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記憶のかけらと家族のかたち  作者: 櫻木サヱ
近くて遠い、でも繋がる心

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助けになる言の葉

朝の施設。母は窓際の椅子に座り、静かに庭を眺めている。

表情は落ち着き、歩行も安定している。ナースはステーションから観察を続ける。


ドアの向こうには、娘と父の姿。

久しぶりに訪れた家族は、少し緊張気味に母の様子を伺う。

ナースは静かに声をかける。

「今日は訪問のタイミングとして良い時間帯です。母の安心度が高く、少しずつ家族との触れ合いが効果的に伝わります」



娘は母の手を握ろうとするが、少し迷う。

ナースはそっと助言する。

「手を握るときは、穏やかな声で名前を呼びながら。短時間でも構いません。無理に長く触れ合おうとすると、母が混乱することがあります」


父は娘の様子を見ながら、目を細める。

ナースは続ける。

「会話は短く、穏やかに。『今日は良い天気だね』『お花がきれいだね』といった具体的で簡単な言葉が、母に安心感を与えます」



母は少し戸惑った表情を見せるが、やがて小さく微笑む。

ナースは記録にメモを取りつつ、家族にさらなる助言をする。

「訪問の後は、日記のように短い手紙を書いて伝えると良いです。家族が来たことや笑顔を思い出すことで、安心感が持続します」



午後、母は庭をゆっくり歩きながら、職員と談笑する。

ナースは施設長と簡単にやり取りする。

「家族の関わり方次第で、母の安心度が変わります。焦らず、少しずつ関わるのが大切です」

施設長は頷き、静かにステーションを離れる。



夕方、娘はナースの助言に従い、母に短い手紙を渡す。

「今日は楽しかったね。笑顔を見せてくれてありがとう」

母は手紙を手に取り、小さく頷く。

父もそっと娘の肩に手を置き、互いに穏やかな微笑みを交わす。


ナースはその様子を静かに観察し、第三者目線で記録する。

母と家族の距離が、少しずつだが確実に縮まっている瞬間だった。


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