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記憶のかけらと家族のかたち  作者: 櫻木サヱ
近くて遠い、でも繋がる心

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夫婦の愛情

夕方、施設の庭。母は椅子に座り、穏やかな表情で花を眺めている。

ナースはステーションから静かに観察する。歩行も安定し、表情は柔らかい。


娘と父が訪問する。

娘は母に手紙を渡し、穏やかな声で話しかける。

「今日は楽しかったね」

母は短く微笑み、手紙をそっと受け取る。


父はそばに立ち、最初は無言で見守っていた。

ナースが小声で助言する。

「無理に話す必要はありません。そっと見守るだけでも、母に安心感を与えられます」


父は深く頷き、母の表情に目をやる。

そして小さな声でつぶやく。

「これまで、どう関わればいいのか分からなかった…。でも、こうして見守るだけでも、安心させられるんだな」


ナースは心の中でうなずく。

「介護は手を出すことだけが愛情ではありません。寄り添い、安心を与えることも大切です」



母はゆっくり手を伸ばし、娘の手に触れる。

父もそっと母の肩に手を置き、微笑む。

その瞬間、家族全員が、母との距離感と信頼感を再確認する。


ナースは記録を取りつつ、心の中でほっと息をつく。

「小さな日常の積み重ねが、母と家族の絆を確かに深めている」



夕日の光に包まれ、母は庭の花を指さしながらつぶやく。

「きれいだね」

娘は笑顔で返し、父も微笑みで応える。

ナースはそのやり取りを静かに見守り、第三者としての観察と、人情味あふれる家族の成長を心に刻む。



家族は介護を通して、愛情や信頼の形を再認識した。

無理に過去を取り戻すことではなく、今この瞬間を共に過ごし、互いに安心を与え合う――それが家族の新しい日常となったのだった。


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