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記憶のかけらと家族のかたち  作者: 櫻木サヱ
新しい日常の光

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86/90

揺れるココロと寄り添う手

朝、施設の廊下に柔らかな光が差し込む。母・フミは歩行器を頼りにゆっくり歩くが、時折立ち止まり、遠くを見つめる。その視線には、まだ少しの不安が混ざっている。


忠彦は母の背後からそっと手を添え、肩に触れながら声をかける。

「母さん、今日はゆっくりでええんじゃけぇ」


母は微かにうなずくが、目の奥に揺れを感じさせる。娘の美佐も隣で手を添え、そっと母の手を握る。家族の存在が、母の心を少しずつ安定させる。


午前中、リハビリ室で母が椅子から立ち上がろうとした瞬間、少しふらつく。忠彦がすぐに支え、美佐も手を添える。

「大丈夫じゃ、母さん。父ちゃんがおるけぇ」

母は短くうなずき、肩の力が少し抜ける。


ナースの美咲は離れた位置から観察し、記録を取りつつ、職員に助言する。

「家族の関与が母さんの安心につながります。小さな変化や揺れにも焦らず対応することが大切です」


昼下がり、庭で散歩中、母が立ち止まり「帰る」とつぶやく。忠彦は手を握り、優しく声をかける。

「焦らんでええ。ここで一緒に歩こう」


母は短くうなずき、再び歩き始める。美佐も隣で励まし、家族の絆が揺れながらも確かなものになっていることを実感する。


午後、室内で母が少し暴れる場面がある。ナースや職員が駆け寄るが、忠彦と美佐が落ち着かせる。

「大丈夫じゃ、母さん。父ちゃんがおる」

母は徐々に落ち着きを取り戻す。


夕方、談話室で家族が集まり、今日の出来事を振り返る。忠彦は静かに言葉を紡ぐ。

「母さんも、わしらも、少しずつ慣れてきたんじゃな」

美佐も頷き、母との時間を大切にしながら、家族の成長と支えの大切さを実感する。


夜、ベッドサイドで手を重ねる家族。母は穏やかに呼吸を続け、忠彦と美佐は静かに寄り添う。ナースの美咲は少し離れた場所から見守り、記録にこう書き残す。

《揺れる心も、家族の寄り添いによって少しずつ安定する。日々の支えが、母の安心と家族の絆を深める》


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