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ユニーク賢者物語(修正版)  作者: ハヤテ
第4章 もう1つの「始まり」

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第90話 「出会い」、そして、「弟子入り」


 「そんなある時、僕は師匠と春風に出会ったんです」


 と、そう話した水音に、


 「へぇ、そこでその2人が登場するのか」


 と、ヴィンセントがそう口を開くと、


 「ええ。これは後になって知ったことで、僕自身もその時のことは覚えてないのですが、なんでも僕が力を暴走させた現場に偶然居合わせていたみたいで、その時暴走を止めてくれたのが師匠だったんです。その後は、生きる気力をなくしていた僕の様子を見る為に、僕の家を訪れていたのです」


 と、水音はヴィンセントに向かってそう説明した。


 その説明を聞いて、


 「うーむ、そうであったか。それで、その後其方はどのようにしてその師匠殿の弟子となったのだ?」


 と、今度はウィルフレッドがそう尋ねると、水音は「それは……」と視線をヴィンセントからウィルフレッドに移して、


 「祖父から事情を聞いた師匠は何を思ったのか、僕と春風に()()をさせたのです」


 と、答えた。


 その答えを聞いて、


 『は? 試合?』


 と、ウィルフレッドだけでなくマーガレットにヴィンセント、爽子とクラスメイト達からそんな声があがった後、


 「えっと、何の試合なんだ?」


 と、ヴィンセントがそう尋ねてきたので、


 「格闘術の試合です。僕の家は魔物退治の傍らで、武術の道場をやってるんです。その為に僕も小さい頃から格闘術を習っていて、他にも剣術、棒術、弓術をやってました」


 と、水音は弱々しい笑顔でそう答えた。


 その答えに周囲から「おお!」と声があがる中、


 「……て、話が逸れてしまいましたね。とにかくもう一度言いますが、師匠が何を考えているのかわからないまま、僕は春風と格闘術の試合をすることになりました。最初は『訳がわからない』と当時の僕はそう思ってました。何せ相手は()()()()()()のような顔付きをした春風でしたので、その時の僕は、彼が女の子だと勘違いしてました。まぁ、それからすぐに『俺は男だ!』とブチ切れられてしまいましたが」


 と、水音は「はは……」と苦笑いしながらそう話しを続けた。


 その話を聞いて、


 「え? 何、そいつ、そんなに可愛い顔してんのか?」


 と、ヴィンセントが少しドン引きしながらそう尋ねると、


 「むぅ。確かに、あの顔付きは……」


 「間違えても仕方ないですねぇ」


 『そ、そうですねぇ』


 と、ウィルフレッド、マーガレット、そして爽子とクラスメイト達が遠い目をしながら言った。ただよく見ると、全員、頬が赤くなっていたので、


 「え、ちょ、まじかよ!?」


 と、ヴィンセントが驚きに満ちた声をあげると、


 「そうだなぁ、キャロライン殿が見たら、絶対に彼を気にいるんじゃないだろうか」


 と、ウィルフレッドは「はは」と笑いながらそう言い、その言葉を聞いて、


 「ま、マジかよ。ちょっと会ってみたくなったんだが……」


 と、ヴィンセントは少し引き気味にそう言った。


 その後、


 「あ、あのぉ……」


 と、水音が恐る恐るそう口を開いたので、


 「ああ、すまない。続きを聞かせてほしい」


 と、「おっと!」と我に返ったウィルフレッドは、水音に向かってそうお願いした。


 それに水音は「は、はい」と返事すると、


 「試合が始まる前、僕は生きる気力がなかったので、最初は『もうどうでもいいや』と投げやりな気持ちで春風と対峙したのですが、いざ試合が始まると、その考えは一気に吹っ飛んでしまいました」


 と、話の続きを始めたので、


 「え? どうしてそんなことに?」


 と、今度は爽子がそう尋ねると、


 「試合が始まった瞬間、僕は春風から、()()()()』をぶつけられたんです」


 と、水音は表情を暗くしながらそう答えた。


 その答えを聞いて、


 「む? 殺気?」


 「『殺意』の間違いじゃねぇのか?」


 と、今度はウィルフレッドとヴィンセントがそう尋ねてきたので、


 「いえ、間違いなく『殺気』です。ちょっと大袈裟に聞こえるかもしれませんが、その時春風から放たれたのは、『怒り』とか『憎しみ』といった負の感情から生まれた『殺意』ではなく、ただ『殺す』という()()()()()()()()()をぶつけられた……と言えばいいでしょうね」


 と、水音は自身を抱き締めながら、震えた声でそう答えた。


 その様子を見て、ウィルフレッドをはじめとした周囲の人達は、水音が冗談を言ってるのではないと理解して、ある者はタラリと汗を流し、ある者はゴクリと唾を飲んだ。


 ただ、


 (……ほう)


 1()()()()、水音の話を聞いてニヤリと笑っていたが。


 そんな彼らを前に、水音は更に話を続ける。


 「そこから先は、本当に死ぬかと思いましたよ。何せその時の春風は、僕を()()つもりで、何度も攻撃を繰り出してきたのですから」


 「え!? 嘘だろ、おい!」


 「確か、『3年前』と申したな? ということは其方と春風殿はその時……」


 と、ウィルフレッドが「ちょっと待て」と言わんばかりにそう尋ねると、


 「ええ、2人共14歳ですよ。信じられます? 同い年なのに、あんなとんでもない殺気を纏わせた攻撃を出してきたんですから」


 と、水音は更に震えた声でそう言った。


 その言葉に誰もが戦慄する中、


 「もう、あの時は本当に命の危機に晒されました。それまで『死んでもいい』と考えていたのに、あそこまで純粋な殺気を向けられた瞬間……『ちくしょう! 何が死んでもいいだよ馬鹿野郎!』とか『いやだぁ! 死にたくない!』という気持ちに駆られてしまいましたよ」


 と、水音は迫真の演技(?)を交えながらそう言うと、最後にその時のことを思い出したのか、「はは」と頬を引き攣らせた。


 その言葉に周囲から「う、うわぁ」と声があがった後、


 「そ、そうか。ということは、その試合のおかげで、其方は『生きる気力』を取り戻したのだな?」


 と、ウィルフレッドが「ん?」と首を傾げながらそう尋ねてきたので、


 「ええ、おかげさまで」


 と、水音は「はは」と苦笑いしながらそう答えると、すぐに真面目な表情になって、


 「まぁそんな感じで、その試合をきっかけに、僕はもっと強くなりたいと思えるようになり、その後は家族と、師匠と、春風と一緒に話し合った末、僕は師匠……陸島凛咲に弟子入りすることになったのです」


 と、真っ直ぐウィルフレッドとヴィンセントに向かってそう言った。

 


 


 

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