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ユニーク賢者物語(修正版)  作者: ハヤテ
第4章 もう1つの「始まり」

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第89話 水音と春風と「冒険の師匠」


 「僕と春風は、同じ『師匠』を持つ弟子なんです」


 と、ヴィンセントに向かってそう言った水音。


 その言葉を聞いて、


 『師匠?』


 と、ヴィンセントと爽子、そして()()を除いたクラスメイト達からそう声があがり、


 「ほう、『同じ師匠』とな?」


 と、ウィルフレッドが意外なもの見るかのように大きく目を見開きながらそう尋ねてきたので、


 「はい。正確に言いますと、僕がその人に弟子入りしたのは3年前で、その時から既に春風はその人の弟子になってました。ですので、春風は言ってみれば『兄弟子』ということになります」


 と、水音はウィルフレッドに向かってコクリと頷きながらそう答えた。


 その答えを聞いて、


 「へぇ、兄弟子ねぇ……」


 と、今度はヴィンセントがそう呟くと、


 「で、その『師匠』ってのは何者なんだい?」


 と、水音に向かってそう尋ねた。


 その質問に対して、水音はヴィンセントに向かって答える。


 「名前は陸島(くがしま)凛咲(りいさ)。女性冒険家です」


 と、水音の口からその名前が出た、次の瞬間、


 『く、陸島凛咲ぁ!?』


 と、クラスメイト達が一斉に驚きに満ちた叫びをあげたので、


 「うお! びっくりしたぁ……!」


 と、ヴィンセントはギョッとなったが、そんな彼を無視して、


 「おいおい、桜庭ぁ! それ、ホントかよ!?」


 「嘘でしょ!? 超・有名人じゃん!」


 「え、マジでマジでぇ!?」


 と、クラスメイト達が一斉に水音に詰め寄ってきたので、


 「ちょ、ちょっとみんな、落ち着いて……!」


 と、水音は必死になって彼らを宥めようとした。


 すると、


 「うおっほん!」


 と、ウィルフレッドが大きく咳き込んだので、それに水音だけでなくクラスメイト達までもが「ん?」と反応すると、


 「あー、すまないが勇者殿達。色々と質問したい気持ちもあるだろうが、まずはその陸島凛咲という人物について、教えてほしい」


 と、ウィルフレッドがそうお願いしてきたので、


 水音とクラスメイト達はお互い顔を見合わせた後、少し離れて、


 「えっと、先程申しましたように、師匠は世界をまたにかける女性冒険家なんです」


 「歳は20代前半と若いですが……」


 「なんでも、僕達と同じ年頃くらいから、祖国『日本』を飛び出して、色んな国を旅してたそうなんです」


 「ある国では大昔の遺跡を探索したり……」


 「ある国では新種の生物の発見や、絶滅危惧種に指定された動物を保護したり……」


 「またある国では、国家転覆を狙う悪い組織を潰したりと、そんな風に活動していたんです」


 「『弟子を作った』って話は聞いたことがあったんですが、まさか雪村君と桜庭君のことだというのは驚きました」


 と、水音をはじめ、クラスメイト達はウィルフレッドに向かって、「師匠」こと陸島凛咲という女性がどのような人物かについて説明した。


 その説明を聞いて、


 「ほう、それは中々凄い人物のようだな……」


 と、ウィルフレッドがそう感心すると、


 「色々と聞きたいが、まずは水音殿……」


 と、水音に声をかけたので、それに水音が「はい」と返事すると、


 「其方はその『師匠』殿とどのような形で出会い、そして弟子となったのだ?」


 と、ウィルフレッドは少し真面目な表情でそう尋ねた。


 その質問に対して、


 「う! そ、それはぁ……」


 と、水音は言い難そうな表情になったが、すぐに首をブンブンと横に振ると、真っ直ぐウィルフレッドを見て、


 「その話をする為に、ちょっと()()()をさせてほしいのですが、よろしいでしょうか?」


 と、お願いした。


 そのお願いを聞いて、


 「ああ、構わない。聞かせてくれ」


 と、ウィルフレッドが「OK」を出すと、


 「ありがとうございます」


 と、水音はそうお礼を言って話を始めた。


 「僕ら勇者が暮らす『日本』は、表向きは平和な国なのですが、その裏では魔物といった『闇の世界』の住人達や、欲に塗れた悪い人間達による犯罪が横行していて、そんな彼らの悪事を挫く為に、日本政府の命令のもとで様々特殊能力を持つ者達が活動しているんです。勿論、その中には『鬼』の力を宿した僕達『桜庭家』の人間も含まれていて、僕自身も彼らと共に戦っていました。と言っても、実際に僕がしていることといえば、前線で活躍している者達のサポートですけどね……」


 と、最後自嘲気味に「はは」と笑いながらそう説明した水音の言葉を聞いて、ウィルフレッドやヴィンセントだけでなく爽子やクラスメイト達から「おお!」と歓声があがった。


 しかし次の瞬間、


 「ですが……」


 と、水音は表情を曇らせると、


 「今から3年前、僕はとある任務の最中に、自身の『鬼』の力を暴走させてしまい、その所為で共に行動していた仲間と……()()()()()()()()()()のです」


 と、震えた声でそう言った。


 その言葉を聞いて、


 『えええええええっ!?』


 と、周囲からそう悲鳴があがった後、


 「おいおいおいおい! 何でそんなことになっちまったんだ!?」


 と、ヴィンセントが水音に向かって問い詰めると、


 「その、自分で言うのも変な話なのですが、どうも僕、先祖の血を()()()()受け継いでいたみたいで、宿している『鬼』の力もかなり強い方なんです。それ故に、その頃の僕は表向きは礼儀正しくしていましたが、ちょっと……いえ、かなり傲慢になっていて、今思うと精神的に未熟だったんです。その所為で、周りの話も聞かずに勝手な行動をしてたこともあったのですが、あの日、とうとうそのツケを支払わされることになって……」


 と、水音は更に表情を曇らせながらそう答え、その答えを聞いて、


 「それが、『力の暴走』という訳だな?」


 と、ウィルフレッドがそう尋ねてきたので、それに水音は黙ってコクリと頷くと、


 「なるほどな。で、母親と仲間達はどうなったんだ?」


 と、今度はヴィンセントがそう尋ねてきたので、


 「大丈夫です。母も仲間達も、全員無事です」


 と、水音はそう答えると、ヴィンセントだけでなく爽子とクラスメイト達までもがホッと胸を撫で下ろした。


 しかし、それでも水音の表情は曇ったままで、


 「ですが、自分の『力』の所為で母と仲間達を傷付けたという事実は変わることなく、その任務以降、僕は生きる気力を失っていたのです」


 と、再び震えた声でそう言った。


 その言葉を聞いて、


 「そりゃあ……当然だな」


 と、ヴィンセントも表情を曇らせながらそう言うと、


 「自分で言うのもなんですが、当時の僕の有様はそれはもう酷いものでして、食事を全く摂らずにどんどん痩せ細っていき、いつか死ぬんじゃないかって周囲からそう思われるようになっていましたが……」


 と、水音は「はは……」と自嘲気味に笑いながらそう言い、


 「そんなある時、僕は師匠と春風に出会ったんです」


 と、最後にそう付け加えた。


 


 


 

謝罪)


 大変申し訳ありません。前回の話ですが、誠に勝手ながら一部加筆修正させてもらいました。


 本当にすみません。

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