大多良盆地の電脳戦(2)
お館様と一緒に戦場に向かった康一。
陣地を敷き、お館様は何と電脳的な力を見せた。
「これはこれは、何だか珍しい方を連れていますな」
その男は、すらりと高い長身でなかなかのイケた面をした男だった。
ただ、何かホストっぽいと言うか軽い感じが全身から漂っている。
「お館様、誰なんですか?」
「相手方の君主、姉崎信近じゃよ」
「そうよ」横から、ロシが高慢ちきに口を挟む。
「どう? 見るからに一部の腐女子ユーザーから好かれそうでしょ?」
「まあな、こう言うのが好きなヤツって結構いるんだろうなぁ。俺にはさっぱり良さがわからんけど……」
「ま、とりあえず、ちゃんと遠距離会話システムが機能してるみたいね。うんうん」
「そういえば、ゲームだと会話って遠距離でも普通に会話してるもんな。なるほど、やっぱりこの世界は俺達の思ってる通りな気がしてきたぜ」
俺達が内輪事を話していると、姉崎って奴がおいおいと頭を掻いて俺達に近づいて来た。
「この姉崎信近を無視するとは、各々随分と舐めた真似をしてくれますなぁ」
「ふぉふぉ、お前がその程度の者と言うことじゃよ」お館様が笑う。
「武内勝正、年寄りの自信も今回までにして差し上げますぞ。<姉崎大槍隊>の真の恐怖教えて差し上げよう」
「いつもながら、口上だけだろうて。まあ、軽くいなしてやるとするかの」
「……っ」姉崎が明らかにイラついた表情を見せた。
「では、今より戦をはじめましょう! 老狸が尻尾を巻いて逃げ去るのは目に見えておりますがな……フハハハハ!」
そう言うと、姉崎の姿は消えた。しかし、単細胞だし軽いし雑魚的な台詞を吐くし、正直このお館様に勝てる気はしない。俺から見ても……
「青二才が」と言ったお館様に全く同感だった。
「猪口才な練兵で挑むなど、まるで我々の演習にしかならんと言うのに。まあ、康一やロシにいい機会が設けられたと考えればあやつの判断も少しは褒める余地があるがな」
「そうですな」存在感を抑えていた益臣さんが穏やかに言う。
「あのお方は武勇だけはそれなりにあるのですから、我々の傘下に下ってくれれば助かるのですがね
」
「ふぁふぁ。まあ、今はどうせ言う事を聞かん痩せ馬じゃし、好きにやらせておくしかないわい。さあ、はじめるとしようか」
お館様はかくいき何とかと言うテレビモニターっぽいものの前に達、こほんと1つ咳をした。
「2人とも、見ておれよ。桃山の戦というものはこうしてやるものじゃ」