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FS.桃山-戦国時代で俺は天下統一を目指します-  作者: 束間由一
第二章:動乱の火は桃山に灯る
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戦いの朝

 桃山の地に飛ばされたその日は、山賊に襲われたり、カナタに助けられたり、白播城でお館様に会ったり、伝説を聞いたりと大変な一日だった……

 豪勢な城の内部に見とれたものの、やはり夢だったらいいのにと内心思っていた康一だったが、新しい朝は容赦なくやってきた。





 翌日、俺は騒がしい足音で目が覚めた。

 横にたたんで置いてあった、昨日動いた割にやけに綺麗な制服に急いで着替えると(勿論、ロシが着替えている間は俺は外に出ていた)襖を開けて部屋の外に出る。すると、丁度カナタが目の前にある階段を駆け上がってきた。



 「康一! ロシ!」


 「どうしたんだ? 朝はいつもこんな風なのか?」


 「ちがうわい!」目の前まで来たカナタはやけに慌てている。

 「康一、(いくさ)じゃ! 戦が始まるぞ!」


 「えっ、マジで!?」



 「むっ、マジとは何ぞや?」


 「俺達の世界で『本当か!?』って言うような意味だよ」


 「なるほど。とにかく、そのマジと言うものなのだ! 隣国の姉崎(あねざき)信近(のぶちか)が、この城に兵と共に迫っている! 既に、此処から3里辺りまで来ていて、山間の盆地になったところに布陣を敷いているそうだ」


 「ええと……3里って、どれくらいの距離なんだ?」


俺が、ロシの方を向くと、そんな事も知らないのかといった目つきで睨まれたが、ちゃんと教えてくれた。……なるほど、一里が約3.9kmだから、大体10km強ってところか。ちょっと勉強になった。


 「しかし、お主らが着た途端にこうなるとはな……」カナタは腕を組んだ。

 「やはり父上の言う事は正しいのかもしれん。とにかく、まずはお館様のところに行くぞ」


 「え、俺達も行かなきゃならんのか?」


 「お館様が呼んでおるのだから、当然であろう」


 「ははは、よっぽど俺達って気に入られてるんだな」



 カナタに案内されるがままに、俺達は昨日もう来たくないと思っていたお偉いさん方が集まる城の最上階の一室に案内された。着物姿だった男衆は、今日は暑苦しい鎧を身にまとっている。まさに、戦が始まると言う雰囲気が漂っていた。正直、俺達の恰好はまるで撮影所の見物客みたいな感じで、この場では明らかに浮いていると思う。しかし、みんな険しい顔をしていて何も言う事は無かった。どうせなら1人くらいツッコミを入れてくれれば、場が和みそうなのに。



 「よくきたのお、二人とも。どうじゃ? 良く眠れたか」


 「はい、騒がしい音で起こされましたけど」



 目の前に座る、鎧を着たお館様は他の奴らとは違ってリラックスしており、俺の冗談にファファファと笑って手に持った扇子で顔を仰いだ。流石は一国の城主、非常時にも余裕が見える。


 

 「そうかそうか、それは申し訳なかったのぉ。まあ、この通り、今からワシらは戦に出るぞ」


 「大変ですね……それで、何で俺達を呼んだんですか?」


 「いや、お主にも一緒に来てもらおうと思ってな!」


 「えっ!? 俺達も戦に!? 戦った事はおろか、喧嘩すらした事無いくらいなのに……」


 「これこれ、早とちりするな。お主らを前線に出すとは言っておらん。丁度いい機会だから、ワシの側で、この桃山の地での戦い方と言うものを見せてやろう思ってな」


 「は、はぁ」


 「心配せんでいい。姉崎の若造等に負けるほど、この武内(たけうち)勝柾(かつまさ)老いてはおらんぞい」


 いや、どうみも結構老いてるぞと思いつつも、自信満々の眼差しに、俺達は従う事になった。

 馬に乗った武者鎧の男たちや、いかにも足軽な槍を持った男たち、そしてお館様やカナタと共に俺達は白播城を出て山を下る。


 歩きながら俺は天を見上げた。

 木々の間から見える空は、澄み渡るように青かった。


 夢でも幻でもない。

 今日も桃山の地は、俺の眼の前に存在しているのだった。


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