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記憶のかけらと家族のかたち  作者: 櫻木サヱ
新しい日常の光

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88/90

小さな日々と積み重ね

朝、施設の光は柔らかく差し込み、母・フミの顔を優しく照らす。母は歩行器を頼りにゆっくり歩くが、今日はいつもより少し自信を持っているように見える。忠彦は後ろからそっと支えながら、母の表情を見つめる。


「母さん、今日も焦らんでええけぇ」

母は小さくうなずき、安心した笑みを浮かべる。美佐も隣で手を添え、母の手に触れる。その手の温もりが、母の心に静かな安らぎを生む。


午前中のリハビリでは、母が少しふらつく瞬間があったが、忠彦と美佐がすぐに支える。ナースの美咲は離れた場所から観察し、職員に助言する。

「家族が日常に寄り添うことで、母さんの安心感は格段に高まります。小さな成功体験を積み重ねることが大切です」


昼下がり、庭で散歩。母は咲き誇る花を眺めながら、穏やかな表情を浮かべる。忠彦がそっと声をかける。

「母さん、今日は花が特にきれいに咲いとるね」

母は目を細め、少しうなずく。美佐も手を添え、母との時間を大切に過ごす。


午後、室内で母が椅子を押す場面があったが、忠彦と美佐が落ち着かせる。

「大丈夫じゃ、母さん。父ちゃんがおるけぇ安心して」

母は徐々に落ち着きを取り戻し、微笑む。ナースの美咲はそっと記録に残す。


夕方、家族は談話室で一緒に過ごす。忠彦は母の手を握りながら、小さな日常の積み重ねが家族の絆を強めていることを実感する。美佐も手を添え、母の安心感を共有する。


夜、ベッドサイドで手を重ねる家族。母は穏やかに呼吸を続け、忠彦と美佐は静かに寄り添う。美咲は少し離れた場所から見守り、記録にこう残す。

《揺れる日常でも、家族の手と心が母の安心を育む。小さな日々の積み重ねが、新しい日常の光となる》


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