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記憶のかけらと家族のかたち  作者: 櫻木サヱ
小さな日常の奇跡

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83/90

小さな日々と奇跡

朝の光が窓から差し込み、施設の廊下は穏やかな空気に包まれていた。母・フミは歩行器を使いながら、少しずつ自信を持って歩く。ナースの美咲は横で見守り、記録を取りつつ、家族の様子も注意深く観察している。


忠彦は母のそばを歩きながら、静かに声をかける。

「母さん、今日も無理せずゆっくりでええんよ」

母は微かに笑みを浮かべ、安心したように頷く。娘の美佐も隣で手を添え、家族の温かさがそっと母を包む。


午前中のリハビリでは、母が少しバランスを崩す場面があったが、忠彦と美佐が素早く支え、落ち着かせる。

「焦らんでええ。父ちゃんがおるけぇ」

母は短くうなずき、微笑む。ナースの美咲は離れた位置から見守り、記録にこう書き残す。

《家族の手と心が、母の安心を育む。小さな成功体験の積み重ねが、日常の安定につながる》


昼下がり、庭での散歩。母はゆっくりと花を眺め、忠彦がそっと声をかける。

「見てごらん、母さん。今日は花がきれいに咲いとるね」

母は目を細め、優しい表情を見せる。娘の美佐も一緒に花を見つめ、静かな時間が家族に流れる。


ナースステーションでは美咲が職員と情報共有。

「家族が日常に寄り添うことで、母さんの安心感が増しています。無理せず、焦らず、少しずつの積み重ねが大切です」

職員たちはうなずき、日々のケアの意味を改めて理解する。


夕方、施設の談話室で家族が集まる。忠彦は静かに母の手を握り、美佐も両手を添える。母は目を閉じ、穏やかな呼吸を続ける。

「父ちゃんも、わしも、がんばらんとな」

忠彦は静かに頷き、家族の支えの大切さを改めて実感する。


夜、ベッドサイドで、家族が手を重ねる。ナースの美咲は少し離れた場所から見守る。静かな時間の中、家族の絆と、母の安心がしっかりと繋がっていることを感じる。


《揺れる日常の中で、家族と職員、ナースの支えが重なり合い、母の安心と家族の絆を育む — 小さな日々の奇跡が、確かに存在する》

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