家族の絆が織り成す午後
午前のリハビリが終わり、昼下がりの施設は柔らかな日差しに包まれる。母・フミは庭に出て、ゆっくりと花を眺めながら歩く。忠彦は隣で手を添え、美佐も母の反対側で見守る。
母が一瞬、立ち止まり、遠くの空を見つめる。
「家に帰りたい…」
忠彦は静かに手を握り、優しい声で答える。
「焦らんでええ、母さん。ここで一緒におるけぇ、安心して」
母は短くうなずき、庭の花に目を戻す。美佐も手を添え、母の視線を落ち着かせる。家族の支えが、母の心に静かな安らぎを与える瞬間だった。
午後、室内で母が少し暴れる場面があった。ナースの美咲が横で観察しつつ、職員に指示を出す。
「母さんが暴れるのは不安や疲れからです。焦らず、声かけと手を添えることで落ち着かせましょう」
忠彦は母の手を握り、ゆっくりと声をかける。
「大丈夫じゃ、母さん。父ちゃんがおるけぇ安心して」
母は少しずつ落ち着き、椅子に腰を下ろす。美佐もそばで手を握り返し、家族の温かさが母の心に届く。
その後、家族は談話室でゆっくり過ごす。母は穏やかに微笑み、忠彦と美佐がそれぞれ手を添える。ナースの美咲も少し離れた場所から見守り、記録を取りつつ、家族の様子に微笑む。
「こうして少しずつ、母さんも私たちも慣れてきたんじゃな」
忠彦の言葉に、美佐も頷く。家族の日常が安定し、母の安心感が深まっていく瞬間であった。
夜、ベッドサイドで手を重ねる家族。母は穏やかに呼吸を続け、忠彦と美佐も静かに寄り添う。
美咲は少し離れた場所から観察し、記録にこう残す。
《日常の小さな出来事の積み重ねが、母の安心と家族の絆を育む。揺れる日常でも、寄り添う手が確かな支えとなる》




