べ、別に『 』なんて思ってないんだからねっ
舞傘様主催の企画、通称日直隊こと、“日常会話を見直し隊”参加作品です。
ちょいツンデレなヒロインを目指してみました。
感想、評価、よろしくお願いします!
ひぅでした♪
「山内~っ!」
(うわっ、またでたっ)
「そんな、また出た、なんてつれないこと言うなよ~」
「あぁごめんあんたがあんまりうざいもんだから心の声が口に出ちゃったみたい」
「そんなことより、今日こそは一緒に帰ろうよ~」
「何度も言ってるけど、嫌って言ったら、いや!」
なんだよ、いいじゃんちょっとくらい~、とか何とかほざいてるこのバカは、小野坂 春という。
高校に入学したころから「一目ぼれした!」といって、まとわりついてくるようになった。
ちなみに今は高二だから、約一年と半年くらいはこの状態だったことになる。
正直言って、邪魔だし、うざいし、面倒だし、迷惑なことこの上ない。
けど、まあ、邪魔だとか、うざいとか、面倒だとかっていうのはまだ許せないこともない。
だって、無視しとけばいいじゃない?
そう思って楽観視してたら、予想外のところに弊害が出た。
「小野坂君がいるじゃん」
「小野坂君の方が、おれよりかっこいいし……」
「えっ?山内さんて小野坂君と付き合ってるんでしょ?」
あのバカの無駄にいい顔のせいで、私が何度振られたことか!
私と小野坂は関係ないのにーーー!!!
(うぅ、ひどいよお)
そんな訳で、私、山内 静流はあいつのことが大っっっ嫌いです!
(そもそも、なんであいつにここまで好かれなきゃいけないわけ?)
十人並みな容姿、勉強だって、運動だって、人より秀でたところなんて一つもない。
なにか変わった特技があるわけでもないし、一目ぼれされる言われなんて一つもないはずなのに!
今日で何百回目かのため息をつきながら、家に帰るため、校庭に出た。
ただし、断ったはずなのに後ろにいるバカ付きで。
「あぶなーーーーーーーーーい!!!」
突然後ろから大きな声がして、何かあったのかと振り返ると、かなり勢いのついたボールがこっちに飛んで来ていた。
「危なっ」
するりと頭を横に倒してよける……が。
ズルッ
「きょわっ!」
何故か足が滑り、ぐらりとバランスを崩した。
(あぁ、また……)
そう思ったのと同時に、ぽすりと受け止められる。
顔なんて見なくても分かった。
「ギリギリセーフ」
大丈夫?、と声をかけられたが、こっちはそれどころじゃない。
にっくきバカにまた助けられてしまったことが悔しくて、恥ずかしくて。
「触らないでよ、変態!」
と、つい怒鳴ってしまった。
すぐに後悔するも、プライドが邪魔して、謝ったりなんか出来なくて。
ましてや、助けてくれて「 」なんて、とても言えない……
助けられるたびに言わなきゃって思うのに、いつも口には出せないままだ。
(今日こそは言わなきゃ!)
深呼吸して、全身の勇気をかき集めて、勢いを付けて顔をあげる。
見上げた顔は大分高くて、初めて小野坂の背が高かったことに気づいた。
震える声で、真っ赤な顔で、思いを告げる。
「あのね、いつもあり「もう、本当に山内ってドジなのな~、俺心配で夜も眠れないんだけど! やっぱ、ここは俺が山内を守るしかないよなっ」
お望みとあらば風呂までね?なんて言いながら、小野坂は私の頬にキスをした。
キス。
きす。
「―――――――――――――――っ?!!!」
体が熱くなって、文句を言いたいのにパクパクと口を動かすことしかできない。
せっかく勇気を振り絞ったのに。
わざととしか思えないタイミングで遮られたことと、さっきの、き……キスの、せいでその場に崩れそうになった。
体の震えを悟られたくなくて、つい口が悪くなる。
ついでにひょいっと足も出る。
「――――っ、やっぱり最低!!こンのすけべおやじがぁっ!!!」
足を振り上げて、ドスッと鳩尾にめり込ませる。
急所らしいけど、まあこいつのことだから大丈夫だろう。
ばっ、とすばやく踵を返してその場を去る。
まだドキドキと早い自分の鼓動を聞きながらこう決意した。
(もう二度とあんなこと思ってやったりするもんかっ!!)
「 」となっているのはミスではありません。
この作品のキーワードなるものがあるのですが、それを作品中に出さないように頑張ってみました。
ちょっと言いかけちゃってますが、そこは見えなかったってことで!
詳しいことは舞傘様の活報に載っていますので、
気になった人は見に行ってみて下さい。
それでは、またどこかでお目にかかれることを祈って。
ひぅでした♪