寝室の小さな笑い
夜も深まり、家の中は静けさに包まれた。
陽子は寝室のベッドに腰を下ろし、布団を整えながら小さくため息をつく。今日一日の出来事を思い返す。
「今日は…色々あったわね」母の声は、ほのかに疲れと安堵が混ざっていた。
直樹はベッドの横に座り、母の手をそっと握る。
「うん、でも母さんの笑顔が見られてよかったよ」
美咲も布団に腰を下ろし、母の肩にそっと手を添える。
「そうね、母さん。今日も一緒に過ごせてよかった」
母はにっこりと微笑む。
「ありがとう…ほんとに、ありがとうね」
陽子の目には、まだ少し涙の跡が残っている。でも、その奥には温かい光が宿っていた。
直樹は母の手のぬくもりを感じながら、小さな笑いを誘う質問をしてみた。
「ねえ母さん、今日は誰がご飯作ったんだっけ?」
母は一瞬考え込み、眉をひそめる。
「えっと…誰だったかしら…あら、二人とも?」
三人は顔を見合わせて、くすくすと笑った。
笑い声が寝室に響き、心の奥の緊張がふっと解ける。混乱も苛立ちも、家族の笑いと温かさで包まれてしまう。
母は布団に体を横たえ、安心したように目を閉じる。
直樹も美咲も、母の隣に座ったまま静かにその時間を共有する。
今日の小さな騒動や涙も、明日の笑顔につながっている――
家族の愛情、思いやり、そして絆が、静かな夜の中でしっかりと光を放っていた。
窓の外には月明かりが差し込み、部屋の中を優しく照らす。
母の呼吸がゆっくりと落ち着き、直樹と美咲もまた、胸の奥に深い安堵と温かさを感じながら眠りにつく。
涙と笑い、混乱と優しさ――すべてが重なり合った一日が、静かに幕を閉じた。
そして、この日常の一つひとつが、家族の絆を確かに強くしているのだった。




