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ユニーク賢者物語(修正版)  作者: ハヤテ
第4章 もう1つの「始まり」
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第94話 「雪村春風」について・3


 「さてと、それじゃあ今までの話を纏めるとだなぁ……」


 と、手をパンッと叩きながらそう言ったヴィンセントに、周囲が真剣な表情になると、


 「まず俺が思うに、今のところ『雪村春風』が()()()だってことだな。こうして話を聞く限り、そいつのことを大切に想ってる人間もいるからよ」


 と、ヴィンセントは歩夢、美羽、そして水音を見ながらそう言った。当然、その視線を受けて、3人は恥ずかしそうに顔を真っ赤にした。


 しかし、そんな3人を前に、


 「だが、そんな『いい奴』が何でお前さん達を置いてここを出て行ったかという疑問が現れたのも事実だ。ならば次は、『何故そいつがそんな行動を起こしたのか?』と『一体そいつの身に何が起きたのか?』とかについて話し合おうじゃねぇか」


 と、ヴィンセントがそう仕切ったので、その言葉に歩夢と美羽と水音はハッと我に返ると、爽子やクラスメイト達、そしてウィルフレッドとマーガレットに会わせるようにコクリと頷いた。


 それを見たヴィンセントも「よし」と頷くと、


 「まずはウィルフレッド。そして勇者達。『勇者召喚』が行われたあの日のことについて確認したいから、詳しい話を教えてくれ」


 と、周囲を見回しながらそうお願いした。その時の表情は凄く真剣だったので、皆、コクリと頷くと、当時のことを話し始めた。


 それから暫くして、


 「うーん……」


 と、話を聞き終えたヴィンセントが考える仕草をしながら唸っていると、


 「ど、どうだろうかヴィンス?」


 と、ウィルフレッドが恐る恐るそう尋ねてきたので、


 「こうして改めて話を聞いてみると、結構()()()あるな」


 と、ヴィンセントは考える仕草をしたままそう答えた。


 その答えを聞いて、


 「い、違和感……ですか?」


 と、爽子は首を傾げながら恐る恐るそう尋ねると、ヴィンセントは「ああ」と返事して、


 「まずは爽子センセ。センセは雪村春風のことを『静かで真面目で問題行動を起こすような子じゃない』と言ったよな?」


 と、爽子に向かってそう尋ね返した。


 その質問に対して、爽子が「は、はい」と返事すると、


 「次に、勇者・恵樹」


 と、ヴィンセントは次に恵樹に声をかけたので、それに恵樹が「はい!」とビシッとした姿勢で返事すると、


 「お前さんは確か、雪村春風のことを『自分から進んで何か言ったり行動したりするような奴じゃない』と言ったよな?」


 と、ヴィンセントは恵樹に向かってそう尋ねた。


 その質問に対して、恵樹が「は、はい」と頷くと、


 「だがあの日、雪村春風は自分から進んで『はい』と手を上げて、ウィルフに質問を始めた。これっておかしくないか?」


 と、ヴィンセントが再びそう尋ねてきたので、それを聞いた恵樹だけでなく爽子や他のクラスメイト達、そして、歩夢、美羽、水音は、


 『あ! そういえば!』


 と、今になって気付いたかのような表情でそう声をあげた。


 そんな彼・彼女達を他所に、


 「うむ、確かにその通りだな」


 と、ウィルフレッドがそう口を開くと、ヴィンセントは「だろ?」と返事した後、


 「そしてそれだけじゃねぇ、そいつがウィルフや()()()()に出した『質問』の内容だっておかしすぎる。やけに『勇者召喚』について尋ねてくるじゃねぇか」


 と、ウィルフレッドに向かってそう尋ねた。


 その質問を聞いて、ウィルフレッドが「そ、そうだな……」と返事する中、


 「……なぁ、今、ヴィンセント皇帝陛下が言った『クラりん』って……」


 「話の流れからして、クラリッサ様だろうな」


 「あ、うん。クラリッサ様のことだよ。本人はその呼び方について恥ずかしそうにしていたけど……」


 と、クラスメイト達がヒソヒソと話し合っていると、


 「うーん、雪村春風の人物像は大分わかったが、肝心のここを飛び出した理由がわからん。『勇者』じゃないにしても、ここで出来ることがない訳じゃねぇんだし、わざわざ騎士達を相手に暴れるっつう危険を犯してまで『外の世界』に出ようとするか?」


 「む、むぅそれはそうだが……」


 と話し合うヴィンセントとウィルフレッドの声が聞こえたので、


 (ああ、確かに変な話だよな)


 と、水音はそう感じた。


 その後、


 「だぁー! 駄目だ! なんか全然纏まらん!」


 と、ヴィンセントは「お手上げだぜ!」と言わんばかりに両腕を上げながらそう喚いたので、


 「お、落ち着くんだヴィンス……」


 と、ウィルフレッドが宥めに入ると、


 「せめて雪村春風が何の『職能』を持ってるかさえわかれば、そこから何かが掴めるかもしれねぇけどよぉ……」


 と、ヴィンセントはガクリと肩を落としながらそう言ったので、その言葉を聞いて、


 「ああ、『職能』かぁ……」


 「確かに、あいつそこまでの話はしてなかったよな?」


 「うん。僕達が知ってるのって『巻き込まれた者』の称号しかないもんね」


 と、水音達はそう話し合った。


 その言葉に反応したのか、


 「ん? そいつ、みんなに『称号』を見せたのか?」


 と、ヴィンセントがそう尋ねてきたので、その質問に対して水音達だけでなく、


 「ああ、それは間違いない。私もその称号をこの目で見ていたから」


 と、ウィルフレッドも続くかのようにそう答えた。


 その言葉を聞いて、ヴィンセントは「むむむ?」とまた考え込む仕草をしていると、


 「なぁ。そいつ、他にも何か言ってねぇか? もしくは行動でもいいんだが」


 と、ウィルフレッドや勇者達に向かってそう尋ねると、全員「え? え?」と戸惑いながらも、皆それぞれ当時のことを思い出そうと必死になっていた。


 すると、


 「あのー……」


 と、美羽が恐る恐る「はい」と手を上げたので、


 「む、どうしたんだい勇者・美羽?」


 と、ヴィンセントがそう返事すると、


 「関係あるかどうかはわかりませんが、彼……春風君が、騎士達をぶっ飛ばしてウィルフレッド陛下に『何者か?』と問われた時に、『ちょっとユニークな一般人です』って名乗ってたんですけど……」


 と、美羽は恐る恐るそう答えたので、


 「お、おう。まさに『何じゃそりゃ!?』な自己紹介だな……」


 と、ヴィンセントは若干引き気味にそう返事したが、


 「……ん? 『()()()()』?」


 と、すぐに「疑問」に満ちた表情になると、


 「そうか! 『固有職保持者(ユニークホルダー)』か!」


 と、ハッと気付いたかのようにそう声をあげた。



 

 


 

 

 

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