はじまりの日
今日は、神埼高校文化祭の日……
10月25日(土曜日)正午。
ここ神埼高等学校は、熱く沸いていた。
我が校伝統の「響辰祭」は、文化祭としてはここいら近辺で群を抜くクオリティの高さで、他校や近隣住民等外部からの来訪者も呼び込み毎年大盛況。今年もそれに洩れず、宣伝の効果も重なって、どっかのマンガフェスタ並みに校舎内は人でごった返していた。
「ったく、パシりは楽じゃないぜ」
俺は、屋台がそんな人ゴミの中を何とか買う事の出来たフランクフルト&やきそば&シロコロホルモンを持って掻い潜る。あまりの暑さに汗が込み上げ、制服を体に張り付かせた。頭も回らない。とにかく前進するので精いっぱいだ。
ドオン。
メタボなお腹のおじさんに弾かれて、俺はふらついた。
思わず天井を見る。紙で作った色とりどりの輪飾りがゆらゆら揺らめいているのが見えた。
「いってぇ……畜生、たまったもんじゃねえな。」
昼ご飯の買い出しを賭けた紙相撲の対決で俺はビリになった。
本当に誤算だった。まさかあの3人ともがあそこまで紙相撲が強いとは思わなかったのだ。台の叩き方が絶妙だった。やっぱり、実力があまり伴わないジャンケンで決めた方が良かったと後悔したが、既に後の祭りだ。
俺、徳川 康一は見事にこうしてパシリをやらされているのだった。