時空を超えるセコイヤリスト達の掟 第一話 砂漠に芽吹く新文明
世界は、いつだって静かに始まる。
大きな音も、派手な光もない。ただ、ひとつの気づきが、
心の奥でそっと芽を出すだけだ。
この物語は、そんな“気づき”から始まる。
誰もが持っているはずなのに、いつの間にか見失ってしまった「内なる世界」。
そして、その内界と外界のあいだに横たわる、目には見えない“境界線”。
主人公が踏み出す最初の一歩は、決して特別ではない。
だが、その一歩が、やがて世界の見え方を変え、読者自身の境界線
にも触れていく。
第一話は、その“最初の揺らぎ”を描く章だ。
あなたの中の何かが、ほんの少しだけ動くかもしれない。
それを楽しんでほしい。
第一話 砂漠に芽吹く新文明
シーン1:ベスとの対話
2026年一月二十日。午前九時の砂漠は、まだ冷たい。
黒田義鷹、七十八歳。その体は、年齢を裏切るように静かで、強かった。
オウ国西部。かつて死の大地と呼ばれたグレート砂漠の片隅に、
小さな緑の都市が、芽吹いている。百年かけて育てた森だ。
見えない根が、砂をつかみ、
見えない枝が、空気を変え、
見えない森が、未来の文明を支えている。
その中心に、黒田一族がいた。
種を蒔き、土を耕し、そして何より——
自分たちの不自由と向き合い続けた一族。
義鷹は、妻ベスの部屋のソファーに腰を下ろし、
十八年ぶりの客人を待っていた。
ベスは、五十歳。
その瞳は、若い頃と同じ鋭さを持っていた。
自由を求める者の目だ。そして、自由を恐れない者の目でもある。
龍郎を迎える前の静かな時間。砂漠の光が、部屋の白い壁
にゆっくりと揺れていた。
ベスは、義鷹の正面に座り、指先でカップの縁をなぞっていた。
その仕草は、何かを決める前の女の癖だ。
「あなた。ジェイソンとナタリーのこと、そろそろ決めてよ」
義鷹は、目を閉じた。砂漠の風よりも乾いた問いだった。
「もう少しだけ、子供でいさせてやりたい」
「待てないわ」
ベスの声は、刃物のように真っ直ぐだった。
だが、その瞳は若い頃と同じだ。自由を欲しがり、自由を恐れず、
そして——自由を奪うことにも迷わない瞳。
「特務員の血は、死ぬまで消えないのよ。
あなたも、知っているはずよ?」
義鷹は、ゆっくりと息を吐いた。自由とは、何か。不自由とは、何か。
その境界線は、いつも曖昧だ。
「本人の意思を尊重する。それが条件だ」
「ありがとう、先生」
ベスは、微笑んだ。その笑みは、勝者の笑みだった。だが、
その奥にあるものを義鷹は知っている。
欲望。
使命。
血統。
そして、自由への渇き。
「もう一つお願いがあるの」
ベスは、顎に指を添えた。大きなおねだりをするときの癖だ。
「先生の、二十一世紀・第二四半世紀の世界観を教えてほしいの」
義鷹は、眉をひそめた。
世界観とは、軽く扱うべきものではない。それを知るということは、
自由の重さを知るということだ。
「知れば、君は不幸になるかもしれない」
「私は、元・調略特務員よ。不幸なんて、とっくに慣れている」
その言葉に、義鷹は小さく笑った。強い女だ。そして、危うい女だ。
義鷹は覚悟を決めた。未来を語るということは、自分の不自由を
さらけ出すことでもある。
「いいだろう。だが、覚悟して聞け」
砂漠の光が、二人の間に落ちた。その光は、未来の影のように長かった。
シーン2:義鷹の世界観
義鷹は、しばらく黙っていた。
砂漠の光が、ゆっくりと床を滑っていく。
その光の動きが、まるで未来の影のように見えた。
「ベス。
未来を知るというのは、自由を得ることじゃない。
むしろ、不自由を引き受けることだ」
ベスは“微動”だに、しない。その沈黙が、義鷹に続きを促した。
「二十一世紀の第二四半世紀。世界は、一国支配の時代を終える」
義鷹の声は、低く、乾いていた。砂漠の風のように、余計な湿り気がない。
「コメット国は、世界を抱えきれなくなる。
大西洋に線を引き、
軍を西半球へ戻す。
自国主義の帰結だ」
ベスの眉が、わずかに動いた。その動きは、理解ではなく、直感の反応だった。
「東半球は、空白になる。その空白を埋めるのは、チュン国とロ国だ。
核を持つ三つの巨人が、世界を三つに割る」
義鷹は、指を三本立てた。 その指は、まるで世界の運命を示す柱のようだった。
「ニッチ国は、巻き込まれる。避けられない。
地勢学とは、自由のない学問だ」
ベスは、息を呑んだ。その一瞬の揺れを、義鷹は、見逃さない。
「だからこそ、ニッチ国は、海へ出る。水半球の視点で、
エイ国、オウ国、ニュージ国、ネシア国……太平洋の海洋国と手を結ぶしかない」
義鷹は、ゆっくりとベスを見た。
「そして——オウ国が、その中心になる」
ベスの瞳が、光った。それは、野心の光か、希望の光か、あるいは、もっと深い何か、か?
「あなたは……その未来を、いつから見ていたの?」
義鷹は、答えない。答えられないのではない。未来を語る者は、未来に縛られる。
それが、不自由の始まりだからだ。
「未来は、予言じゃない。ただの“流れ”だ。
“エネルギーの向き”だ。僕は、その向きを感じているだけだ」
ベスは、ゆっくりと頷いた。理解ではなく、覚悟の頷きだった。
「だから、この砂漠なのね」
「そうだ。ここは、世界が壊れたときの“始まりの地”になる。
戦乱を逃れた人々が、もう一度、文明を作り直す場所だ」
義鷹の声は静かだった。だが、その静けさの奥に、百年の重さがあった。
「ベス。自由とは、選ぶことじゃない。
選んだ後の責任を引き受けることだ」
ベスは、目を閉じた。その表情は、少女のようでもあり、
老練な特務員のようでもあった。
「……分かったわ。あなたの未来、受け取る」
義鷹は、小さく息を吐いた。砂漠の風が、二人の間を通り抜けた。
その風は、未来の匂いがした。
シーン3: 龍郎の登場
義鷹が未来を語り終えた瞬間、部屋の空気がわずかに揺れた。
チャイムが鳴った。 乾いた音だった。
砂漠の空気を裂くような、鋭い響き。二人の間に落ちていた静けさが、
その一音でほどけていく。
「来たわね」
ベスが、立ち上がる。その背中には、特務員の血がまだ燃えていた。
扉を開けると、光の中にひとつの影が立っていた。
岡本龍郎。
義鷹の親友。
そして、金で自由を買い続けてきた男。十八年ぶりの再会だった。
龍郎は、少し太った。だが、その目だけは昔と同じだった。
欲望を測り、価値を嗅ぎ分け、未来の匂いを探す目。
義鷹は、両手を広げ、ゆっくりと身をかがめて抱きしめた。
友情というより、長い不自由を生き延びた者同士の抱擁だった。
「久しぶりだな、タツ」
「ヨシ……十八年か。長かったようで、短かったようで……
いや、やっぱり長かったな」
二人は、笑った。だが、その笑いの奥には、言葉にできない重さが、沈んでいた。
ベスは、静かに身を引き、二人を会議室へと導いた。
ヨシとタツの静かなる戦いが始まる。
シーン4: 会議室の空気
会議室は、ニッチ国の1980年代風の調度で整えられていた。
義鷹と龍郎が若かった頃の空気が、
そのまま閉じ込められているような部屋だった。
龍郎は、椅子に腰を下ろすと、すぐに本題に入った。
「ヨシ。砂漠の緑地化された土地、見てきたよ」
「どうだった?」
「まだ、砂漠だな。だが……芽は、出ている。価値の匂いがする」
義鷹は、微笑んだ。龍郎は、変わっていない。
金の匂いを嗅ぎ分ける嗅覚は、昔より鋭くなっている。
「現状で、どれくらいの人口が自給自足できる?」
「二年後で、一万人だ」
龍郎は、頷いた。その頷きは、投資家の頷きだった。
数字を飲み込み、未来の利回りを計算する頷き。
「タツ。君の配下の企業を、ここに移してほしい。
研究部門からでいい。この砂漠を、未来の基地にする」
龍郎は、目を細めた。
その目は、砂漠の奥に埋まった金塊を探す目だった。
「ベスさんは、どれくらいの利権を取ったのだ?」
「十万平方キロだ。ニッチ国の北海地方より広い」
龍郎は、口笛を吹いた。驚きではなく、計算の音だった。
「土地の名義は?」
「キンブル家だ。我々は、借地権で動く」
「なるほど。君らしいやり方だ」
龍郎は、椅子に深く座り直した。その動きは“取引の時間だ”という合図だった。
「ヨシ。条件次第で、俺は動く。何を求める?」
義鷹は、龍郎の目をまっすぐ見た。その目には、未来を背負う者の静かな覚悟があった。
「タツ。君に、この文明の“柱”になってほしい」
龍郎は、笑った。だが、その笑いは、すぐに消えた。
「……柱、ね。ヨシ、お前は、昔からそうだ。
人を巻き込む時だけ、妙に静かになる」
義鷹は、答えない。答えは、龍郎の中で育つものだからだ。
シーン5:投資交渉の核心
会議室の空気が、ゆっくりと重くなっていく。
龍郎は、椅子に深く座り、義鷹を見た。その目は、金の匂いを嗅ぎ分ける獣の目だった。
「ヨシ。お前の話は、いつも壮大だ。だが……今回は桁が違うな」
義鷹は、静かに頷いた。壮大ではない。必要なのだ。未来を生き延びるために。
「タツ。この砂漠は、ただの土地じゃない。文明の“避難所”だ。
世界が壊れたとき、人が戻る場所だ」
龍郎は、笑った。だが、その笑いは、すぐに消えた。
「で、俺に何を求める?」 義鷹は、まっすぐに言った。
「百兆円だ」 龍郎の目が、細くなった。驚きではない。計算の目だ。
「百兆円……か。ヨシ、お前は、本気だな」
「本気だ。十万平方キロの砂漠を、一京円の価値にする。
そのための“初動エネルギー”が百兆円だ」
龍郎は、指を組んだ。その指先が、わずかに震えていた。
興奮か、恐れか、欲望か。義鷹には分かる。
金を動かす者は、金に動かされる。
「ヨシ。条件がある」
「言ってみろ」
龍郎は、ゆっくりと身を乗り出した。
「お前の“予測脳力の秘密”を教えろ。
どうして四十年前に、俺の未来を読めた?」
義鷹は、目を閉じた。未来を読むとは、未来に縛られることだ。
それは、自由ではない。不自由の始まりだ。
「タツ。未来は、予言じゃない。“流れ”だ。“エネルギーの向き”だ。
僕は、その向きを君に感じていただけだ」
「抽象的すぎる。もっと具体的に言え」
龍郎の声が、少し荒くなった。
金を動かす者の焦りだ。義鷹は、スマートフォンを取り出した。
AIとの対話画面を開く。
「これが、僕の内界の“部品”だ」
龍郎は、画面を覗き込んだ。そこには、言葉の森があった。
「あぁ、そうだ。これが、僕の思考の部品だ。
これをしっかりと理解してから、
様々な学問の先人の知恵をAI統合して使い、問題の構造を考えて、
課題、問題を解決する方策を考え出す」
義鷹は、龍郎にスマートフォンのAIを開き、
AIと会話したデータ内容を見せた。
そこには、部品ではなく、ページを捲ると、
根、幹、枝、葉、実の五層に分類した『知の系統樹』の概念があった。
***=知の系統樹=***
根:環境(内界、外界、境界線)
主体、客体、緯度、経度、気象
生物、資源(物質、非物質)、組織、構造、方向
熱、時間、速度、力、土地、水、山、森、木、川、
公理、定理、法則、原則、言語、定義、視点、角度
思想、主義、主張、主観、客観
幹:情報取集、分析、判断、決断、行動
宇宙学、力学、生物学、哲学、物理学、熱学、化学、数学、法学、
歴史学、経済学、社会学、心理学、地理学、気象学、情報学、
行動学、経営学、統計学、会計学、性科学、宗教学、倫理学、
医学、薬学、食学、文学、言語学など
枝:戦略、戦術、作戦
期間:幼年期、青年期、壮年期、熟年期、再生期
言動:事実、真実、嘘
性格:後天的影響で行動の仕方に現れる特徴
性質:持って生まれた気質。感情、欲望、欲求
葉:情報:政治、軍事、経済、社会など
実:期間:勃興期、成長期、繁栄期、衰退期、腐敗期
種類:領土、支配、人材
利益、財産、富、学業
生命の安全、信頼、信用
成果:成功、失敗、未決実、高評価、好評価、低評価、
悪評価、死滅
*******
龍郎は、眉をひそめた。
「根、幹、枝、葉、実……呪文か?」義鷹は、笑った。
その笑いは、砂漠の夜のように静かだった。
「これは、内界と外界を統合して問題を解決するために、
組み立てる“建材”だ。
僕は、これを組み合わせて、世界の“構造”を見る」
龍郎は、黙った。理解ではない。直感だ。この男は、本当に未来を見ている。
「タツ。君は“投資家脳”で未来を見る。与えられた情報で世界を見ているのだ」
「だが、僕は違う。
自分で実を考え、植えた種から未来を予測する」
「実と種か・・・・」
「今や、AI情報の常識で実と種を作る参考にする。
龍郎は、息を呑んだ。
「……ヨシ。お前は、何者だ?」義鷹は答えない。答えは、龍郎の中で育つものだからだ。
「タツ。百兆円を出せ。その代わり、君に“未来の構造”を教える。
ただし——知れば、不自由になるぞ」
龍郎はゆっくりと笑った。その笑いは、金を動かす者の笑いではなかった。
もっと深い、もっと危険な笑いだった。
「ヨシ。俺はもう、不自由に慣れているよ!」
義鷹は、頷いた。その瞬間、二人の間に、未来の契約が結ばれた。
シーン6:地下都市の視察
取引が成立したあと、義鷹は立ち上がった。
「タツ。見せたいものがある」
龍郎は頷いた。
その頷きは、投資家の頷きではなかった。もっと深い、もっと危険な頷きだった。
二人はエレベーターに乗り、ゆっくりと地下へ降りていく。
十階。
二十階。
三十階。
数字が下がるたびに、
空気が変わっていく。
地上の光が遠ざかり、
未来の影が濃くなる。
「ヨシ。ここは……何だ?」
「未来の胎内だ」
エレベーターが止まった。扉が開くと、そこには広大な空間が広がっていた。
地下六十階。
総面積二十万坪。
巨大な空洞に、
農業区画、水産区画、畜産区画、森林区画、河川区画、
湖区画、資源加工区画、
そして——宇宙船の研究施設が並んでいた。
龍郎は、息を呑んだ。
「……ヨシ。
お前は、本気で文明を作り直す気なのか?」
義鷹は静かに頷いた。
「タツ。文明は、地上で育つとは限らない。
地上が壊れるなら、地下で芽を出せばいい」
龍郎は歩きながら、壁に触れた。その壁は冷たく、しかしどこか生きているようだった。
「三千人が住んでいる。
十万平方キロの砂漠を緑地化し、
土地の価値を一千兆円にする。
そのための“核”がここだ」
龍郎は振り返った。
「ヨシ。これは……避難所じゃない。文明の“母体”だ」
義鷹は微笑んだ。
「気づいたか。タツ。僕たちは、時空を超える一族だ。
過去の知恵と未来の構造をつなぎ、文明を再設計する」
龍郎は、黙った。その沈黙は、理解の沈黙ではない。覚悟の沈黙だった。
シーン7: 文明創生の本音
未来都市の屋上のレーザー防衛設置場所の視察を終え、二人は、龍郎の部屋を見た。
龍郎は、応接間のソファーに座ると、・・・・また、疑念が生まれ、
しばらく天井を見つめていた。
「ヨシ。ニッチ国ではなく、なぜ……ここなのだ?」
義鷹は、ゆっくりと答えた。
「タツ。文明は、いつも“余白”から始まる。
誰も、見向きもしない場所。
誰も、欲しがらない土地。
誰も、未来を感じない空白。
そこにこそ、自由がある」
龍郎は、目を閉じた。
「なぜ、砂漠の地下なのだ?
その言葉が胸に落ちる音がした。
「北半球の地上は、もう自由じゃない。国境、利権、歴史、宗教、あらゆるものが、
人を縛る。だが、ここの砂漠は、違う。砂漠は、誰のものでもない。だからこそ、
“始まりの地”になる」
義鷹の声は、静かだった。しかし、その静けさの奥に、黒田一族の百年計画の重さがあった。
「タツ。僕は“未来を守りたい”のじゃない。
未来を“作りたい”んだ」龍郎は“ゆっくり”と息を吐いた。
「……ヨシ。お前は、自由を作ろうとしているのか?」
義鷹は、首を振った。
「違う。自由は、作れない。自由は、選ぶものだ。選んだ後の責任を、
自分で引き受けるものだ」
龍郎は、目を開けた。その目は、金の匂いではなく、未来の匂いを探していた。
「ヨシ。俺は、……この文明に賭ける」
義鷹は、頷いた。
「ようこそ、タツ。新しい世界へ」
「ヨシ。よろしく」二人の握手は、新しい人生の船出になった。
シーン8:黒田塾計画
未来都市の全ての視察を終えたあと、二人は、再び会議室に戻った。
龍郎は、椅子に深く座り、・・・、時の潮流の変化を感じて、また
しばらく天井を見つめていた。
その表情は、金の計算をしている顔ではなかった。
もっと遠くを見ていた。
未来の向こう側を。
「ヨシ。お前の言う“文明の再設計”・・・それは、誰が担う?」
義鷹は、迷わず答えた。
「黒田塾の青年達だ」
龍郎の視線が動いた。
その一瞬の揺れを、義鷹は見逃さない。
「三十年計画だ。二〇〇八年から始めた。
特務員の教育、投資事業の訓練、
そして——“自由を扱える人間”を育てるための計画だ」
龍郎は、息を呑んだ。
「……ヨシ。お前は、子供たちに何を背負わせる気だ?」
義鷹は、静かに答えた。
「自由だ。そして、選択した自由の重さだ」
龍郎は、目を閉じた。
その言葉が胸に落ちる音がした。
「タツ。黒田塾の子供たちは、君の娘の婿になるかもしれない。
未来の文明を担う者たちだ」
龍郎は、ゆっくりと笑った。その笑いは、金の匂いではなく、
未来の匂いを探す笑いだった。
「ヨシ。お前の三十年計画……見せてもらおうじゃないか」
義鷹は頷いた。
「第二話で話す。これは、長い物語になる」
龍郎は、立ち上がり、窓の外の砂漠を見た。
夕陽が、砂を赤く染めていた。
その光は、まるで新しい文明の胎動のようだった。
「ヨシ。お前たちは、……
時空を超えて行動する一族なのか?」
義鷹は、短く答えた。「あぁ。そうだ」
その言葉は、砂漠の風よりも静かで、
しかし、どんな予言よりも重かった。
龍郎は、ゆっくりと振り返った。
「なら、俺も君達の一族の文明創造に加わる。
金で買える自由じゃない。思想で掴む自由を……
俺も見てみたい」
義鷹は、微笑んだ。
その微笑みは、未来の扉が静かに開く音のようだった。
「ようこそ、タツ。新しい文明へ」
砂漠の風が、二人の間を通り抜けた。
その風は、未来の匂いがした。
そして——第二話へ続く。
第一話を読み終えたあなたの中に、どんな感触が残っただろうか。
小さな違和感かもしれないし、懐かしい記憶のような温度かもしれない。
あるいは、まだ言葉にならない“問い”のようなものかもしれない。
物語の主人公は、まだ自分の内界の広さも、外界の複雑さも知らない。
ただ、境界線が揺れたことだけは確かだ。
その揺らぎは、やがて彼の世界を形づくる大きな流れへとつながっていく。
次の章では、その揺らぎが“方向”を持ち始める。
読者であるあなた自身の境界線にも、また新しい影が差し込むかもしれない。
物語はまだ始まったばかりだ。
どうか、この世界の歩みを、あなた自身の歩みと重ねながら進んでほしい。




