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記憶のかけらと家族のかたち  作者: 櫻木サヱ
新しい日常の光

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85/90

日常に馴染む家族の手

朝の光が施設の廊下に差し込む。母・フミは歩行器を頼りに、ゆっくりと自分のペースで歩く。忠彦は母のそばに寄り添い、肩に手を添えながら静かに声をかける。

「母さん、今日も焦らずでええんよ」

母は短くうなずき、安心した表情を見せる。美佐も横で手を添え、母の手に触れる。家族の温もりが、母の心に静かな安らぎを与える。


午前中、リハビリ室では母が少しふらつく場面があった。だが、忠彦と美佐が素早く支え、母を落ち着かせる。ナースの美咲は横で見守り、記録に残す。

「家族の関与は母さんの安心感に直結します。焦らず少しずつ積み重ねることが大切です」


昼下がり、庭での散歩。母は咲き誇る花を眺めながら、わずかに微笑む。忠彦が声をかける。

「母さん、今日は花が特にきれいに咲いとるね」

母は目を細め、安心した表情を浮かべる。美佐も手を添え、母と花を見つめる静かな時間が流れる。


午後、室内で母が椅子を押してしまう小さな事件が起こる。しかし、忠彦がすぐに支え、美佐も励ましの声をかける。母は短くうなずき、落ち着きを取り戻す。ナースの美咲は少し離れた位置から観察し、職員に助言する。

「小さな変化や事件に焦らず対応し、家族が日常に寄り添うことが母さんの安心につながります」


夕方、談話室で家族が集まる。忠彦は母の手を握り、日々の小さな成長や安定感に目を向ける。美佐も手を添え、母との時間を大切にする。

「こうして少しずつ、母さんも私たちも慣れていくんじゃな」

忠彦の言葉に、美佐も頷く。家族の日常が少しずつ落ち着き、安定したリズムが生まれていることを感じる瞬間であった。


夜、ベッドサイドで家族が手を重ねる。母は穏やかに呼吸を続ける。忠彦は深く息をつき、家族の手が母の安心を作り出していることを実感する。美佐も手を握り返し、静かな夜の時間が部屋を包む。


ナースの美咲は記録にこう残す。

《家族が日常に馴染み、少しずつ母の安心感が安定する。日々の積み重ねが、新しい日常の光を生む》

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