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記憶のかけらと家族のかたち  作者: 櫻木サヱ
揺れる日常、支え合う日々

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ケアマネージャーとの話し合い

午後の光が差し込むリビング。直樹と美咲は、今日のために準備していた資料をテーブルに広げていた。ケアマネージャーとの話し合いは、母の今後の生活やデイサービスの利用、介護負担の調整などを決める大事な時間だ。


「こんにちは、よろしくお願いします」

ケアマネージャーの穏やかな声が響く。優しさの中に、プロとしての確かな自信が感じられる。


母・陽子は少し緊張して椅子に座る。手を膝に置き、静かに深呼吸をする。


「今日は、お母さんの生活のことについて一緒に考えたいと思います」ケアマネージャーは資料を手に、やさしく話を切り出す。


直樹は深く息をつきながら、母の目をちらりと見る。

「母さん、無理に答えなくていいから。僕らも一緒に考えるから」


美咲は母の手を握り、微笑む。

「そうよ、母さん。安心して話して」


しかし、母は眉をひそめ、小さな声でつぶやく。

「私…何を言えばいいのかしら…忘れちゃうことも多いし…」


直樹は胸がぎゅっと締め付けられる。母が混乱するのを見て、自分の無力さを痛感する。


ケアマネージャーは静かに頷き、優しく言った。

「大丈夫です。覚えていないことは無理に思い出す必要はありません。私たちが整理して、一緒に考えましょう」


話し合いは、母の希望と家族の負担のバランスを探る時間となった。

「やっぱり、母さんが楽しめるデイサービスが一番だと思う」美咲が言うと、直樹も同意する。


しかし、意見は完全には一致しない。

「でも、負担を減らすためにはもう少し厳しくルールを設けるべきかも…」直樹が言う。

「厳しすぎると母さんが不安になるわ」美咲が返す。


葛藤の中、母は小さく微笑む。

「二人とも…ありがとう。私、あなたたちの気持ちがわかるだけで幸せよ」


ケアマネージャーは資料を整理しながら、穏やかにまとめる。

「家族の思いも大事です。母さんの気持ち、二人の意見、私の提案を合わせて、無理のない計画を作りましょう」


話し合いが終わる頃、母は少しほっとした顔を見せた。

直樹も美咲も、互いに小さくうなずき合う。葛藤はまだ残るが、それを乗り越えて母を支える決意がより強くなった瞬間だった。


家族とケアマネージャーの間に、静かな信頼と温かさが生まれた。

外の光がやわらかく差し込み、部屋の中を静かに満たす。葛藤も不安も、家族の思いと寄り添いで少しずつ解けていく――そんな午後のひとときだった。


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