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ユニーク賢者物語(修正版)  作者: ハヤテ
第4章 もう1つの「始まり」

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第83話 エレンvs「勇者」水音


 ルーセンティア王国、王城内。


 その中ある訓練場で、今、「怒り」に満ちた形相のエレンと、「勇者」の1人である水音の戦いが始まった。


 手にした木剣を構えているエレンに対し、水音は両手に黒い革製のグローブをつけているとはいえ、武器を持ってない状態だ。


 と言っても、水音自身は格闘術の心得があるのか、エレンを前にしっかりとした構えをとっている。


 「ふーっ! ふーっ!」


 「……」


 睨み合う両者、先程も語ったように「怒り」に満ちた表情のエレンに対して、水音は落ち着いた表情をしている。


 そんな様子の2人を見て、


 「さ、桜庭……」


 「だ、大丈夫かなぁ……」


 「な、なんかあのエレンって女の子、怒りのあまり凄い顔してるけど……」


 と、爽子やクラスメイト達が不安そうな表情をしている中、同じく見守っていた兵士の1人がタラリと汗を流し、それが地面にポタンと落ちた、次の瞬間、


 「はぁあ!」


 先に動いたのは、エレンだった。


 木剣をグッと握り締めながら、水音に向かって突撃するエレン。


 「う、動いたぞ!」


 「さ、桜庭君は……!?」


 と、クラスメイト達が一斉に水音に視線を向けると、


 「……」


 『あれ!? 動いてない!?』


 と、クラスメイト達が驚いたように、突撃してきたエレンに対して、水音は落ち着いた表情で構えている状態のまま、その場から1歩も動いてなかった。


 そんな水音を見て、


 「桜庭君!?」


 「え、ちょっと! 何で動かないの!?」


 と、クラスメイト達が狼狽えている中、


 (何故動かない! 臆したか!?)


 と、そう思ったエレンが、水音に向かって木剣振り下ろした。


 ところが……。


 ーーグルン!


 ーードサッ!


 急に目の前が回転し、その後、エレンは背中から地面に落ちたので、


 「……は?」


 と、エレンはなんとも間の抜けた声をあげた。


 エレンは一体何が起きたのか理解出来ず、すぐに立ち上がって木剣を構えると、


 「く、もう一度だ!」


 と、再び水音に向かって突撃した。


 勿論、水音は落ち着いた表情で構えに入ったまま、そこから1歩も動いてない。


 (な、何が起きたのかわからなかったが、次は入れる!)


 と、エレンが水音に向かって再び木剣振り下ろしたが……。


 ーーグルン!


 ーードサッ!


 「……はぁ?」


 またしても目の前が一回転し、エレンは背中から地面に落ちた。


 その後、エレンは再び立ち上がると、


 「き、貴様ぁ! 一体私に何をした!?」


 と、目の前の水音に向かって怒鳴るようにそう尋ねたが、


 「自分で考えたら?」


 と、水音は落ち着いた表情のままそう答えたので、


 「な、何をぉ!」


 それが、エレンを更に怒らせた。


 一方、2人の戦いを見てた爽子とクラスメイト達はというと、


 「な、何だ、今のは?」


 「桜庭、何かしたのか?」


 と、エレンと同じく、目の前で何が起きたのか理解出来ないでいたが、


 「ぶん回したんだ」


 と、煌良がそう口を開いたので、


 「え? 力石、わかるのか?」


 と、爽子がそう尋ねると、煌良はコクリと頷きながら、


 「攻撃を受けそうになった瞬間、桜庭は相手の攻撃の勢いを利用してぶん回し、奴を地面に叩きつけたんだ」


 と、水音を見つめた状態でそう説明した。


 その説明を聞いて、


 「え、ちょっと待って力石君。『攻撃の勢いを利用してぶん回した』って、そんなこと可能なの?」


 と、今度は純輝がそう尋ねると、煌良はゆっくりと首を横に動かしながら「いや……」と返事して、


 「これは俺の推測だが、先生との戦いを見たところ、あのエレンという女は恐らく高レベル、それも、ここの騎士達以上だろう。だが、俺達はこの世界に召喚されて間もなく、レベルは1のままだ。普通ならそんな芸当は不可能だろう」


 と、チラッとエレンを見ながらそう説明を続けた。


 それを聞いて、


 「え、じゃあ何で……!?」


 と、今度は大きく目を見開いた祭がそう尋ねてきたので、


 「これも俺の推測だが、桜庭のあの落ち着いた態度から見て、恐らく普段からあの女と同じような()()()()()の相手をしてきたんだろう。しかも、あの如何にも『慣れている』と言わんばかりの無駄のない動きからして、かなりの人数を相手にしてきたんだろうな」


 と、煌良は更にそう説明し、その説明を聞いて、


 「う、うわぁ、マジかよ……」


 と、進むがタラリと汗を流した。


 ただ、


 (だが、それだけが桜庭の『全て』という訳でもないのだろうけどな……)


 と、煌良は水音には他に「何か」があるのだろうと感じながら、


 (いや、桜庭だけじゃない。恐らくは、雪村も……)


 と、この場にいないもう1人のクラスメイトの少年を思い浮かべて、表情を暗くした。


 一方、そんな煌良を他所に、


 「はぁああああ!」


 と、何度も攻撃を繰り出してきたエレンに対して、


 「……」


 水音は無言でそれら全てを軽くいなしただけじゃなく、ある時は先程煌良が説明したようにぶん回してから地面に叩きつけ、ある時はいなした時にガラ空きになった顎や腹部などに掌底をお見舞いするといった反撃を繰り出していた。


 そして、エレンはそんな感じで何度も反撃をくらっていた為、


 「はぁ……はぁ……」


 と、戦いの前まであった余裕が微塵もなくなったのか、かなり疲労が溜まっている様子で、最早立っているのも辛そうになっていた。


 そんな様子のエレンを見て、


 「もう終わりかい?」


 と、水音がそう尋ねると、


 「ふ、ふざけるな!」


 と、エレンはキッと水音を睨みつけながらそう怒鳴った。


 しかし、それでも余裕のなさそうな様子だったので、


 「それじゃあ……今度はこっちの番かな」


 と、水音は落ち着いた態度で「ふ……」と笑いながらそう呟いた。


 その後、水音は疲れ切った表情のエレンを前に。ゆっくりと深呼吸すると、最初の構えとは違った形の構えをとった。


 それは、如何にも「攻撃重視」といった感じの構えで、その構えをとった水音を見て、


 「あ、あれ? なんか桜庭、雰囲気が変わった?」


 と、進がそう疑問に感じる中、


 「受けてみろ、()()()


 と、水音はエレンに向かって静かな口調でそう言い放った。


 


 

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