大多良盆地の電脳戦(3)
敵将姉崎と対面した康一たち。
いよいよ戦が始まる。
「2人とも、近う」
お館様に呼び寄せられて、俺とロシはそのモニター画面を正面から見ることになった。
「ふぉふぉ、まずは、戦闘状態に切り替えるぞ」
お館様は、モニターに手をかざし「開戦」と叫んだ。
すると、画面に映る幾つかの人の群……つまり敵と味方の部隊が赤と青の2色に変わった。
「敵と味方の識別ね」ロシが言う。
「大抵こういうゲームってのは青が味方で赤が敵なのよね」
「さよう」お館様は頷く。
「わかるのはそれだけじゃないぞい。続いて、周りに現れるものを見ておけ」
部隊に色がついた後は、その大画面の端に3つの、縦型の棒のような物が現れた。
そして、それぞれの棒の右側には何か丸い点が3つある。
「これは、兵力ね」ロシが言う。
「この棒が短くなって消えてしまったら、その部隊は壊滅って事。」
「まあRPGのHPとかみたいなものか?」
「そゆこと」
「このへんは、実にゲームッぽいな……おっ、また何か出て来た?」
更に、画面下部にまた謎のゲージのような物が現れた。両端には金の竜の装飾があり、その目は黒くくすんでいる。そして、右端には「壱」「弐」「参」「退」という四角に描かれたアイコンらしきものが付いてた。
「これは……」
「ふぉふぉふぉ、どうやらロシは良くわかっているようだが、まあ指揮機能と言う奴じゃな。まあ、後の詳しい事は戦いの中で見せるとしよう……」
お館様は、画面を再び見ると、そこに向けて口を開いた。
「ロシ、正兼、才蔵! 聞こえておるか?」
「はい!」
すると、ロシをはじめとした3人の顔が、兵力ゲージの上にそれぞれ映像として正方形の中に映し出された。こんなの現実世界でも出来ない所業だろう。
「すごいな! 誰とでも話せるんですか?」俺は普通じゃない状況にやや興奮して言う。
「残念ながら誰でもとはいかんぞ。こうして会話できるのは<武将>の素質を持っているなど、特定の者のみじゃ」
「武将……誰でもなれるわけじゃないのか」
「そう、この<桃山>の地はそう言う場所なのじゃ。武将の資質が無くては戦で出来ぬ事も多い、裏を返せば資質があればこの世界に適していると言えよう」
「俺たちには、あるんですかね?」
「さあな……しかし、お主が<天使>ならばな」
「……」
「さて、姉川が早速動いて来よったわ!」
超科学的な画面上では赤い人の群が青い人の群に移動するのが良く見えた。
この世界で俺が初めて見る、戦が遂にはじまったのだった。