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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

エッセイ_宗教勧誘に対する訴訟ビジネス

作者: 桐生彩音

・状況

 自宅。『訪問販売、宗教勧誘禁止』の張り紙が出されたマンション内にて、訪問による宗教勧誘発生。断ったものの、扉の郵便入れにチラシを入れられてしまう。

 特に強い呼び止めもなく、相手に対しても淡々と断るだけに(とど)めた。その後、残されたチラシに記載された連絡先を確認すると同時に、勧誘者の行動が法に反した行いではないかと考えてみる。

 以上より、先の出来事を利用して、訴訟ビジネスに活かせるのではないかと検討してみた。


・手順1、準備

 まずは自身の身分を作成する。

 個人情報は有事の際、自分もしくは周囲を危険に(さら)す可能性がある為、裁判の段階に至るまでは極力隠しておく必要がある。ただし、信頼に()る弁護士が知り合いにいる場合は、交渉の時点から全面的に任せた方が良い。

 自分で行う場合の立ち位置はあくまで代行人程度に(とど)め、『自分は弁護士ではない』、『法律の相談役(コンサルタント)として依頼された』等と事前に説明し、弁護士詐称のリスクを()けなければならない。その為、訴訟する段階に入る前から弁護士を探しておいた方が確実である。

 電話番号は、普段使いとは別に用意しておくこと。相手の宗教団体の関係者が電話会社に勤務している可能性もあるが、もし個人情報が流出した場合は『個人情報保護法違反』として告訴すれば良い。場合によっては『業務上横領罪』に該当させることも可能。いずれにせよ、すぐに使い捨てられる連絡先で対応した方がいざという時に身を守れるので、必ず用意すること。

 最後に、簡単な偽名を用意した方が無難かもしれない。弁護士先生に全てを(ゆだ)ねるのであれば問題ないが、事前に自分で交渉する際は『代行の○○です』と個人情報が特定されるのを()け、相手に対して、こちらの要求をストレートに伝えることに専念できるようにするべきである。


・手順2、交渉

 事前に用意した電話番号を使い、相手の連絡先に電話する。


例)『初めまして。法律コンサルタントを()()っております『○○(偽名)』と申します。こちらは『○○○○(相手の宗教団体)』の連絡先で間違いないでしょうか?』


 もし電話を切られた場合は、相手は法律にも精通している可能性があるので、この段階で訴訟ビジネスの対象にはならないと判断して諦める。その後は素直に警察か弁護士に相談するか、『特に揉めなかったし、別に良いか……』と忘れるかは、個人の判断に委ねる。

 しかし、少しでも耳を傾けてきた場合は、即座に状況を伝える。


例)『実は依頼人の住むマンションに、そちらの関係者が無断で侵入し、宗教勧誘されたという相談を受けました。エントランスには『訪問営業、宗教勧誘お断り』の張り紙が張られていたにも関わらず、(おこな)われたそうです。もし本当であれば法に抵触している可能性がありますので、後日弁護士の先生に相談したいと考えております。『○○○○(マンション名)』に『○~〇時(訪問された時間帯)』頃、(おとず)れた関係者の方はいらっしゃいますでしょうか?』


 この時の注意点が三つある。

 ①半ば棒読みでも構わないので、緊張している様子を一切見せないよう、淡々と伝える

 ②具体的な罪状は明かさない

 ③訪問時間ではなく、訪問された時間帯を伝える

 まず①は、こちらの態度がいかに真面目で本気であるのかを、相手に見せつける為に必要な『威嚇』行為である。なまじ緊張して途切れ途切れになってしまったり、相手を挑発するような軽い態度ではまともに対応して貰えない。軽く練習してみて、難しそうであればその段階で止めておいた方が無難だろう。逆に、毅然(きぜん)とした態度で用件を伝えた場合はこちらの本気度合いを察して、真剣に話を聞く姿勢をみせてくる。行き過ぎれば、向こうも弁護士もしくは担当の専門家に代わってくるだろうが、団体規模によっては備えていない可能性が高い、電話を切るか話を聞くしかないのだ。

 次に②は、こちらの知識不足を明かさない為である。まず前提条件として、自分で連絡を入れた場合はあくまで『依頼人の代行』という立場であり、『弁護士』ではないことを改めて自覚して欲しい。知識不足を揶揄(やゆ)されて話自体が終わるのはもちろんのこと、相手を有罪にできても、身分の詐称で逆に起訴される可能性は十分にある。あくまで自分は『代行人』であり、『依頼人の代わりに弁護士へと依頼する為に状況を整理している』という(てい)を貫かなければならない。

 最後に③は依頼人、つまり自分だと特定されない為の手段である。正直に『何時頃に訪問された』と伝えてしまえば、相手の記憶力や訪問記録を残していた場合はすぐに特定されてしまうおそれがある。あくまで必要なのは『何時から何時頃に、どこにいた関係者か』を相手に伝えることである。細かい時間帯は弁護士にだけ伝え、必要に応じてマンションの管理人に監視カメラの映像を確認して貰う程度に考えておく方が(のぞ)ましいだろう。時間の感覚としてはマンションの総戸数にもよるが、大体一時間位を目安にしておくと良い。一軒ごとに時間を掛けてないのであれば、一時間もせずに回り終えてしまうからだ。


 手順3、交渉結果

 相手の行動は、大まかに3パターンに分かれると考えられる。

・パターン1、電話を切られる

 これは相手が不利に思って、もしくは訴訟ビジネスだと感じ取って逃げ出したと(とら)えるべきだ。まともに相手をする気がないのであれば、こちらも取り合ったとして時間の無駄なので、早々に手を引くべきである。それでも納得できない場合は、警察か弁護士に相談するべきだろう。

・パターン2、勧誘者を差し出される

 実は最初から、対象を『宗教団体』ではなく『その関係者』に絞っていた。その理由は、『宗教の自由』は法律で定められているからだ。その為、どのような教えであっても、その内容を否定することは許されていない。だから前提として、こちらはあくまで『法律に抵触している人間』に対して『弁護士に相談するか』を検討している(むね)を伝えることが目的である。なので、勧誘してきた人間が訴訟可能となった時点でほぼ達成したようなものだ。相手からの謝罪の有無はともかく、この段階で弁護士に相談し、示談金を徴収すればいい。

・パターン3、その他

 一番厄介なのは、相手が『話を聞く気がなく、逆に一方的に捲し立ててきた』時だ。その宗教団体の教えを(かい)しての説教だろうと感情に任せた恫喝(どうかつ)だろうと、こちらの話を聞く気がない場合や強引に話を終わらせようとした場合はもう、こちらから電話を切り、一切の接触を()つべきだろう。一方的な価値観の押し付けはあくまで『主張』であり、『話し合い』では断じてないからだ。


・手順4、片付け

 最後に、忘れてはいけないのが使用した電話番号の処分である。最初から弁護士に依頼しているのであれば不要だが、もし事前に用意していた場合、相手によっては無理矢理にでも持ち主を特定し始めるだろう。またマンションを訪れてきたのであれば今度こそ警察を呼べばいいが、電話番号から個人を特定されてしまえばその限りではない。なので必ず、電話番号の処分は忘れないように心掛けておこう。




 **********




「……これを見せられて、俺にどうしろと?」

「ちょっと、感想が聞きたくて」

 ある喫茶店でのことだった。

 私は流行遅れのコ(ピー)ナに感染し、しばらく自宅療養していたのだが、その間に宗教勧誘が来たのだ。その時は適当に追い払ったのだが、状況はスマホに載せた通りである。その後、『あれ、マンションに宗教勧誘って警察呼ばれるんじゃあ……』と呟いた後、浮かんだのがこの内容だった。

「ほら、訴訟ビジネスってあるじゃない? 弁護士が増えすぎたせいで外国張りに何でもかんでも訴えるようになったあれ。この件もいい小遣い稼ぎになるんじゃないかと思って」

「俺、契約更新前後だから、今は大人しくしときたいんだけどな……」

 そうぼやく昔馴染み(契約社員として再就職済み)は、眼前に出されたコーヒーには手を付けず、マスクを着けたまま眺めていたスマホをそのまま突き返してきた。

「そもそもこれ……費用対効果、どうなってるわけ?」

「費用対効果?」

 費用対効果とは、投資した費用や掛ける時間といったコストに対して、どれだけの利益(リターン)が見込めるかという言葉である。

「そういえば……罰金とかの相場は、調べてなかったわね」

「先に調べとけよ……」

 マスク越しでも呆れ顔がよく分かる彼を放置し、返して貰ったスマホで軽く検索をかけてみるが……『住居侵入罪』、つまり住居不法侵入だけでは『3年以下の懲役または10万円(・・・・)以下の罰金』と定められていた。

「安っ!」

「しかもたしか、お前が住んでるのは賃貸だろ? 分譲ならもしかしたらだけど、マンションの一室に訪問されても中に入れてないんじゃ、訴えるのも難しいんじゃねえの」

 これでは示談金の方も、たかが知れている。道理で誰もやらないわけだと、私は思わずテーブルの上へと突っ伏しそうになってしまう。

 けれども、どうにか気合を入れて、自分の分のコーヒーを飲み干した。

「ああ、もう。さっさと帰って続き書こ」

「そうしろそうしろ、俺ももう帰る」

 結局、マスクを外さないままコーヒーを残した彼は、(自分の分の)お金と私を置いてさっさと帰っていった。

「いい副業(お金)になると思ったんだけどな~……」

 コ(ピー)ナ感染後で機嫌が悪かったとはいえ、思い付きでここまで書いてしまったのももったいないかと思い、私は『エッセイ擬きの何か』として投稿することに決めた。


「まあ、『誰が読むんだ?』って話だけどね……」


 せめて、勧誘してきた宗教団体の人間ではないことを祈りつつ、私はそうぼやくしかなかった。

あとがき『ただの八つ当たりです』

 今回は単なる思い付きで書くだけ書いてみましたが、捉え方によっては訴訟ビジネスの皮を被った詐欺です。相手が誰であれ、場合によってはこちらが犯罪者になります。


『この物語はフィクションであり、登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在するものとは一切関係ありません。また、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』


 これは別に物語ではなく、病み上がりの八つ当たりで書いたリハビリ系エッセイ擬きどころか、エッセイですらない雑な提案書かもしれませんが、それでも法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。それに、本編にもあります通り、全然利益が見込めません。それ以上の被害を被った方は警察に行くべきでしょうが、そうでなければ適当にあしらった方が無難です。

 それに……相手もまた、人間なんです。わざわざ冷たい視線に晒されながら、クリアできる見込みのないノルマをこなそうと、ほぼ無駄な努力に必死になっているだけなんです。だから、興味がなければせめて手短に断り、相手の時間を短縮させてあげましょう。

 宗教は本来、信仰している人の為のものです。していない人は面白半分に関わる方がかえって失礼ですので、興味が出た時に話を聞くだけに留めておきましょう。

 かく言う私も、聖書に興味を持って読もうとすること位はありますが、熱心に教会へ通う程ではありません。学生時代に一度、アメリカの教会を訪れた時は皆フランクで楽しかった記憶があるのですが、日本に帰ってからは近所になかったこともあり、そのまま一回も訪れていません。

 つまり、何が言いたいのかというと……宗教もある意味、『社会人サークル』みたいなものだと私は考えています。自分がやりたければ続ければいい、興味がなければ入らなければいい、その程度の考えで十分だと思います。

 何事も、真剣に取り組めないなら(周囲に迷惑だから)関わるな、と最後に思った出来事でした。


 最後に、親愛なる昔馴染みへ……陰性確認までした人様を心配一つせずにバイ菌扱いしてきた罪で、今度会ったら処す!

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