一撃は特に。
「まあまあ、斎藤さん。ちゃんと買ってきてくれたのだし、落ち着きなさいな」
「うむ……落ち着きたまえ」
奥に座る2人がロシを宥める、おとなしそうなメガネの女性が部長の崎野さんで、もう一人の寡黙な男性が安田さんだ。上級生の2人に言われれば、このオテンバ小娘も流石に反論は出来ない。フンと鼻息を荒げて俺の持っていた食料袋からフランクフルトを黙って引きぬいた。俺はそんなロシを尻目に、部長と安田さんにそれぞれ焼きそばを渡す。
「崎野部長、どうぞ」
「徳川君、ありがとう。大変だったでしょう?」
「そうですね~すごい熱気でした。死ぬかと思いましたよ」
「それは大げさ! でも、私たちみたいに華奢な子が行ったら骨の一本も折れていたかもしれないわね~」
「それも大げさです」
「うふふ、確かに。でも、徳川君は本当に頼りになるわね! 文化祭の準備も色々頑張ってくれたし」
「いえいえ、大した事はしてませんよ」
こんな部活に入ってはいるが、俺は全くゲーム制作はおろかパソコンにだってあまり詳しくない。入学早々ロシに無理やり連れてこられて入部させられただけなのだ。だから、出来る事と言ったら力仕事とか雑務が殆どだ。
「そんなこと無いわ、徳川君。<桃山リバ>がこうやってたくさんの人達に楽しんでもらえるのはあなたの力もあるのよ」
「そう言われると、照れますね。……しかし、本当にスゴイです。たった3人で、あんなゲームを短期間で作っちゃうなんて」
「正確には、3人じゃないわよ。外部スタッフもいるし、ベースデータは去年から作り始めていたからね」
俺はパソコンに座る人々の方を見た。
俺以外の天才プログラマー部員達が作った努力の結晶は今まさに彼らの手で動かされていた。