表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
記憶のかけらと家族のかたち  作者: 櫻木サヱ
揺れる日常、支え合う日々

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/75

家族会議の夜

夜のリビング。蛍光灯のやわらかな光が部屋を満たす中、家族三人と母、そして夫の浩一が円になって座った。今日は、母の今後の生活やデイサービスの利用について話し合う家族会議の日だ。


母・陽子は少し緊張した面持ちで座り、手を膝に置く。

「今日は…どういう話し合いになるのかしら…」小さな声でつぶやく。


直樹は資料を前に、静かに口を開く。

「母さん、最近の混乱や忘れっぽさ、僕たちは少し心配してるんだ。だからデイサービスや介護のこと、みんなで考えたい」


浩一は腕を組み、軽く笑った。

「そんなに大げさなことじゃない。母はまだ大丈夫だろう」


母も、うなずきながら微笑む。

「そうね、私もまだ大丈夫だと思うわ」


直樹の眉がピクリと動く。

「でも今日のデイサービスでも、少し混乱していたじゃないか」


美咲はそっと直樹の手を握る。

「落ち着いて、直樹。母さんは混乱したことを自覚してないだけよ」


浩一は少し苛立った様子で言う。

「そういうことを言うと、母さんが傷つくぞ。大丈夫なんだって」


直樹は小さく息をつき、資料を見つめながら言葉を選ぶ。

「でも、大丈夫かどうかじゃなくて、母さんが安全に過ごせるかどうかが大事なんだ。僕たちは、そのために支えたいだけなんだ」


母は静かに息を吐き、目を伏せる。

「ごめんなさい…みんなを心配させちゃうわね」


美咲が優しく手を握る。

「謝らなくていいの。私たちは母さんを支えたいだけ。怒っているわけじゃない」


浩一も少し表情を和らげる。

「わかった…俺も無理に認めろとは言わない。ただ、子どもたちの気持ちは尊重するよ」


リビングに、静かだが確かな温かさが漂う。意見の食い違いや葛藤はまだ残るが、家族全員が母の安全と幸せを第一に考えているという共通点が見えてきた瞬間だった。


母は微笑み、少し涙ぐんだ。

「ありがとう…みんな、本当にありがとう」


窓の外には夜風が吹き、部屋の中を静かに満たす。

葛藤も苛立ちも、涙も笑いも、すべてが家族の絆を強める糧になっている――

そんなことを、静かな夜の中で家族全員が感じていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ