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ユニーク賢者物語(修正版)  作者: ハヤテ
第4章 もう1つの「始まり」

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第88話 「鬼」との出会い

 今回はいつもより短めの話です。


 「この世界風に言いますと、僕達『勇者』の祖国である『日本』という国は、大昔から『魔物』の脅威に晒されていました。『闇の世界』の存在である彼らは、人間なら誰もが持っている、『怒り』や『悲しみ』、『妬み』といった『負の感情』を糧に、その勢力を大きくしていたのです」


 と、そう話し始めた水音の言葉に、


 「なんと。まさかとは思うが、それは今もなのか?」


 と、ウィルフレッドがそう尋ねると、


 「はい。現在でも、人々の生活の裏では、その『闇の世界』の存在と、それから人々を守る者達の戦いが繰り広げています。勿論、僕ら『桜庭家』の人間も、その中の1つです」


 と、水音はコクリと頷きながらそう答え、その答えにクラスメイト達から「おお!」と声があがった。


 その声を聞いて、


 「すみません、話が逸れてしまいました」


 と、水音はそう謝罪した後、話を続ける。


 「とにかく、その大昔の中でも、最も魔物達の活動が活発だったのが、『戦国』と呼ばれていた時代でした」


 (せ、戦国時代!?)


 (し! 静かに!)


 「ほー、『戦国』とは随分と物騒だな」


 「はい。それは、『日本』という国の統一をかけた、人間同士の争いがあった時代で、勝てば『富』や『名誉』といったものが手に入り、負ければ『財産』、『誇り』、そして『命』までもが奪われるといった感じでした」


 「おお、人間同士の争いとな。ということは、魔物の活動が活発になったのは……」


 「ええ。その争いで生まれた、『悲しみ』や『怒り』、そして『憎しみ』を取り込み、自分達が活動する為のエネルギーにしていたからです」


 そう説明した水音に、周囲にいる誰もがゴクリと唾を飲んだ。


 「そして僕の先祖も、その争いに巻き込まれ、多くの大切なものを奪われていましたが、ある時、先祖は今にも死にそうになっている1体の『鬼』に出会いました。先程説明しましたように、その『鬼』は多くの人間達を殺し、その血肉を喰らっていましたが、それを阻止する為に戦った戦士達によって、『鬼』は致命傷を負い、その後死の間際に僕の先祖に出会ったのです。これも祖父に聞いたことなのですが、彼らとの間でこんなやり取りがあったそうです」


 ーーどうせ死ぬなら、お前が持ってる『力』を全て寄越せ!


 ーーいいのか? そのようなことをすれば、いずれ貴様も我と同じような『鬼』となるのだぞ?


 ーー構わない! それでこんな時代を生き抜くことが出来るなら!


 「……そのやり取りの後、『鬼』は自身の持つ『力』を先祖に差し出し、消滅しました。そして、先祖はその『力』を使って時に人間同士の争いに参加し、時に魔物から人々を守ったりしながら、少しずつ『富』と『栄誉』、そして『家族』を得たのです」


 「そうだったのか」


 「はは、そいつはすげぇな」


 水音の話を聞いて、ウィルフレッドもヴィンセントも、タラリと汗を流した。それは、爽子とクラスメイト達も同様で、皆、水音の話に表情を強張らせていた。


 そんな状況の中、


 「で、その『鬼』って奴の力って、今、どういう状態なんだ?」


 と、ヴィンセントがそう尋ねてきたので、


 「勿論、その力は今も僕の中に存在してます。というのも、その『鬼』がとても強い存在だったのか、先祖とその伴侶の間に生まれた子にも、その力が宿っていたんです。そして、それはどれほど時が経っても衰えることなく、寧ろどんどん大きくなっていて、先祖が死んだ後も、その力を持った子孫が生まれて、いつしか僕ら『桜庭家』の人間達は、『鬼宿しの一族』と呼ばれるようになったのです」


 と、水音はコクリと頷きながらそう答えると、


 「なるほど。因みにだが、今その力を持っているのは?」


 と、今度はウィルフレッドがそう尋ねてきたので、


 「知っている限りですけど、僕は勿論、母と母方の祖父、そして妹と数人の従兄弟です」


 と、水音はウィルフレッドを見てそう答えた。


 その答えにクラスメイト達が再び「おお!」と声をあげると、ウィルフレッドは「ふーむ」と考える仕草をした。


 そして、それから少しすると、


 「では質問を変えるが、其方の家族以外に、力のことを知ってる者はいるのか?」


 と、またウィルフレッドがそう尋ねてきたので、


 「はい。主に政府の人間や『軍』の関係者……ですね」


 と、水音はちょっと答え難そうに答えた。


 その答えをきくと、


 「もしやとは思うが、ひょっとすると雪村春風殿も……か?」


 と、ウィルフレッドは更にそう尋ねてきたので、それに水音は「う……」と小さく呻いた後、


 「はい。彼……雪村春風も、僕達の一族や力のことは知ってます」


 と、真っ直ぐウィルフレッドを見つめながらそう答えたので、


 「そうなんだ……って、ええ!? まじで!? 雪村も知ってんの!?」


 と、進が大きく目を見開きながらそう尋ねてきたので、水音はそれに若干気まずそうにしつつも、「うん」とコクリと頷いた。


 すると、


 「へぇ。雪村春風も、ねぇ」


 と、ヴィンセントがそう呟くと、


 「なぁ、水音よぉ。その雪村春風とお前さんって、一体どういう関係なんだ?」


 と、水音に向かって真剣な表情でそう尋ねて、それに反応するように、爽子とクラスメイト達も、一斉に水音に視線を向けた。


 その質問に対して、水音は「う……」と呻きながら答え難そうな表情を浮かべたが、やがて観念したのか、「ふぅ……」とひと息入れると、


 「春風が悪いんだからな……」


 と、小さな声でそう呟いた。


 その言葉に周囲から「ん?」と声があがる中、


 「僕と春風は、同じ『師匠』を持つ弟子なんです」


 と、真っ直ぐヴィンセントを見つめながらそう答えた。


 


 


 


 


 

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